表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
消えたRと消えたL
26/72

夫婦ゲンカも発生!

 突如、お父さんが駆けて、ダイニングルームに入ってきた。


「どうしたあ!?」

「お父さーん、ごめんなさぁーい!!」

「おいおいオチャコ、指から血が出てるじゃないか!」

「この子、またバカやって、怪我しちゃったのよ。笑ってやってよ」

「バカはお前の方だ! 早く手当てしてやらないか!!」

「分かったわよ。そんな怒鳴らなくたって。さあオチャコ、こっちいらっしゃい」


 あたしはキッチンの中まで、トボトボと歩いていった。

 お母さんが救急箱から絆創膏ばんそうこうを出して、あたしの指先に巻いてくれた。

 さっきまで振動していたスマホは、もう静かになっている。

 応急処置をして貰ったあたしは、すぐにまたグラス破損事件現場へと戻る。

 お父さんが、新聞紙を広げ、割れてしまった破片を集めてくれている。


「ごめん、お父さん、ごめんなさい! それって、お父さんがとても大切にしてたグラスなのでしょ? それなのにバカバカ、あたしってば……」

「なにを言っているんだ。オチャコよりも大切なのが、この世にあるものか。それより指の方はどうだい、大丈夫か? 可哀想に、やっぱりまだ痛いのだろう。ああでも、大怪我にならなくてよかった。なあオチャコ」

「お父さん!」

「オチャコ!」


 お父さんが、あたしをギュッと抱き締めてくれたの。

 久しぶりにお父さんの、いわゆる「オジさんしゅう」を、胸の奥へと吸い込むことになる、あたしだった。ちょっとむせそうになったけどね。


 それから家族三人で、夕食の「ちらし寿司」で食べた。

 松茸のお吸い物は、即席のものだったけれど、それはそれでおいしいと思う。


「あなたはオチャコに甘過ぎます」

「お前は厳し過ぎるんだ」

「私は、オチャコの将来を考えて、そうしてるのよ」

「子供は一つ一つ失敗を重ねて、成長するものだ。それをいちいちガミガミと怒鳴っていたら、とても臆病な子に育つぞ!」

「でも最低限、叱る時はちゃんと叱らなきゃ!」


 あたしのことで、お母さんとお父さんが、また口争いをしている。


「お母さん、お父さん」

「なによ?」

「なんだい?」

「あたし、これからはもっと気をつける。なにごともね。だから仲直りしてよ」

「いやあ、お父さんたち別になあ」

「ええそうよ、ケンカをしている訳ではないのよ」

「そうかあ、よかった。あたし、お母さんとお父さんが仲よくしてくれてるのが、一番好きなんだよ」


 世間一般では、「夫婦ゲンカは犬も食わない」とか言うらしい。

 だけれど、そもそもの原因があたしにあったのだから、こういう風にして、このあたし自らが、バッチリ仲裁役を務めなきゃね。えへへ。


 食後、あたしが自発的に、お皿洗いをすることにした。

 お父さんは「オチャコは怪我をしているのだから、そんなことはお母さんに任せておけばいいよ」と言ってくれたけど、「あたしなら平気よ。ビニール手袋をして洗うのだもの。お母さんも、ゆっくりしててね」と言い返して、お皿洗いをやり遂げるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ