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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
消えたRと消えたL
38/72

明智くんの推理

 少し不安になっているあたしに、明智くんが厳しい言葉を投げ掛けてくる。


「浅井さん、いつもいつも早とちりが過ぎると思うよ」

「へ?」

「実はね、羽柴くんは犯人ではないと考えているんだ」

「ええっ、そうなの!?」

「うん。そういうことになるね。僕の推理が正しければ」


 あたしの推理と、明智くんの推理、二つが真っ向から対立している。

 雲ゆきが怪しくなってきたわ。

 あたしは、どこで推理の道を、どのように誤ったのだろうか?

 いやいや、まだあたしの推理が間違っていると決まった訳じゃないもの。


「明智くん、詳しく聞かせてよ。あなたの推理をね」

「うん。松平くんたちも聞いてくれるかな?」

「いいぜ」

「おう光男、さっさと話せ!」

「おれっちの無害を消滅してくれろー」


 十吉それを言うなら、「無害」じゃなくて「無罪」、それと「消滅」じゃなくて「証明」だよね。たぶん、こいつはその意味で言いたかったはず。

 それは兎も角として、二年梅組の「迷惑三傑めいわくさんけつ」も、あたし同様、明智くんの推理を聞きたいらしい。さあ、聞こうじゃないの!


「松平くん、ズボンのポケットの中に、なにか隠していないかな?」

「あ、なに言ってるんだ、ポンカン!」

「悪いけど織田くん、僕は今、松平くんに尋ねているのだから、少し黙っていて欲しいのだけれど」

「ポンカンの癖に俺様に命令するな、と怒鳴りたいところだが、今は特別に許してやろうじゃねえか。おい共康、光男の言ったこと、どうなんだ?」

「やっぱりさすがだな、明智は」


 そう言いながら、松平くんは、自分のズボンのポケットから紙切れを取り出す。


「これのことだろ。ほら羽柴、返すよ」

「あー、おれっちの書いた手紙だおー! なんだ、拾ってくれたのか。てゆーか、おれっち、どこで落としたぴょ?」

「十吉、お前は猿か! 共康は拾ったんじゃねえ、お前の手紙を盗んだ犯人だってことなんだよ」

「うえぇー、そうなのかおー!」

「そうだぜ」


 松平くんは自分の犯した行為を素直に話したわ。

 金曜の五時間目の後、挙動不審な十吉の後ろをコッソリつけて、彼が玉紗さんの靴入れに忍ばせた封筒を盗み出し、おうちに持ち帰った。シールを慎重に剥がして、中身を取り出し、同じシールを張り直したそうよ。それから今朝、自宅のポストに、封筒を半分だけ見えるようにして入れてから、学校にやってきた。

 お弁当を忘れたのも計画のうちで、そうすればお母さんが、十吉の手紙も一緒に持ってきてくれると、想定していたのよ。

 松平くんのお母さんにしてみれば、はた迷惑ね。こんなイタズラをしでかす息子を持って、ホント気の毒なことだと思うわ。


「これで、《消えたL》事件は解決だね」

「そうね。それについてはあたしの負けだわ」

「別に勝ち負けを競っているつもりはない。僕は、常に真実を明らかにしたいだけなんだよ。明智の名に懸けてね」


 彼のメガネが、丁度キラリと光ったように見えた。

 このクール・ボーイめ! あたしは凄く悔しかった。


「でもね、まだ《消えたR》事件があるんだから」

「それなんだけど、たぶん犯人は――」

「え、ちょちょ、待ってよ明智くん! もしかして犯人分かってんの!?」

「そうだよ。僕の推理では、羽柴くんの弟、小梅男こうめおくんが犯人だ」

「えっ!?」

「小梅男のやろおー」


 十吉が叫んだ。

 突如、トシヨンのスマホにメッセージの着信があった。

 彼女は、すぐにそれを確認する。


「ああよかった。爛丸がおうちに戻ったのだって」

「トシヨン、それホント!?」

「うん、ホント」


 今日のあたしは、驚かされてばかりね。

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