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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
北琵琶学園祭殺人事件
49/72

事件発生!!

 日数は瞬く間に過ぎ、北琵琶学園中等部の学園祭が始まる週になった。

 それで今週は、月曜から水曜まで、授業は午前中で終わるの。だから午後から、学園祭の準備にフルパワー全開モードで取り組めるってこと。

 木曜に学園祭が開催し、土曜までの三日間、文化祭フェーズがあって、二年生の劇は、土曜に割り当てられている。

 最終の日曜が体育祭フェーズ。その後で、いわゆる「後夜祭」ということで、グラウンドを使って、キャンプ・ファイアをやるの。フォーク・ダンスを踊ることができる。それは自由参加よ。


 学園祭開催の前日、水曜、あたしたちが劇のリハーサルをする日を迎えた。

 衣装は、昨日までに全員分がちゃんと仕上がっている。

 も・ち・ろ・ん、このあたし、浅井巡査が着る私服刑事姿の衣装もね。

 S県警察本部、刑事部刑事捜査第一課、強行犯捜査二係で係員を務めるオチャコなのだから、その黒いスーツで、ビシッと決めなきゃだものね。へへ。


 今、女子は廊下へ出て、男子が着替えるのを待っている。

 少しして、引き戸が開き、白いスーツ姿の織田くんが出てきた。


「もう入っていいぞ。お前らの番だ。さっさとしろよ!」


 続いてグレーのスーツを着たメガネ男子と、ラフな格好をしたサッカー少年が並んで出てくる。


「あ、明智くん、スーツ似合ってるねえ。よっ、明智警部補!」

「うん。ありがとう浅井さん」

「へへ。ほうら、あんたも」


 あたしは、こうやってトシヨンの背中を押してあげるのよ。


「う、うん。あ、あの大福くぅん!」

「おお前田、どうした?」

「大福くんも、衣装、似合ってる。カッコいい……」

「そうか、サンキュー」


 彼の笑顔が眩しくて、トシヨンは、大福くんの顔を直視できないみたい。

 分かるわ、その気持ち。あたしも同じ乙女なのだもの。

 でも、ここに玉紗さんが割って入る。


「大福様、髪をもう少し整えておきませんと」


 そんな風に言って玉紗さんの手が、彼のサラサラした短いヘアに触れる。

 トシヨンは、それも見ていられないで、顔をそむける。強引なお嬢様には、なかなか敵わないものね。


「おい細川、髪はもういいって。おれはチンピラ役なんだから、ちょっとは乱しておかないとダメなんだ。それは分かるだろ?」

「はい、おっしゃる通りですわ。ですけれど、チンピラ役とはいえども、大福様は大福様なのですから、その髪の一本一本もまた、神に祝福されているのです。他のチンピラとは一線を画したヘア・スタイルであらねばなりません。おほほ」

「細川、あのなあ……」


 神に祝福されている髪ってなによ??

 いつもながら、このお嬢様の発想、あたしなんかにゃ分かりっこないわ。

 最後に十吉が出てきて、男子全員が廊下に揃った。


「おいコラお前ら! さっさと着替えろ! この俺様を待たせるんじゃねえ!」

「はいはい、分かりました」


 あたしは、織田くんにそう言ってから教室に入る。

 他の女子も皆が中に入ったので、「男子たち、特に十吉と織田くん、絶対に覗かないでよ!」と釘を刺してから、引き戸をピシャリと閉める。

 すると外から怒鳴り声と叫び声が聞こえる。


「誰がお前の着替えなんか覗くか! ウヌボレこいてんじゃんねえぞ!」

「オチャコ、着替え頑張るぴょーん!」


 十吉さん、着替えに頑張るもなにもないわよ。

 あたしはそう思いつつ、自分の衣装を、みかん箱の中から取り出そうとする。


「あれえ?」

「オチャコ、どうしたの?」

「あたしの衣装がないのよ!」


 事件発生!!

 昨日確認した時は、黒いスーツ、ちゃんとあったのに!

 他の女子たちは状況を察して、着替えるのをストップした。今は、あたしの衣装を見つけるのが先決ということだもの。

 浅井巡査、いや探偵オチャコが、すぐ緊急捜査本部を設置しなきゃね!

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