讃岐うどん
あたしが四国の香川に上陸してから、早四日が過ぎた。
まあ「上陸」とは言っても、別にあたしは台風とか疫病とかじゃないけどね。
それで今のところ、ここでは事件らしい事件は起こっていない。
でも、滞在日数はまだ一週間残っているのだから、あたしが活躍するチャンスだって、まだまだ残っているはず。
お婆ちゃん家のお隣りさんが讃岐うどん屋さんをやっているの。
だから、ここへ遊びにきた時には、必ず一回以上、そのお店へ食べに行くことにしている。だって、そこの讃岐うどん、凄くおいしいんだよ。
そういうことだから、本日、今年の二度目となる訪問をする。
こんなにもハイペースで食べたくなってしまう、「讃岐うどん本舗 麦斗屋」のうどんを一推しするオチャコなら、今年ここでの滞在中に、あと三回は食べにくること疑いなし! なーんてね、えへへ。
兎も角、あたしはお店の正面に立ち、引き戸を開けて店内に入る。
お客さんの数は結構少ない。今の時間帯、お食事時ではないからね。
「こんにちは、きたよ~」
「あらチャコちゃん、いらっしゃい」
「あたし、また食べにきたんだ。へへ」
「毎度ありがとね」
「ふふ」
このお店を支えている店長さんは、麦斗浪江さん。
心根の優しい人で、和風の美人さんでもあり、あたしのお婆ちゃんと同じ歳だなんて、とても信じられないこと。
どう見たって四十代前半、あたしのお母さんくらいの年齢と言っても、過言ではないくらいに思えちゃうよ。
それはそうと、このお店は、いわゆる「セルフ・サービス」なんだよ。
食券を販売機で買って、四角いお盆と一緒にカウンターに出すの。
うどんを、温かいのか冷やしたのか、選んで伝えると、浪江さんかアルバイトのお兄さんか誰かが、そのうどんの入った丼鉢を、お盆の上に置いてくれる。
トッピングやサイドメニューが欲しいと思ったら、その券も買って一緒に出せばいいの。そうすると、小皿に載った海老天ぷらとか、お稲荷さんや生玉子とか、どれでも陳列棚から取り出して貰えるからね。
天かすや刻みネギやらは、自分でうどんに適量を、ふり掛ける。
あとは、熱々の汁か冷え冷えの汁か、好きな方を選んで、丼鉢にぶっ掛ける。
それで一丁上がりとなるの。
今日も超暑いことだし、あたしは冷やしたうどんを選び、トッピングは味つけの「お揚げさん」にして、天かすとネギを載せ、冷え冷えの汁を掛ける。七味も少しだけパラパラとね。
これって、猛暑日には格別なんだから。えへ。