序章
自身の黒いバケットハットを抑えながら、星の輝く空を見上げた。
辺りに漂う血生臭さ。
男の足元には、人間らしき何かが2つ転がっていた。
「今日の狩りを終えたよ。いつも通り頼む……K市のA町だ」
男は電話を切り、話終えるとタバコを口に食わえ一呼吸。
途端に、伏せていた人間らしき者がゆっくり体を起こし始めた。
「はぁ…はぁ…、貴様らは何者だ? 私達は、人間社会を憎しみ、復讐しているだけであって、何も悪くない! 私を! こんなふうにした──」
全てを喋り終える前に、その頭部は胴体から離れこと切れた。
「遅かったな梁」
「3分で来たんでやんすよ? これ以上速く来いなどと言われたら、それはもう光の速さで動くしかないでやんすよ」
突然現れた小柄なスキンヘッドの男は、刀に付いた血を拭いながら口を尖らせて、男を上目遣いで見る。
「そういじけるな、からかってみただけだ」
「旦那の場合、からかってるのか本気なのかわからないでやんすよ……報酬はいつも通り振込んでおきやすね」
梁は、ポケットから取り出した小瓶に入った透明な液体を死体に振りかけた。
死体はパチパチと音を出し始め、緑色の火は、あっという間に炎にかわり死体は灰になり、風に飛ばされ散っていった。
「よし、これで完了でやんす。また、腐心者情報が入り次第連絡いたしやすね」
梁は、そういうと闇に溶け込み音もなく姿を消した。
「どうせ、すぐに新たな腐心者は現れるだろうよ……こんな時世だしな」
ふぅ。と空にタバコの煙を吐き、男もまた闇に消えていった。