別の事件発生!!
始業式が終わって、二年梅組の教室に戻ってきた。
早速、お約束の席替えをすることになった。
だけど、先送りになっていた問題がぶり返している。
「大福様のお隣りに座るのは、このわたくしです。他にどなたか、大福様の隣席を希望する方はいますか?」
細川さんが、彼女に用意されている席に、一度は大人しく着いた。
でも、すぐ立ち上がって、そんなことを言ったのだ。
《トシヨン、今こそ勝負しなきゃ!》
そう思いながら、あたしは廊下側、二列目の先頭席を見た。
トシヨンは黙ってうつむいている。強引な細川さんに対抗するのは、あんたにはハードルが高過ぎだね。仕方ないか。
他の女子も、大福くんを好きな子はいるはずなのに、中には一学期に大福くんに告白して断られた人もいるのだけど、誰一人として手を挙げない。
「いませんね。決まりました」
足利先生は、また困ったような顔をして、席決め用のクジの紙束をもて遊んでいるだけ。こんなのでいいのかなあ?
「おい細川、いい加減にしろっ! お前がいた東京のなんとか学院がどうかは知らないけど、こっちにきたならここのルールに従え。それができないなら、さっさと東京に帰れ!」
え!? 先生の代わりに大福くんがビシッと言っちゃってるしぃ!
でもでも、そこまで厳しくしなくても。細川さん泣いちゃうよ?
少し心配になって、廊下側の一番後ろの席を見た。
ええーっ!? あの子、微笑んでいるしぃ! あんたモナリザか?
「分かりました。うふふ」
あんなに強引なお嬢様が素直に聞いて座ったよ。
凄い! というか、これってどういう心の内?
《うーん……あ、そうか、分かった!》
そうよ、自分の好きな男子が格好いいことを言ってくれたのが嬉しいのよ。
叱られても不貞腐れたりしないで、ちゃんと笑顔で受け止めるだなんて、あの子やるわねえ。手強いわ。
そうだ、そうよ、それこそができる女の鉄則なのよ!
うんうん、すんごく勉強になったわ、細川さん。
「あとハッキリ言っておく。オレと細川は別になんでもないんだからな! 小学三年まで同級生だっただけのこと。オレが好きなのは、ここにいる浅井だ!!」
「へ? 大福くん……?」
一瞬の沈黙の後、教室が、というかあたしが、ドヨメキの渦に包まれた。
「浅井、オレとつき合ってくれ!!」
「へえ!?」
あれれ?? あたしが告白されている?
《ウソ、やだ、どうして?》
相手は大勢の女子をファンに持つサッカー少年。
まさか、あたしのことが好きだったなんて、まったくの想定外だよ!
あ、ということは、あたしもトシヨンの強敵になるのか?
三角関係? ええーっ、なにそれっ!? これは事件だ!
「ああ悪かった。いきなりで驚かせたな。済まない」
「……」
「けど返事くれ、いつでもいいから」
「分かった」
あたしは普段と違う、ちょっと「らしくない」小声で答えた。
大福くんに顔を向けられないままだった。真っ赤だよ、絶対に。