犯行声明の真相
でも爛丸が無事でなにより。これ名馬、じゃないか迷猫ならず名猫。へへ。
突如、ここへまた来訪者が二人あった。最初に気づいたあたしが叫ぶ。
「あ、初等部の正親街先生と十吉の弟だよ!」
「ちょっと済みません。松平はいるかな?」
「はい先生、ここにいますよ」
「あ、久しぶりだな。元気かい?」
「はい」
「そうか。おう羽柴、丁度よかった。お前の弟、小梅男がイタズラをしたらしいから連れてきたんだ」
「先生、イタズラってこれのことですよね」
松平くんが正親街先生に、犯行声明の書かれた紙と、浅井家の紋所が描かれている封筒を手渡す。
「おお、これのことだろうな。こら小梅男、ちゃんと謝れ!」
「ごめんなさい」
小梅男くんは、松平くんに向かって頭を下げた。
「謝るなら、俺より、そっちの浅井だろ?」
「オチャコお姉さん、ごめんなさい」
小梅男くんは、あたしに向かって頭を下げた。
「あんた、どうしてこんなイタズラしでかしたのよ?」
「そうだおー、お前おれっちの顔に唾を塗ったんだぴょ」
「十吉、それを言うなら、唾じゃなくて泥だよ」
「そうだおー、お前おれっちの顔に泥を塗ったんだぴょ」
「なにも言い直さなくていいから。あ、それより、小梅男くん、ちゃんと訳を話してくれるかしら?」
小梅男くんはコクリとうなずき、泣きベソ顔で話を始める。
「兄ちゃんが、《最近、オチャコはおれっちより明智なんかと話してばかりなんだおー》とか言ってばかりだから、そいでおいら、このイタズラを考えたおー」
「おー、お前、おれっちのためにやったのかおー!」
「そうだおー!」
「おー、小梅男ー!」
「おー、兄ちゃんおー!」
おー、おー! と煩い二人だわねえ。
兎も角、こうして《消えたR》事件の方も、無事に解決したのだった。
終わりよければすべてよし、とは言えないあたしだけどね。だって今回もまた、明智くんにしてやられたって感じなんだもの。
でもね、次こそは探偵オチャコが勝つんだからね。浅井の名に懸けて!