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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
消えたRと消えたL
30/72

明智くんと織田くんと柴田さん

 そして入れ替わりでやってきたのは、知的なメガネ男子。


「浅井さんに前田さん、おはよう」

「うん、おっはよ~」

明智あけちくん、おはよう」

「どうしたの前田さん、また顔が真っ赤だけれど、もしかして風邪?」

「えっ、真っ赤!?」

「体調が悪いのなら保健室に行く?」

「ううん、風邪じゃないから。わたし、平気よ」


 人に親切にすることは感心なのは分かる。

 だけれど明智くん、胸キュンどきどき全開モード、今のトシヨンのことは、その余韻に浸らせておいてあげてよ。

 ここへまた一人、別の男子が入ってきた。織田信仲おだのぶなかくんよ。


「おいコラッ光男みつお! また朝っぱらから軟派ナンパしよっとかーっ! そんなのは、お前のキャラじゃねえんだよっ!!」

「あの、僕は別に、これといってその――」

「あ? なんだコラッ!」

「いや、その……」


 あー、また始まっちゃったよ。


「おいポンカン頭、ハッキリしろ!」

「だから、軟派などではなくて――」

「大ボケこいてんなよ、あからさまに軟派だろがぁ!」

「いや、だから」

「お前、前田の顔を見てみろっ! こんな真っ赤になってるじゃねえか。お前が無理やりに、迫ったんだろがっ!!」

「そんなことはないよ。織田くん、そういう暴言はよくないよ」

「ぬぅあんだとぁ、こんにゃろーっ!!」


 織田くんが、今にも明智くんを蹴り飛ばそうとしている。

 ここには、あたしが割り込まなきゃね。


「あー、はいはい、お二人さんとも、そこまでよ。ストップなの」

「おうおう浅井、お前は、またしゃしゃり出てくる気なのかっ!」

「そうよ、しゃしゃり出るわ。だって、そうでもしないことには、あんたたちの口論が、いつまでも長引くことになるでしょ?」

「うぜぇ! あっあ~、チョーうっざいわあ~」

「もう一つ、あんたがうっざいと思うことを言うよ。織田くんが自分で自覚していないみたいだから、教えてあげるわ」

「はあ? なんのことだ!」


 あたしは以前気づいて、言いそびれている真実を話すことにした。


「実はあんた、トシヨンが好きなんでしょ。隠さなくていいわよ」

「え、わたし??」


 あ、ごめんトシヨン、別にあんたを驚かせようという意図はないのよ。

 この時、織田くんが凄く怖い顔であたしを睨む。


「おいコラッ浅井!」

「なに?」

「なんで俺様が前田なんかを好きにならなきゃなんねえんだ!」

「えっ違ってる? あたしってば、推理ハズしちゃった?」

「当ったりめえだ! まあ前田は、お前よりずっとマシだがなあ。それでも、この俺が好きになるレベルじゃねえ!」

「え、好きになるレベルとかって、一体あんた何様のつもり?」

「俺は、《俺様》に決まってるだろがっ!」


 そうだったわ。今さらだけど、この人は、いわゆる「俺様男子」なのよ。

 あたしとしたことが、すっかり忘れていたわ。今日は調子が狂うね。


「それじゃ、織田くんが好きになるレベルって、梅組の女子なら誰よ」

「そうだなあ、少なくともクラス委員より上でないとな」


 クラス委員というのは、柴田勝恵しばたかつえさんのこと。

 丁度自分の名前が出たので、彼女が怪訝な表情をして、こちらへくる。


「私がなにか?」

「なんでもねえよ。お前とお前以下に用はない」

「そう。それなら気やすく名前を呼ばないで下さい」

「分かったよ。あっち行け」

「言われなくても行きます。私の名前が呼ばれたから、なにか用があるのかと思ってきただけなので」

「ふん。用はねえんだよ、鬼柴田」


 柴田さんは、悪口を言われても気にせずに、さっさと自分の席に戻る。さすがクラス委員といった感じね。

 だって、織田くんのような乱暴な男子を相手に、ここまで毅然とした態度を取れる女子は少ないのだもの。

 男子たちにしてもそう。織田くんに逆らおうというような人は、このクラスには明智くん以外に一人もいない。大福くんならやれそうだけど、彼の場合、織田くんを相手にしていない。別のクラスだと、例えば、松組にいる武田信健たけだしんけんくんくらいかな。

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