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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
消えたRと消えたL
36/72

突然の来訪者

 突如、二年梅組の皆が一瞬静まった。

 その理由は、黒板側の出入り口に、突然の来訪者があったからよ。

 現れた成人女性が、廊下から教室内に向けて、叫ぶのだった。


「共康、忘れ物よ! お弁当!」


 要するに、あの人は松平くんのお母さんってことね。

 さすがは宿題忘れの常習犯だわ。お弁当まで忘れてくるなんてね。ふふ。


「ああ俺ともあろう者がしまった。こんな失敗するなんて。危うく昼メシを食いそびれるところだったなあ」


 松平くんは、決まりの悪そうな表情をして、女性の方へ駆けていった。


「ねえ共康、ポストの中に、こんな封筒が入っていたわよ。あんたの友だちのイタズラじゃないの?」

「いや、俺は知らないことだけど、誰かのイタズラなのかもな」


 松平くんはそう話しながら、彼のお母さんが持ってきてくれたお弁当と、淡い黄色の横長い封筒を受け取っている。

 それを見た十吉が大声で叫ぶ。


「あー、あれはおれっちの書いたラブレターだおー!」


 これを聞いた教室内の生徒たちがドヨメキを起こす。

 多方面から、「えーっ、十吉の癖に!!」とか、「なにそれ、羽柴くん!」とか、「誰に渡すラブレターなんだ!?」、「いや共康に渡したんだよ。松平家のポストに入れたんだから」というような言葉が飛び交った。

 ますます墓穴を掘る十吉ね。

 でも彼はそんなことを気にするよりも、いち早く手紙を取り戻したいのだろう、出入り口のところへ走った。

 松平くんのお母さんがまだそこに留まっていて、話し掛ける。


「十吉くん、おはよう。その手紙、あなたがうちのポストへ入れたの?」

「違うぴょん! 誰かに取られてしまったおー」

「そう。でもあなたは相変わらず、おかしな話し方をするのね。もう中学生なのだから、もっとまともに話したら?」

「ほーす!」

「ダメね。もういいわ」


 松平くんのお母さんは、呆れた表情をして立ち去るのだった。


「共康、それおれっちのだから、返してチョンマゲ」

「ああいいよ」


 松平くんが持っている淡い黄色の封筒が十吉の手に渡る。

 その二人があたしたちのいる場所に戻ってきたので、あたしは十吉に声を掛けてやることにした。


「あんた、手紙が戻ってきてよかったじゃないの」

「うん、よかったぴょん。でもこれ、共康の母ちゃんの読まれちゃったかもしれないおー」

「おい羽柴、よく見ろよ。それシールが剥がされてないだろ?」

「あ、そうか。これは共康の母ちゃんが中身を見てない証拠だっぴぃ!」


 十吉は封筒を裏返し、封印を確認している。

 お猿の顔のシールが貼ってあるのだった。

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