オチャコ初の独り旅
エヴリデイ、アイム・ハッピー!
あたしの名前は浅井茶子だよ。家族や親戚の人、学校で仲のいい友だち、いろんな人たちから、「オチャコ」って呼ばれているの。
そんでもって、好きな科目は英語で、いつもフルパワー全開モード。
あとそれから、緋色の糸がもつれたような、そんな恋愛感情の謎を、自慢の推理で解くことだって得意なの。へへへ。
よく探偵小説を読んでいて、特にシャーロック・ホームズのシリーズは、ほとんど読破したわよ。
瀬戸内の海上を、列車で走っている。
あたしは、窓の先に広がる海を見てればいい。天気は良好、凄く綺麗よ。
香川県の坂出市、お婆ちゃんの家へ向かっているところ。
今のあたしは十三歳、もう中等部の二年生になっているのだから、これくらいの独り旅、どうってことないもの。
お母さんは少なからず心配しているみたいだけど、「可愛い子には旅をさせよ」とか、そんな諺だってあるんだから、心配ご無用。なんてね。えへへ。
お盆だというのに、お母さんもお父さんも、毎日がお仕事・お仕事の連続なんだから。いわゆる「ワーカホーリク」というやつだね。
それの語源は、ワーカーとアルコホーリク、つまり、お仕事アルコール中毒。
なんだかヘンテコな造語だね。お仕事とかお酒とかに、夢中になるなんて、大人の心理は謎ばかり。
それで、あたしはどこへも連れてって貰えない。
だったら、ちょっとくらい、旅をさせてくれたっていいでしょ?
別に、当てもなく放浪するんじゃないのだし。あたしが浅井家を代表して、先祖供養に行くのだから、むしろ褒めて欲しいわ。――なんてね、ホントは遊ぶことが最優先の目的なのよ。てへへ。
そんでもって今日は八月十四日。もう夏休みの宿題だって、適当にやったから、全部終わっている。
だから、なんの気兼ねもなく遊びまくれる。イエイ!
二十六日の朝まで、お婆ちゃん家に泊めて貰うんだよ。うふ。
《今年はどんな事件が、あたしを楽しませてくれるのかしら?》
去年の夏は、お母さんたちと一緒に里帰りしたのだけど、その時、ちょっとした事件があって、それをあたしの推理で、見事に早期解決したの。
だから鼻が高くて、「あたしって、プチ・シャーロック・ホームズだね!」なんて言って、そしたらお婆ちゃんが楽しそうに笑ってくれた。
その時は、あたし、凄く嬉しかったんだよ。
車掌のお姉さんが「間もなく坂出に到着」と伝えている。それは、岡山から快速ライナーで香川へ渡って、最初に停まる駅。
坂出で降りたら、高松へ向かう各駅停車に乗り換え、最寄り駅まで行く。
お婆ちゃん家は坂出市にあるけど、そのお隣り、高松市のすぐ近くなの。