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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
消えたRと消えたL
34/72

合同捜査本部

 あたしは、トシヨン、明智くん、織田くん、松平くん、竹中くん、十吉、玉紗さんを前にして宣言する。


「二つの事件《消えたR》と《消えたL》を早期解決させるために、合同捜査本部を設置するわ」

「おい浅井、その《消えたR》ってなんだ! 十吉の手紙以外にも、なにかなくなったのか?」

「織田くん、あわてないの。それを話そうとしていた時に、十吉が割り込んできて、《消えたL》の話になっちゃったものだから、もう一つの事件、《消えたR》のことが置き去りにされていたという訳なの」

「あ、そういうことか。その《R》って、誘拐された爛丸ランマルのことなんだなあ」

「そうよ。でも、生命の安全を第一に考慮して、情報を伏せるために、イニシャル《R》を使って、そちらの事件を《消えたR》と命名したのよ。もちろん、このあたしが思いついたことよ。朴念仁の織田くんには、そういう配慮が欠けているのだから、気をつけてよ」


 あたしは、勝ち誇ったように気分になれた。ふふ。


「おいコラッ浅井! 黙って聞いてたらいい気になりやがって。この俺様が朴念仁だと? フザけるな! お前の方こそ、よっぽどマヌケな朴念仁なんだよ!」

「どうしてよ?」

「お前のせいで十吉が秘密にしておきたいことが皆にバレたじゃねえか!」

「やだあんた、そんな昔の細かいこと、まだ覚えてるの?」

「昔じゃねえだろがっ! まだ五分も経ってねえぞ!」


 ああ、また織田くんを怒らせちゃった。

 ここはできる女の鉄則、笑顔で受け止めなきゃね。


「そうでした。うふふ」

「笑ってごまかすな! つーか気色悪い笑い方やめろ!」

「オチャコ変顔だよ~ん。きゃきゃきゃ!」

「あははは!」

「ははは」


 織田くんに怒鳴られ、十吉、松平くん、竹中くんに笑われるあたしだった。

 それでもめげずに、話を続けることにする。


「それで、合同捜査本部に参加する人はいる?」

「わたしは参加するわ」


 トシヨンなら大歓迎よ。この子だって、爛丸を早く見つけたいだろうしね。


「僕は関わらないことにする」

「俺も。厄介事はごめんだからな」

「わたくしも、そのようなことには興味ありませんわ」


 竹中くん、松平くん、玉紗さんは不参加ってことね。まあいいわ。


「おれっちは参加するおー! おれっちのラブレターが消えたんだから、おれっちが参加しない訳にいかないぴょん!」

「あらあなた、わたくしの靴入れにコッソリ忍ばせたとおっしゃったのは、恋文のことですの?」

「わおっ、しまったおー!!」


 十吉、自ら墓穴を掘ったわね。こうなるのは時間の問題だと思っていたわ。だから、あたしが口を滑らせたのは些細なことよ。

 ここに明智くんが割り込んでくる。


「浅井さん、合同捜査本部とか言っているけれど、それは本来、複数の都道府県をまたぐような事件が起きた時に設置される捜査本部だよ」

「あ、そうだったわね。あたし、つい適当に言っちゃった」

「まあ、そんな細かい点と、あと《消えたL》事件の方はいいとしよう。でも、爛丸誘拐の犯行声明については、ちゃんと警察に届けないといけないよ。動物の誘拐の場合、誘拐罪は適用されないけれど、刑法第二百三十五条、窃盗罪に――」

「ポンカンは黙っていやがれ!」


 ナイス・フォロー、織田くん、こういう場合には役に立つね。


「ええっと明智くん、この事件はあたしの推理で解決してみせるよ。だから三日だけ猶予期間をちょうだい。それでいいでしょ?」

「しかし実害が出てからでは――」

「ポンカン、黙れと言っただろ!」

「分かったよ。でも、合同捜査本部には僕も参加させて貰おう。なぜなら、《亀甲きっこう花菱はなびし》は、浅井さんの家の紋所だからね。それを使ったこんな悪質な犯行を、僕は断じて見逃す訳にはいかない!」


 明智くんのメガネが、丁度キラリと光ったように見えた。

 なかなかに格好よかったかも、今のセリフ。


「いいよ明智くん、協力よろしくね」

「うん。分かったよ」


 前回は明智くんに先を越されたけど、今回はあたしが解決してみせるわ。負けないんだからね。ふふふ。

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