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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
消えたRと消えたL
25/72

事件発生!

 二学期に入って、もう二週間以上が過ぎ去った。

 あたしは九月二日に、十四歳になったわ。でも、だからといって特別に、なにかが変わった訳ではない。そう思う。

 その誕生日には、大親友トシヨンが、あたしのために手作りのバースデイ・ケーキを用意してくれたよ。あの子のおうちに招かれて、二人で一緒に食べたの。すんごく嬉しかったし、おいしかった。

 それの前日、始業式の日にあったサプライズだけど、明智くんが本をプレゼントしてくれた。この二つサプライズだけが、この二週間で特別なことだったわ。

 もう一つ、水色桔梗の脅迫状事件も発生したのだけど、それは、頭脳明晰なメガネ男子がアッサリと解決しちゃったから、それほど特別とは言えないね。


《やっぱ明智くんには敵わない。でもあたし、次は負けないんだから!》


 明智くんは自分の家の紋所を使った悪質な犯行だと怒りながらも、それでいて冷静沈着な推理で犯人を暴き出したのよ。


 今日は日曜。夕方を迎える今、キッチンに面しているダイニングルームには、お酢のよい香りが漂っている。

 キッチンで食事の準備をしているお母さんに、あたしが話し掛ける。


「ねえねえ、お母さぁん」

「なあに、オチャコ」

「我が浅井家には、紋所とかってあるの?」

「そりゃあるわよ」

「え、どんなの?」

亀甲きっこう花菱はなびしといってね、中に花の図柄が描いてある六角形が三つ、正三角形になって並んでいるの」

「見たい見たい!」

「ほら、これよ」


 お母さんがグラスを見せてくれた。側面に模様がついている。

 見覚えがあるのだけど、今までほとんど気にしてなかった。


「ああ、これがそうだったのか!」

「そうよ。お父さんのお気に入りのグラスだから、絶対に割っちゃダメよ」

「うん分かった。ちゃんと気をつけるから」


 あたしは両手で慎重に受け取り、それを傾けてしばらく眺める。

 スカートのポケットに入れているスマホが、バイブレーションを始めた。


「わっ!!」


 突如、あたしの手からグラスが浮く。

 つかみ直そうとしたら指先に当たって、それが宙に向け、すっ跳んでしまう。


「あぁーっ!!」


 グラスは床に激突、ガチャンと鳴る。事件発生! 割れたの。


「わぁー、どうしよぉー!」


 あたしが叫んで、お母さんも大声で怒鳴る。


「オチャコ!! あなた、なにやってるのよっ!」

「どうしよ、これ!」

「あっ、危ないでしょ!!」


 あたしは、割ってしまったグラスに、つい指先を触れてしまった。


「うぅ、痛いっ!」


 指を切ってしまったの。これも事件。

 それでお母さんがまた怒鳴ってくる。


「本っとぉにもう、あなたって子は、どうしてそんななの!」

「わぁー、ごめんなさぁーい!」


 大きな声を出して、ただ心から謝るしかないあたしだった。

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