表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
二学期初日の事件
20/72

別の事件発生!!

 始業式が終わって、二年梅組の教室に戻ってきた。

 早速、お約束の席替えをすることになった。

 だけど、先送りになっていた問題がぶり返している。


「大福様のお隣りに座るのは、このわたくしです。他にどなたか、大福様の隣席を希望する方はいますか?」


 細川さんが、彼女に用意されている席に、一度は大人しく着いた。

 でも、すぐ立ち上がって、そんなことを言ったのだ。


《トシヨン、今こそ勝負しなきゃ!》


 そう思いながら、あたしは廊下側、二列目の先頭席を見た。

 トシヨンは黙ってうつむいている。強引な細川さんに対抗するのは、あんたにはハードルが高過ぎだね。仕方ないか。

 他の女子も、大福くんを好きな子はいるはずなのに、中には一学期に大福くんに告白して断られた人もいるのだけど、誰一人として手を挙げない。


「いませんね。決まりました」


 足利先生は、また困ったような顔をして、席決め用のクジの紙束をもて遊んでいるだけ。こんなのでいいのかなあ?


「おい細川、いい加減にしろっ! お前がいた東京のなんとか学院がどうかは知らないけど、こっちにきたならここのルールに従え。それができないなら、さっさと東京に帰れ!」


 え!? 先生の代わりに大福くんがビシッと言っちゃってるしぃ!

 でもでも、そこまで厳しくしなくても。細川さん泣いちゃうよ?

 少し心配になって、廊下側の一番後ろの席を見た。

 ええーっ!? あの子、微笑んでいるしぃ! あんたモナリザか?


「分かりました。うふふ」


 あんなに強引なお嬢様が素直に聞いて座ったよ。

 凄い! というか、これってどういう心の内?


《うーん……あ、そうか、分かった!》


 そうよ、自分の好きな男子が格好いいことを言ってくれたのが嬉しいのよ。

 叱られても不貞腐ふてくされたりしないで、ちゃんと笑顔で受け止めるだなんて、あの子やるわねえ。手強いわ。

 そうだ、そうよ、それこそができる女の鉄則なのよ!

 うんうん、すんごく勉強になったわ、細川さん。


「あとハッキリ言っておく。オレと細川は別になんでもないんだからな! 小学三年まで同級生だっただけのこと。オレが好きなのは、ここにいる浅井だ!!」

「へ? 大福くん……?」


 一瞬の沈黙の後、教室が、というかあたしが、ドヨメキの渦に包まれた。


「浅井、オレとつき合ってくれ!!」

「へえ!?」


 あれれ?? あたしが告白されている?


《ウソ、やだ、どうして?》


 相手は大勢の女子をファンに持つサッカー少年。

 まさか、あたしのことが好きだったなんて、まったくの想定外だよ!

 あ、ということは、あたしもトシヨンの強敵になるのか?

 三角関係? ええーっ、なにそれっ!? これは事件だ!


「ああ悪かった。いきなりで驚かせたな。済まない」

「……」

「けど返事くれ、いつでもいいから」

「分かった」


 あたしは普段と違う、ちょっと「らしくない」小声で答えた。

 大福くんに顔を向けられないままだった。真っ赤だよ、絶対に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ