さらに事件発生!!
ここに明智くんが割り込んでくる。
「あの浅井さん、話が停滞しているのだけれど」
「そうよ、分かってるわ。ねえ松平くん、それ十吉に見せてよ」
「ああいいよ」
松平くんが、犯行声明の書いてある紙切れを十吉に見せる。
そこで明智くんが問い質す。
「これは、また羽柴くんがやったのかい?」
「おれっち知らないよ。今回は違うって」
前回はこいつが犯人だった。
だから真っ先に疑われても、仕方のないことなのよ。
「にゃーにゃー、それよりオチャコ聞いてくれろ」
「なに? というより、《にゃーにゃー》言わないの。《きゃきゃ》でしょ?」
「きゃきゃ、おれっちのラブレターが消えたんだよ。捜しておくれろぉ~」
「は!? それどういうこと?」
「おれっち初めてラブレター書いたんだ」
「誰によ?」
「いやぁー、恥ずかぴぃぴぃ、ぴよぴよ!」
そんな風にモジモジしても、十吉の場合は気持ち悪いだけよ。
「言うのが恥ずかしいのだったら言わなくていいけどさ、あんた、それを渡す前に落したってことかしら?」
「違うんだお~! おれっち、金曜の最後の授業に前に、コッソリその子の靴入れのところに入れたんだ。でも、おれっちやっぱり恥ずかぴぃーって思って、放課後になったらすぐ走って、取り返しに行ったんだおー。そしたらもう、おれっちの手紙がなかったんだおー! 誰かが、おれっちのラブレター取ったんだお~」
ここに松平くんが割って入る。
「それは、その相手が見つけて、持ち帰っただけのことだろ?」
「違うんだおー、まだその子の外靴が残ってたから、その子じゃないおー」
「帰ろうとして手紙を見つけたから、それを持って、教室かどこかに戻って、読んでいただけじゃないのか?」
「えー、そなのかい??」
そうねえ。松平くんが推理した線は、それなりにあり得ることと思うわ。
先週、金曜の六時間目、あたしらのクラスは数学だったけど、黒板に解答を書いている子があまりにもノロノロしていたものだから、チャイムが鳴ってから二分くらいは、皆、教室から出ることができなかったわ。
なにしろ、そのノロノロしていた子というのは、なにを隠そう、このオチャコ自身なのだから、間違いないよ。あたしって数学とかって苦手なの。てへへ。
そんなことより、兎も角も、ここは探偵オチャコの出番になったね。ふふふ。
「ねえ十吉さんってば、あんたその子に聞いてみればすぐ分かることじゃん。金曜日の放課後、手紙かなにか靴入れの中に入っていなかった、とね。どうよ?」
「えっえぇー、おれっち聞けないぴょーん! 恥ずかぴぃーんだおー」
「それじゃ、特別にあたしが代わりに聞いてあげるわ。だから、その子の名前を、この探偵オチャコさんにだけ、コッソリ教えてよ」
「しょうがないなぁ~、ちょいとこっちきてよ」
そう言って、十吉があたしを教室の隅へ連れていく。
近くに人がいないのを確かめて、十吉があたしの耳元へ囁いた。
「えっえー、あのお嬢様にぃ!? そんなの十吉には高嶺の花過ぎでしょ!!」
「がおぁー、オチャコ!! 声が大きいおーっ!!」
「あ、ごめんごめん。つい驚いちゃって、てへへ。あ、でも名前は言ってないから皆には分からないって。あはは……」
ここに織田くんが割り込んでくる。
「おい浅井、お前バカだろ。このクラスでお嬢様つったら、細川しかいねえよ!」
「あら織田くん、お嬢様といっても、余所のクラスか、別の学年にいるお嬢様かもしれないでしょ?」
「余所のクラスか、別の学年にいるお嬢様で、お前が知ってるやついるのか?」
「ええっ、そ、それは、ノーコメントよ。コメントがないってこと。ノーなの」
「ふん、ボロが出ちまってるぞ! そんなにもアタフタしてる、お前の態度こそが、他にお嬢様なんていねえ、なによりの証拠なんだよ!」
くうぅ~、一生の不覚だわ!
探偵オチャコともあろう者が、あんな朴念仁の織田くんなんかに、うまうまと揚げ足を取られるなんてね。今日は、まったく調子悪いったらありゃしない。
こうなったら、この事件「消えたL」も、あたしが鮮やかに解決してみせることで、ここまで被ってしまった汚名をキッパリ返上して、名誉をバッチリ挽回するしかなさそうね。
ええ、やってやるわよ。探偵オチャコの名に懸けてね!