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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
北琵琶学園祭殺人事件
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脚本製作ミーティング

 ホームルームが終わり、放課後を迎えた。

 掃除を済ませ、早速、劇の脚本製作ミーティングを行うことになる。

 担当する四人の他に、柴田さんの姿もある。脚本作りが軌道に乗るまでは、クラス委員として、それを見届ける必要があるということ。

 それは分かるけど、なぜか十吉のやつも、この場にいるのだった。


「あんた、なにか用でもあるの?」

「おれっちも、脚本作りに参加してみるよーん!」

「これは遊びじゃないのよ?」


 ここはビシッと釘を刺しておかないといけないと思うから、あたしが率先して、そう言ってやった。


「分かってるぴょん!」


 ホントに分かってるのか。

 少し心配なのだけど、この十吉という男子は、クラスの皆を愉快な気分にさせる名人でもあるから、脚本作りでも、他の人なら思い浮かばないような、なにか面白いアイディアを考えて出してくれるかもしれない。

 そういう意味では、貴重な人材と言えなくもない。

 取りあえず、六人でミーティングを始めることになった。

 まず松平くんが名乗りを上げる。


「司会進行役は、この俺でいいか?」

「それでいいと思うわよ」

「そうだね。劇は松平くんの案が採用されたのだから」


 あたしと明智君が賛成して、他の人は反対しなかった。

 それで、松平くんが一人教壇に立った。

 残りの五人は、最前列の机を借りることにして、窓側から、明智くん、あたし、トシヨン、十吉、柴田さんの順で横並びに着席した。

 松平くんが、「誰か書記をやってくれるかな?」と言ったので、トシヨンが「わたし、やってみる」と手を挙げた。この子にしては、なかなか積極的でよろしい傾向だと思うあたしだった。

 柴田さんが立ち、新しいノートを一冊トシヨンに手渡す。


「これを使って。劇作りのために、足利先生から支給されたの」

「うん、分かった」

「よし。それなら始めるよ。まず俺のアイディアを聞いてくれ。学園祭殺人事件ということなんだけど、その筋書きは――」

「ちょっといいですか」


 柴田さんがそう言って、松平くんの言葉を遮った。


「なにか?」

「最初にスケジュールについて方針を固めるべきです」

「おうそうだな。俺としたことが。さすがクラス委員だけのことはある」

《ん? この人、もしかして……》


 あたしは違和感を覚えたのよ。

 松平くんは遅刻常習犯で、しかも宿題忘れ常習犯なの。でも、宿題については忘れるのじゃなく、わざとやらないのよ。簡単過ぎてバカバカしいとでも思っているのかもしれない。

 彼の心の内は、分かりにくいことが多いの。今だって、柴田さんから揚げ足を取られたのは、ちょっと不自然なことなのよ。わざとそうさせたはず、あたしの推理によるとね。

 だから、率直に尋ねてみることにする。


「松平くん、あんただってスケジュールを決めるのが、最優先事項だということ、ホントは分かってたはずよね。その点、どうかしら?」

「お、珍しく浅井の推理が冴えてるな。図星だよ」

「ちょっと、《珍しく》というのは余計でしょ?」

「そうかなあ。まあどうでもいがなあ。それより俺は、明智に指摘されるんじゃないかと思ってたよ」

「うん。僕も言おうと思ったのだけれど、柴田さんに先を越されてね」


 ここにその本人、柴田さんが割って入る。


「話が脱線しています。そろそろ元に戻しませんか?」

「悪い。そうだな、スケジュールだけど、柴田はどう考えている?」

「学園祭で二年生が劇をすることになっている十一月十八日までは、残り四週間足らずです。今日中に劇の粗筋を決め、明日それを足利先生に話して承諾を得なければなりません。それから数日のうちに、おおよその脚本を固めてしまう予定で考えています。作った初版の脚本を元に、来週のホームルームで配役を決めたいところです。正式な脚本は、練習を進めながら仕上げればいいと思っています」

「おう、それでいいだろう。なにか異議のあるやつ、誰かいるか?」


 これには一人も手を挙げない。

 この柴田さんと松平くん、そして明智くんを加えた三人は、二年梅組の首脳ブレーン的存在だから、この場には、ある意味頼もしい「トリオ」ということになるわね。この点は誰が見たって、火を見るより明らかだもの。

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