表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
二学期初日の事件
17/72

転入生のオーラ!

 トシヨンと織田くんによる聞き込みは、どの人も爛丸のことを誰にも話していないという結果に終わった。

 でもトシヨンの弟、十吉の弟から話が広まっていることもあり得るので、トシヨンと十吉には家で確認を取って、明日報告して貰うことにする。

 それから捜査の方針について話を続けていた。

 少ししてチャイムが鳴り、時間切れになった。

 教室には、大福くんも戻っていて、あたしの右隣りに座っている。

 額から汗を流しちゃって顔が輝いている。すんごく爽やか!

 汗は汗でも、十吉のようなスメル、つまり臭み(・・)をまったく感じさせない。

 脅迫状のことは大福くんには話さない。

 彼は、なかなかに正義感のある人だから、知ればすぐにも立ち上がって、「誰がやったんだ! オレと浅井は別になんでもないんだからな!」なんて叫びかねないもの。

 そんなことを色々と考えていたら、担任の足利あしかが先生が入ってきた。辛うじてイケメンと言っていいレベルの二十六歳。

 し・か・も、見慣れない女子を連れている。きっと転入生だ!


「ええっ!?」


 その姿を見て、思わず声が出ちゃった。すんごいオーラを放っているのよ!

 ほぼ左右対称の整った顔だわ。

 少しカールしている睫毛まつげ、切れ長の目、小高くて形のいい鼻先。さらには、くすみやニキビ跡の一切ない肌。純白の真珠パールで覆われているような、透き通った白さよ。

 そんでもって、唇のすぐ左下にチャーミングなホクロが一つある。これが唯一の非対称パーツで、まさに愛嬌ボクロだね。

 肩下二十センチくらいで切り揃えた黒髪は、ここの校則に従い、黒のゴムで一つにまとめられている。素朴なヘア・スタイルだけど、清楚な顔立ちとのコンビネーションが絶妙なのよ。黒を引き立たせているのよ!


 そして制服の着こなし。半袖の白いブラウスに紺の紐タイ、グレーのジムスリップという、いわゆる「ジャンパースカート」、これらの組み合わせは、あたしたちが着ているのと同じ、ここの女子の夏服。なのに、なにかが違っているわ。

 うーん……あ、そうか、分かった! そうよ、この先の成長をまったく考えていないのよ。つまり今の体にピッタリなサイズってこと。正確な寸法であつらえたんだ。

 今日初めて着たような浮いた感じがしないの。デフォルトでここまで着こなすとは、なかなかにできる女だわ!


「皆様こんにちは。東京のせいアガサ女学院より、本日この北琵琶学園に転入して参りました、細川玉紗ほそかわたましゃです。どうぞよろしく」


 声まで透き通っているしぃ! あんたカナリアか?

 でもちょっと待ってよ。少し離れて黒服の紳士が立っている。もしかしてお父さんかしら?


「この者は、わたくしの運転手を務めております、執事の松永秀広まつながひでひろです。松永は剣道三段・柔道五段の腕前を持ち、わたくしのボディ・ガードとしても日々役立ってくれています。これまでにも、例えば繁華街の散策を楽しんでいましたわたくしに、失礼な振る舞いを働こうとした、不埒ふらちやからどもを幾人も病院送りに――」


 運転手の紹介まで始めちゃってるしぃ!


「あのう、話の途中に悪いのだが細川」

「なにか?」

「えっと、そちらの方には、これでお引き取りを願いたいのだが……」

「あら、松永を教室にいさせては、いけませんか?」

「うんまあ、授業参観の日ではないので……」


 いつもはちょっと厳しい足利先生が今は弱気になっている。

 相手が転入生で美人だからだ。意外に頼りないところがあったね。


「では仕方ありません。松永、お下がりなさい」

「承知しました。それではお嬢様、後ほどお迎えに上がります」

「ええ、よろしく」


 見事なお嬢様ぶりだわ。こんな人を身近で観察できるなんてラッキー!

 人間観察は、推理を磨くのに持ってこいだもの。えへへ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ