真田大福くん
今日は、もう一つ特別な戦略も考えてきたの。
あたしはそれをトシヨンに話してみることに決めたわ。
「捜査本部には梅組で一番に頼もしい男子、大福くんにも入って貰うわ」
「えっ、そんなの!?」
「これを機に、大福くんに急接近しちゃえば? もっと積極的にね!」
「でも、わたし……」
「ファイトよ、トシヨン!」
「う……うん。ちょっとくらいなら、積極的にしてみるよ、わたしも」
その意気よトシヨン、少しくらいなら強引にならなきゃね。玉紗さんという強力なライバルがいるのだもの。
そう思っていると、やっぱりお約束、ウワサの彼氏よ。こちらに走ってくるわ。
「よう浅井、前田、早いなぁ」
「大福くん、グッモーニィグ! ほうらトシヨンも」
「うん! だ、大福くぅん、おっはよー!」
「おう前田、おはよ。今日は調子よさそうだな?」
うんうん、いい調子だよ、トシヨン。
あとは、このあたしに任せていいからね。
「あのね大福くん、トシヨンは気丈に振る舞ってはいるけど、傷心なのよ」
「は、ショウシン?? ソロバンの級か、習字のこと?」
それは「昇進」というより「昇級」だね。というか、サッカー全力少年の大福くんには、「傷心」という言葉なんて通じないか。
それなら、ここはストレートに伝えるべきね。
「トシヨンの仔猫ちゃんが迷子なのよ」
「えっ、前田、そうなのか?」
「うん……」
突如、別のクラスの男子が、出入り口のところから割り込んでくる。
「真田、先に行ってるぞ!」
「おう武田、オレもすぐ行く!」
そう言ってから、大福くんはあたしらの顔を見る。
「浅井、前田、悪いな。今からオレら、自主トレやるんだ」
大福くんは、彼の席にカバンを置いて教室から出ていこうとする。
いつものようにグラウンドで武田くんと練習をやるのよね。
あたしが、「あ、大福くん」と叫んだら、トシヨンがあたしの肩に手を置いて、「オチャコいいの。行かせてあげて」と言うのよ。
トシヨンの気持ちは、一瞬にしてバッチリ理解できた。
「あんた、旦那さん思いのいいお嫁さんになるわ」
「いいお嫁さんだなんて、そんな、わたし恥ずかしぃ~」
照れてモジモジするトシヨンも、また可愛いですなあ。むふふふ。