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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
北琵琶学園祭殺人事件
41/72

オチャコ頑張る

 教室内に静けさが戻ってきたので、あたしが手を挙げる。


「はい」

浅井あさいさん」

「あたしは、明智くんの案に賛成します」

「おいおい浅井、お前そんなに光男のことが好きなのか」


 また織田くんが口を挟んできた。

 あたしは今度ばかりは言ってやると決めた。


「あたし、明智くんのこと好きだよ。級友としてね。なにか文句ある?」


 こんなことを言っちゃったものだから、教室内がドッと沸いてしまう。


「浅井は明智にラブラブってか!」

「お熱いねぇ~」

「ひょーひょーっ!」

佐久間さくまくん、丹羽にわくん、黒田くろだくん、勝手な発言はやめて下さい」


 織田くんはなにも言わず、座ったままニヤニヤしている。

 ここに足利先生が戻ってきた。


「おいこら皆、廊下まで大声が聞こえているぞ。ちゃんと静かに話し合わないとダメじゃないか。柴田、クラス委員のキミがしっかりまとめないといけないだろ?」

「はい、済みません」

「先生」

「どうした明智?」

「柴田さんは悪くありません。織田くんがフザけて、それで佐久間くん、丹羽くん、黒田くんが騒いだのです。柴田さんは何度も注意しましたが、それでも織田くんは無視しているのです」


 先生がいるから、織田くんは黙っている。

 それでも、席から明智くんを睨んでいる。まるで、「ポンカン、覚えてろよ!」とでも言わんばかりに。

 あたしも頑張ってみることにした。


「先生」

「浅井、どうした?」

「明智くんの言う通りです。織田くんが、明智くんと柴田さんを侮辱したり、あたしをからかったりしたから騒ぎになったんです」


 足利先生は織田くんの方を見た。


「織田、またお前の仕業か。あんまり酷いと、また斉藤さいとうさんに話さないといけなくなるな」


 先生の言っている「斉藤さん」というのは、織田くんの保護者代わりをしている親戚の伯父さんよ。織田くんは、もう両親を亡くしちゃってるからね。

 その斉藤さんに引き取られて、そこのおうちで暮らしているのよ。

 織田くんがちょっと荒れているのも、そういうところに原因があるのかも。彼も十吉と同様に、決して悪い人ではないと思うけどね。


「あ、それより、松平がいないなあ。どうした?」


 突如、引き戸が開いて、松平くんが入ってくる。


「俺なら、ここにいますよ」

「どこへ行っていた?」

「先生、個人のプライバシーを詮索しないで下さい」

「いや、ホームルーム中に教室から出ていた生徒のことを心配して、どういうことなのか、ちゃんと尋ねるのは担任としての責任だよ。分かるだろ?」

「確かにそうですね。俺はトイレに行ってたんです」

「なんだ、そんなことなら最初からそう言えばいいだろ?」

「俺だって思春期だから、恥ずかしくて口に出したくないこともありますよ」

「いや女子じゃないだろ、お前は」

「先生、教師が男女差別発言ですか? PTAに伝えましょうか?」

「いやいや、待ってくれ。そういうつもりは一切ない。誤解だ」


 今日のあたしはどうしたんだろう、また頑張ってみることにした。


「先生」

「浅井、どうした?」

「あまり相手にしない方がいいと思います。松平くんってば、先生のことからかってるだけだもの」

「松平、お前この僕を、からかっているのか?」

「いいえ。決してそのような、おそれ多いことは」

「足利先生」

「なんだ柴田」

「会議が停滞してしまってます。クラス委員の私がしっかりまとめないといけませんから、ここはハッキリ言わせて貰います」

「言ってみろ」

「足利先生、松平くん、早く席について下さい」

「おう分かった。僕が悪かった。謝るよ柴田、済まなかった」

「分かればいいです」


 松平くんは自分の席に戻り、足利先生も教壇の端にある席に座った。

 再び、柴田さんが主導権を握り、会議を進める。


「浅井さん」

「はい」

「さっき、明智くんの案に賛成すると言いましたね?」

「うん、言ったよ」

「では、具体的になにか意見はありますか?」

「英語の劇なんだけど、例えば、シャーロック・ホームズの『緋色の研究』という作品を題材にしたらいいと思うのよ。あたしこの前の誕生日に、それの英語版の本を貰ったんです。だから、あたしが脚本を担当してもいいよ」


 明智くんがプレゼントしてくれたってことは言わない。

 言えば、また外野が煩いだろうからね。


「分かりました。着席して下さい」


 あたしは座る。今日のあたしは、なかなか頑張れている。

 自分で自分を褒めてあげたい、なんてね。えへへ。

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