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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
二学期初日の事件
18/72

アグレスィヴお嬢様

 あたしは、細川さんの見目麗みめうるわしい姿をじいっと見つめていた。つまり、釘づけになっていたということ。

 すると彼女は、そんなあたしの熱い視線を感じてしまったのか、こちらを向いてあたしを睨んでくるの。

 マジマジと見ていたものだから、怒らせちゃったんだ。

 しかも、こちらへ歩いて近づいてくるしぃ!

 剣道三段・柔道五段の松永さんがいなくなったのが、せめてもの救い。

 兎に角、ここは謝っておこう。


「あの、ごめんなさい。あたし、つい見とれて……」

「大福様、ようやく一緒になれましたね。これも神のご加護です」


 あれれ、大福くんに話し掛けているよ!? 知り合いか?


「細川、あのなあ……」

「もう逃がしません。うふふ」


 なにこの子、すんごく怖いしぃ!

 きっと彼を追ってきたのね。大福くんは初等部の四年生になった時、東京からあたしの家の近くに引っ越してきたのだけど、それまでは細川さんと同じ学校だったと思うよ、あたしの推理では。

 というか、またこちらを見て、あたしのこと睨んでるしぃ!


「あなた、そこをどいて下さい」

「へ?」

「わたくしは、ここの席に決めました」

「決めましたって言われても……」


 細川さんから視線をそらして、あたしは足利先生の顔をうかがう。

 先生も困っているみたいだけど、なんとか言ってよ!


「細川の席は廊下側の一番後ろに用意してある。だからあちらに――」

「いやです」


 ええーっ!? 先生に逆らったしぃ!

 あんた、どこまで強引な、アグレスィヴお嬢様なのよっ!!


「あー、まあなんだ、今から始業式がある。その後のホームルームで席替えをすることにしているから、キミの席のことはその時にまたな」

「そうですか。分かりました」


 えっえーっ!? 先生が、今ある問題を先送りにしちゃうの?

 ここでビシッと言っとかなきゃ! たとえ相手が転入生でも美人でも!


「おお、もう時間だ。皆すぐ廊下に出て並べ。体育館に行くぞー」

「大福様、一緒に参りましょう」


 細川さんが大福くんに手を差し延べている。これはつまり「手を引いてエスコートしてちょうだい」という意味だわ。もしかして恋人気取り?

 というか、トシヨン! ごめん、あんたの存在を忘れていたわ。あんたの強敵が現れたのよ。どうすんの!?

 だって、いくら大福くんが積極的過ぎる女子は好みでないとしても、この子の美貌は驚異的だもの。男は美人に弱いという実例もある訳だし、もしかすると大福くんの気持ちだって揺れるかもよ?

 そんな不安がよぎり、廊下側二列目の先頭席、そこにまだ座ったままでいるトシヨンを、あたしは見た!

 ぽかんと口を開けて、まあなんとも情けない顔をしているの。

 トシヨン、そんなのじゃダメだよ! あんた細川さんに勝てないよ!

 あ、でもでも、あたしはトシヨンの味方。あんたの恋、絶対に実らせてあげるんだからねっ!!

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