篤い友情
ふふふ、織田くんってば、実に単純な男ね。
つまり真のリーダーは、あ・た・し、なのよ。へへ。
そんな風にホクソ笑むあたしに、明智くんが話し掛けてくる。
「織田くんの扱いがうまいね? 丁度これで二人になれてよかったよ。浅井さんだけに話したいことがあるんだ」
えっ、なになに!?
もしかして、鬼のいないうちに抜け駆けで、あたしに告白するつもり?
ちょっとハートどきどきモードかも。てへへ。
「さっきの前田さんの様子、浅井さんはどう思った?」
「えっ、トシヨンの様子?」
「犯罪、刑法、脅迫、警察、という言葉を僕が言った時、前田さんは体をビクリと震わせていたんだ。浅井さんは気づかなかったのかな」
明智くん、そんなところまで観察していたの!?
「そ、それはつまり、物騒な言葉だから怖かったのよ」
「そうだろうか? 最も身近で意外な人物が、ということも――」
なにそれ!? ウソ! まさかトシヨンを疑っているの??
いやいや、そんなはずないから、絶対に!!
「怒るわよ! トシヨンはあたしの一番の親友なの! 明智くんがどう考えようと、たとえクラス中を敵に回しても、あたしはあの子を信じて、味方のままでいるんだからっ!!」
「うん、分かった。それを聞いて安心したよ。キミの前田さんに対する、その篤い友情を信用しよう。でもいいなあ、浅井さんは」
「へ?」
「キミは、その辺の男子たちよりもずっとサバサバしているし、純粋な心を持っていて羨ましいよ。とても凛々しい女子だ」
ええっ!? なになに? ウソ! まさかそれって!
そうか、そうよ、やっぱりよ! あたしの推理バッチリ!!
「明智くん、さりげなく遠回しに告白してるでしょ? あんた、やっぱりあたしのことが好きだったんだ。あ、あたしも今はちょっとだけ――」
「浅井さん待って、それは違う。さっきも言ったことだけれど、僕にとってキミは同級生の一人だよ。その認識自体は変わっていないから」
がっがあーん!!
またまた違ってるしぃ! やっぱり、あたしってば自意識過剰、紛れもなくセルフコンシャス体質だったわ!!