オチャコ事件解決!?
松平くんが十吉に開封を促す。
「中身がちゃんとあるのか、念のため調べてみろよ」
「ほいほい、調べるっぴょ!」
十吉はシールを自分で破き、封筒の閉じ口、いわゆる「ベロ」の部分を開いて、中身を確認する。
「あっれぇー!! 空っぽだおー!」
「なに本当か!?」
十吉と一緒に松平くんも驚いている。
突如、あたしの推理脳が警鐘を鳴らすのだった。
「十吉、あと皆も聞いてよ」
「あ、なんだよ浅井?」
織田くんは怪訝そうな表情を見せている。まあ黙って聞きなさいってば。
「あたしね、犯人が分かったわ」
「ええぇー、それホントかおー?」
「ホントよ。犯人はこの中にいるのよ」
あたしはそう言いながら、十吉、織田くん、松平くん、明智くん、トシヨンの顔を順番に見回した。
さっきまでこの場にいた、竹中くん、玉紗さんはもう自分の席に戻っているのだけど、あの二人は、この事件と無関係よ。
「コラッ浅井、もったいつけてねえで、さっさと言えよ」
「まああわてなさんな、織田くん。今から《消えたL》事件の犯人の名前を言うわよ。覚悟はいいかしら?」
「だから、早く言えつってるだろがっ!!」
ふん、織田くんはやっぱり短気ね。女の子にモテないわ。
「犯人は十吉、あんたよ!」
あたしは右手の人差し指をピンと伸ばして、十吉の顔に向けてやった。
ふふ、決まったわ。探偵オチャコ、鮮やかに事件解決よ。
「おれっちが犯人な訳ないぴょん! おれっち、被害者だぴょ!」
「そうね。あんたは、あんたが言うように被害者だわ」
「おいコラッ浅井! 十吉が犯人なのか被害者なのか、一体どっちだ!」
「ふふ。これだから素人はダメね」
「あ、なんだと!」
「あたしが分かったのは、十吉が自作自演の劇場型犯罪をやったってこと。自分が被害者のように装ってね。織田くん、劇場型犯罪の意味、知ってる?」
「知るか!」
「教えてあげるわ。劇場型犯罪というのは、特に犯人が主役みたいになって、刑事や探偵たちを相手に事件を起こして、それがまるでドラマのストーリーであるかのように、意図的に犯行を進めようと企てることよ。分かる?」
「分からねえ!」
ふん、織田くんには理解できないのも無理はないわね。
「分からないなら、黙っててよ。ねえ十吉、あたしの推理バッチリでしょ?」
「違うぴょん!」
「そうだぞ浅井、俺が分からねえと言ったのは、劇場型犯罪とかの意味のことじゃねえ。十吉が犯人だという理由が分からねえってことだ!」
「え、どういうことよ?」
「つまりだなあ、お前が説明したような細かい計画を、この十吉が自分で考えてできる訳ねえってことだ。十吉、そうだろ?」
「そうだおー。おれっちそんな七面鳥なことできないぴょん」
「十吉、それを言うなら《七面倒》でしょ?」
「おれっちそんな七面倒なことできないぴょん」
十吉は胸を張って、そう言い直した。自信に満ちていて、こいつがウソを言っているようには思えなくなってきちゃったの。
もしかして、あたしってば、また推理ミスってるのか!?