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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第10章 疫病編

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九十六ノ舞「兄として」



-----


先輩たちが勝利し、昼休憩に入った。

ショウヤとイオを残し、シャルロットと共にいつものホットドッグ屋に昼飯を買いに来たところで後ろから2人とも頭を叩かれた。


「貴方たち、控室を用意している意味分かってる?」

「まあだからこうしてアタシらが居るんだけどな。」


相変わらず喧騒の中でも綺麗に通る声。

そして大勢の観客の中でひときわ目立つ金髪と和服。

2人だけなんて最近では珍しい。

言い方から判断するに、外出は本来しないでほしかったようだ。

まあアカネの一件があったからそう思うのは当然か。

ただ、空腹で力を出しきれないのでは意味がない。

ということで背に腹は代えられず、買いに来たのだ。


「2人が居るところには軍隊も攻めてこないだろ。」

「相変わらず可愛くねえな、ユウ。姉さん悲しいぞ。」


よよよ、とわざとらしく顔を抑えて泣き真似をする姉さん。

口元のニヤニヤを取り除いてからやりやがれ。

一方のシャルロットは空手家のようにルーナ隊長に「押忍!」とあいさつしている。

なに、そんなに修行というか上下関係厳しいの。

ふとルーナ隊長を見ると、目が合った。

あまりにもじっと見られるものだから何か顔についているのかと心配になる。


「ユウリくん、さすがに軍隊に攻められたらこのじゃじゃ馬を護りつつ自衛するのは無理があるぞ。」

「いやそんな真顔でマジレスされましても。」

「ぷっ・・・あははは!!ユウ、コイツ冗談通じねえからって誰がじゃじゃ馬だコラァ!」

「アンタよアンタ。歳はくってるくせに見た目と中身は一切変わらないんだから。」

「よぉし剣を抜けアイギス。叩き斬ってやる。」


言いながら抜刀する金髪合法ロリ。

いつの間にやらギャラリーが出来ていて、どっちが勝つかの賭けまで始まってしまったぞ。


「店の前で騒ぐのは6年経っても変わらねえな。

ほれ、いつものお待ちどうさん。」


当時を振り返るような懐かしむ目で2人を見る店主さん。

大きい紙袋を2つ差し出してくれているのでそれを受け取り、代金を払おうとしたところ。


「今回はサービスしておくよ。」

「えっ、でも・・・」

「いいんだよ!これから試合だろ?

うちのホットドッグ食って腹を満たしてくれりゃあそれでいい。その代わり、頑張れよ!」


ホント、なんていい人なんだろうな。

シャルロットと共にお礼を言い、深々と頭を下げた。

そんな中で未だにギャーギャーと騒いでいる姉さんたち。

思わずため息をついて「どうすんべ?」とシャルロットに目線を向けると、既に盾魔法を展開していた。


「いい加減にしなさい!!『冷却(スヴェル)』!!」


姉さんの目の前に現れる水色の盾。

まだ暑い陽気だというのに、目に見えるほどの冷気が辺りを覆った。

その冷気に動きがとまった隙を見逃さず、姉さんの開いた口にホットドッグをねじ込む。

驚きのあまりか、思わず大の字に倒れる姉さん。

倒れながらもむしゃむしゃと食べ進め、徐々に見えなくなっていくホットドッグ。

凄いシュールだし、お行儀悪いから座って食べなさい。

まあ、とうの昔から行儀とか期待してないけど。


「オヤジ!相変わらず美味いな!」

「当たり前だ、誰が作ってると思ってんだ。」


食べ終えて上半身だけ起こし、満面の笑みで味を褒める姉さん。

その言葉に嬉しそうな顔をしながらも応えるオヤジさん。

こんなやりとりが昔からあったんだろうな。

姉さんのニヤリ顔ではない、満面の笑みを久しぶりに見れた気がする。


ちなみにルーナ隊長はベンチに座ってお行儀よく食べていた。

うちの姉に爪の垢を煎じて飲ませたい。



-----


「うー、辛いです・・・」


マスタードの辛さにイオが涙目になりながら鼻を抑えて足をパタパタさせている。

いつぞやのシャルロットとほぼ同じ反応なのに、なんでこんなにも可愛いのだろう。

ショウヤは涼しい顔をしながら食べていたが、いつもゆっくり食べるショウヤらしからぬスピードで食べ終えていたところを見るに、口にあってはいたのだろう。


「ユウリさん、残り食べてください。」


イオが半分ほど頑張って食べた残りを差し出してきた。

まあ食べ物に罪はないからね。

決してイオが食べていたからとか、そういうやましいシャルロットさんそのホットドッグ返してください。

イオから奪い取って一気に食べつくしてしまった。

なんてことを。


「さて、そろそろ時間よ。」

うっぷ、と言いながら時計を見るシャルロット。

無理して食べなきゃよかったのに。


「必ず勝って、そしてアカネを助けよう。」


全員が頷いて立ち上がる。

相手はノースリンドブルム代表。

こちらは4人と不利ではあるが、先輩たちには負けていられないからな。



-----


「やってまいりました、準決勝第2試合!

アビスリンドAチーム対ノースリンドブルムAチーム!

アビスリンドが午前中に行われ勝利を収めたBチームに続くことができるか!

はたまたノースリンドブルムが新人戦のリベンジを果たせるのか!?

要注目の1戦、まもなく試合開始です!!」


強い引力に引き寄せられる感覚の後、急な気温の上昇を感じた。

直後、脚をとられる感覚。

辺りに遮るものがないせいで目がくらむほどの強い日差しに、見渡す限りの砂、砂、砂。

今回のフィールドはどこをどう見ても砂漠。

俺にとっては最悪だな。

1人だけ熱に耐性があるのか、汗1つかかないで仁王立ちしている奴もいるが。

すでにシャルロット以外の3人は汗をかき始めているんだけどな。


「ユウリ、この中走れるかい?」

「俺の速度強化は脚を早く上げて下ろすことで成り立ってるんだ。

こんなに踏ん張りがきかない地面じゃ、さすがに無理だな。」


なので単純な剣の腕だけで動かなくてはならない。

ノースリンドブルム相手にそれはあまりにも不利だ。

2年生の砲弾使いも加わり、『氷の女王』も遠距離タイプ。

それを相手にするのは条件がタイであってこそ可能ではあるが、正直このフィールドでは出会いたくない。

そしてもう1つ。

未だに1人だけ能力が分かっていない奴がいる。


ケイオス・デカルガ。

ここまで守備についていたものの、その機会がなかったので能力が分からず仕舞いだ。

夏休みにノースリンドブルムに行っていたショウヤも知らないらしく、要注意だ。



「ユウリが動けないんじゃ、やみくもに攻めても仕方ないね。

一旦全員で守備をしながら相手の数を減らそう。」

「この暑さで長期戦とか鬼か。

アカネのこともあるから早々とケリをつけたいところだけどな。

流石にシャルロットとイオを攻撃に回すわけにもいかないか。」


いつでも行くのに、みたいな顔で落ち込むシャルロット。

イオはイオで氷魔法を使って周囲の気温を下げている。

体力が多いほうではないイオとショウヤのためにも、長期戦は避けたいところなんだがな。



試合開始からしばらく。

ただ待っているだけなのに、暑さで汗が流れる。

遠くを見ようとすると光の屈折で揺らいでみえるほどだ。

アビスリンドは港町なだけあり、夏といえどそこまで暑さは感じない。

そこで生まれ育ったアビステイン兄妹にとっては、この砂漠での闘いは酷かもしれないな。

イオの氷魔法で少しは涼しげな環境ではあるものの、砂漠は砂漠なのだ。

あちいのよ。


「飛べ。『飛竜─雪華』。」


姿がまったく見えず、気配もない。

完全に何もない場所からの急な詠唱。

敵の姿を目視できていなかった俺は、雪の竜に完全に飲み込まれていた。


「ユウリ!!」



-----シャルロット視点


ショウヤの声が砂漠に響く。

クリスタル周辺には岩場もなく、とくに打ち付けられることはなかったとはいえだ。

あのユウが、かなりの距離を吹き飛ばされたのだ。

正直に言って少なからず、アタシたちは動揺した。

心のどこかで、ユウが居ればどんな不利な状況でもなんとかなると思っていた。

それはアタシだけではなく、イオとショウヤもそうだろう。

ノースリンドブルムが突いてきたのは、まさにそこだ。

あれだけ油断禁物と鍛えてきたのに。


今までアカネとユウに頼りすぎていた。

2人と出会ってとっても成長できたから、これからも一緒に居れば成長できると思っていた。

そんなのは信頼とは言わないわよね。

ただの甘えだ。


一緒に居れば?

それで良いのか、シャルロット・マリア・ヴァルローレン。

ミドリ師匠に弟子入り志願をした時の言葉を思い出せ。



一瞬だけ目を瞑り、息を整えた。

もうこれだけで完全にスイッチが入る身体になってしまった。

今のアタシならミドリ師匠とも10分だけ打ち合える。


「アタシがやるわ。」


ショウヤとイオに声をかけ、前に出た。

姿は見えなくても、そこに居るのは分かっているから。

左側から銃声が聞こえたとほぼ同時に。


「『戦乙女(ヒルダ)』」


左手を開き、最も早く展開できる盾を構える。

ガキンと音を立てて砂に落ちていく魔法銃弾。


「もっと速い銃使いと闘ったことあるわよ。

というか、こそこそ隠れてないでさっさと出てきなさい。」


アタシの声もむなしく、どこを見ても姿が見えない。

ただの魔法で隠れているだけなら砂に影が映ったりするだろうけど、それもない。


前でも左右でも後ろでもない。

当然上でもない。

となれば答えは1つだ。


「イオ。ここら辺の砂をさ、石とかに固められない?」

「確かに砂に潜ってると思いますけど、発想がめちゃくちゃこわいですよ!?」


できなくはないですけどね、と言いながら杖を構えるイオ。

その足元の砂が少し不自然に動いた。


「イオ、下!!」

「えっ?きゃっ!!」


イオの足元から2本の腕が出てきて、砂の中へと引きずり込む。

助けようと手を伸ばすも間に合わず。

完全に姿が見えなくなった瞬間、銃声が鳴り響いた。


「イオン・フォン・アビステイン、戦闘不能!」


伸ばした右手が虚しく空を切る。

気付けばミシリと音が鳴るほど拳を握っていた。

仲間を護るために盾魔法を覚えたはずだ。

なのにアカネを護れず、ユウも吹き飛ばされ、イオも戦闘不能に。


自分の無力さに悔しさがこみ上げる。

呆然と立ち尽くすアタシに向かって、背後から再び雪の竜が飛ぶ。

堂々と姿を見せない相手なんかに、負けたくないのに・・・!


そんなアタシの気持ちを知ってか知らぬか、ショウヤが竜とアタシの間に割って入る。

盾を展開しようとしたアタシよりも早く、雪の竜は霧散した。


「君は1人で闘っているわけではないぞ、シャルロット。

悔しいと思う気持ちは後にとっておいてくれ。」


そう言うショウヤの顔と声は普段と明らかに違っていた。

何よりも震えた背中から、いつもの温厚なショウヤとは思えぬ感情が見える。


「すまないが今回ばかりは、我慢できそうにない。

今から見る僕の姿は、忘れてくれると嬉しいよ。」


言いながら額の汗を拭い、両手剣を抜き放つ。

二つで一つの銘刀(かんしょうばくや)の真名を開放し、荒々しい風が吹き荒れた。


「覚悟しろよ。

1人の兄として、貴様らを絶対に許さない。」


突風に揺れる髪の間から。

初めてショウヤが怒気、そしてここまで感情を露わにするところを見た。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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