表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第10章 疫病編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/167

九十五ノ舞「それが、仲間ってものだろう?」


-----


腹ごしらえも済み、何もなければ商会へ殴りこもうと思っていたのだが。

食べている途中にクロエから、今日の午後から明日の昼頃まで会長は商談でクノッサスに居ないと聞いた。

すでに時間は昼時になっており、今行っても門前払いをくらうだけだろう。

目的が特効薬の奪取だけであれば、むしろ居ないときこそ殴り込みのチャンスだとは思うのだが、クロエの頼みを聞くと決めたのだ。

ジャベリックに罪を償わせなければなるまい。


つまりは明日の準決勝は、やはりアカネ抜きでノースリンドブルムと闘わなければならないわけだ。

まあ特効薬があったとしても翌日の試合に間に合うほどの効能はないだろう。

どのみち明日には間に合わない。

なので奪取だけの殴り込みもやめておこう、という話の流れになった。


クロエには浸入時に手助けしてもらうように約束を取り付けた。

もちろん快諾してくれた。

なんでも、建物を抜け出して闘技場に観戦に行く際に使用する抜け道があるらしい。

良いところのお嬢様だってのに危機感がないのは、それだけクノッサス商会という後ろ盾が強力だということだろう。

確かに敵に回したらと考えると金の力でどこまでも追いつめられそうではある。

それを今回、完全に敵に回すわけだ。

しかも堂々と正面から殴りこんで。


失敗したら当然犯罪者扱い。

仮に成功しても明るい未来は約束されない。


こんな分の悪い勝負に乗るなんてどうかしてると自分でも思う。

それでも、目の前で辛い想いをしている家族をなんとしてでも助けたい。

そんな風に思うのは、人として当然だろ?



-----


シャルロットと共に宿に戻ると、アカネの傍に居ると思っていたアビステイン兄妹が食事をとっていた。

なんでも、「王族に感染したとあってはクノッサスの医師として申し訳が立たない」と言われてしまったのだそうだ。

言われてみれば納得だ。

もう仲間としか思っていないから忘れがちだが、この2人は王子と王女なんだよな。

俺たちや当人はよくても、周りからしたらやはりそうなのだ。

もしかしたら俺も、王子や王女に向かって失礼な奴、みたいに思われているかもしれない。

まあ、それはどうでもいいけど。


こちらも進展があったことを報告し、明日の試合終わりで殴りこむことになった。

外交関係に亀裂が入るのも申し訳ないから、と2人には留守番を頼んだところ。


「それは約束できない。仲間の危機に動かない人間ではないのは、既に知っているだろう?」

「大切な仲間を助けてあげたいのは、ユウリさんたちだけじゃないんですよ?」

「揃いも揃って頑固だな。」

「ユウだけはその言葉、言っちゃいけないと思うわ。」


だけどこんな皆だからこそ、俺たちとうまくやれてるんだろうな。

結局誰が折れるわけでもなく、満場一致で全員が殴りこむことになった。


だが、それよりも先に準決勝のノースリンドブルム戦がある。

メンバーは新人戦と4人が同じ。

加わって入ったメンバーもユニークスキルこそ持っていないものの、魔法銃の使い手といった盤石の相手に対してどう闘うか。

話し合いはシャルロットが寝落ちした深夜遅くまで続いた。


3時間も寝てないって言ってたし、仕方ないか。



-----


「ついにやってまいりました、団体戦準決勝!!

第1試合はアビスリンドBチーム対、マジックギルドBチーム!

午後の第2試合はノースリンドブルムAチーム対、アビスリンドAチーム!

やはり残ったのはこの3校!

前評判通りではありますが、ここまでの戦績ではアビスリンドが最優秀でしょうか。

優勝候補のマジックギルドAチームを接戦で破り、駒を進めてきたAチーム。

ここまでの試合で1人の犠牲も出しておらず、大会6年ぶりの完全制覇を狙うBチーム。

そんなアビスリンドに、堅実に勝ち上がってきた強豪2校が待ったをかけるのか!

まもなく第1試合、試合開始です!!」


本来であれば先輩たちの試合を直接観戦したいところではあるのだが、アカネの一件があったので大闘技場の待機室で出番を待つこととなった。

実況のアナウンスはきっちりと聞こえ、試合の状況を追うモニターも魔法でつないでくれているので問題なく戦況を把握できるようになっている。

モニターに、若干疲れの色が見えているサクとアスカ先輩が映った。

昨日一昨日とクノッサスを引っ張りまわしてしまったからな。

申し訳なさとありがたさ半々といったところだ。


相手はマジックギルドの2・3年生が中心のチームなのだそうだ。

しかしどちらの主席もAチームに所属していただけあり、あちらと比べると戦力の差は大きいと思う。

個人戦に出てきていないメンバーで固められているだけあり、俺には誰がどんな魔法を使うのか全く分からない。

そんな相手に挑む先輩たちには、是非とも頑張ってほしいものだ。

まあ、サクの分身による情報収集があって、すでにどんな魔法を使うのかは先輩たちには筒抜けだろうけどな。



-----サクラ視点


相手の1人の能力が分からないまま、結局試合開始となってしまいました。

ここまですべての試合で守備に回っていたのは知っているものの、1度も魔法を使う場面がなかった。

不安要素があるとすれば、その1人だけ。

それ以外の4人はアスカと私であれば問題なく対処できるはず。

ということでいつも通りに分身を展開して、索敵開始。

フィールドは・・・一言で言えばダンジョン、かな?

隠れる場所もないので曲がり角で逐一確認しながら進むことになりそうだ。

分身による奇襲はあまり期待できない。

数で有利になることはできるけど、クリスタル発見までに減らせるかどうか怪しいところですね。


その場で待つことしばらく。

分身が1人消えた気配がした。


その瞬間視界が歪み、身体の自由がきかなくなった。

立っていられなくなり、その場に身体を抑えて膝をつく。


「ゴハッ・・・!」

「サクラ!?」


これは毒ですね・・・!

分身が消えて、その情報がオリジナルへと戻るのを利用した攻撃だ。


「どく・・・きを、つけ・・・」


最後の力を振り絞り、アスカに向けて言葉を放つ。

しっかりと頷いたのを確認できて良かった。

後は任せますね、アスカ。


「サクラ・イガ、戦闘不能!!」



-----アスカ視点


虚ろな目で口の端から血を流しながらも、最後の力を振り絞って情報を残してくれたんだ。

絶対に無駄にはしないぞ、サクラ。

今まで頼りすぎていた部分はあるから、今回はゆっくり休んでおくといい。

白い光となって消えていくサクラを見送り、仲間を見渡す。

目が合うと、全員が頷いた。

どうやら頼りすぎていたと感じていたのは僕だけではなかったみたいだ。


しかし分身ってのは便利なのか不便なのか。

外傷系のダメージは入ってこないのに、情報やバッドステータスは入ってくるんだな。

次にサクラと闘う時の参考にさせてもらうとしよう。


そんなことを考えられる程度には、意外と落ち着いている。

ここまで闘えてきたことで、少なからず自信になった。

そのおかげか、今回の相手がおそらく同格であろうことも事前に分析できている。

相手がナナシーやリシリアといった強者が居たら別だろうが、今の相手であれば善戦はできるだろう。

だがまあ、この相手にサクラが真っ先にやられるとは思いもしなかったけどな。

何があるか分からない。

だからこそ面白い。

これでこそやりがいがあるというものだ。



-----通常視点


サクがやられて思わず立ち上がってしまった。

その反応にシャルロットに驚かれて我にかえる。

大闘技場へと姿を現したサクにはダメージはなさそうだ。

胸をなでおろす自分に、少しだけ驚いたけど。

なんだかんだで、サクももう家族みたいに思っているんだな。


相手の分身の特性を利用した攻撃。

闇属性の派生の毒魔法ですね、とイオが呟く。

そんな相手にどうやって戦闘をしかければいいのやら。

アスカ先輩たちのお手並み拝見だ。



先輩たちは互いに目配せをして頷く。

その後一言二言交わして配置を変えた。

どうやらクリスタル前で迎え撃つつもりのようだ。

サクという優秀な偵察を失った分、闇雲に攻撃に人数をさくよりも迎え撃って相手の数を減らそうということだろう。


しかしダグラス先輩だけは他の3人よりも少し前に出た。

確かにあの大きな斧の攻撃力は高いし土魔法を得意としているのは分かるが、相手はマジックギルドだ。

ダグラス先輩の土魔法では通用するとは思えない。

と思っていたのだが。

クリスタルから伸びる2本の通路のうち1本を、壁とまったく見分けがつかない壁でふさいでしまった。

残る1本から全員が脱出し、クリスタルへの残りの入り口もふさぐ。

迷宮であることを利用して、行き止まりと錯覚させる作戦か。

少しは時間を稼げるだろうが、探知系の相手が居たら意味が・・・いや、サクか。


調べた内容までは分からないが、毒をくらったということはおそらくその相手は未知だった。

知っていたら索敵中に戦闘に入らないだろうからな。

そして残りの4人の相手に探知系の魔法使いは居ないと、あらかじめ伝えてあるのだろう。

だからこその作戦か。

クリスタル前を無人にするとは、思い切った作戦をする。



チャン先輩が先導し、4人がまとまって行動。

アカネとの実力差を見せつけられ降参だったり、代表決定戦では俺に敗れたりと不運なところがある。

シャルロットのように盾魔法を使えるわけでもなく。

アカネのように守備力がとても高いというわけでもない。

もちろん、ユニークスキルは持っていない。

だが、サクやアスカ先輩が毎試合攻撃に回れるのはこの人のおかげでもある。


この人はただただ、勘が鋭い。

それも常人の比ではないほどに。

第六感と言うべきだろうか、それがものすごい確率で当たるのだ。

もはやそれはユニークスキルなのではないかと聞いたことがあるのだが、普通に他の魔法も使えるとのこと。

その第六感があるからこそ、アカネと闘う前にギブアップを。

そして俺と闘った時には初撃を躱された。

身体能力がもっと伸びれば、今よりもますます恐い存在になるだろう。


話が脱線した。

チャン先輩の誘導で、相手に出くわさない道を次々と選びながら相手のクリスタルへと到着。

当然のように躱せるって凄いな。

相手の守備は2人。

4対2という構図ではあるが、アスカ先輩以外は正直1対1で闘って確実に勝てるというわけではないだろう。


そんな考えもむなしく、突っ込んでいくチンピラ・・・もといブラッシュ先輩。

あの人はあれだね、他人にはないクソ度胸があるね。

イオを王女と知りながら、開幕早々大上段で斬りかかるとか普通は躊躇するよ。普通は。


案の定ブラッシュ先輩に向けて放たれる魔法。

当たる寸前でダグラス先輩が土魔法で壁を作り、魔法を受け止めた。

壁がはじけ飛ぶほどの威力の魔法で、自分に向かってきている石の破片。

それをただの風とでも思っているかのような猪突猛進。


「うっわ、痛い痛い痛い!」

「はは、凄いな。」


シャルロットとショウヤですらこの反応だ。

自分に傷がつこうがお構いなしに突っ込み、魔法を放った直後の相手に斬りかかった。

そこにもう1人の魔法が放たれ、ブラッシュ先輩に直撃した。


「ライドン・パンサー、ブラッシュ・アーデリオン、戦闘不能!」


両者撃破のアナウンスが流れる。

その瞬間、ダンジョンが大きく揺れた。

他の画面を見ると、相手の攻撃メンバーがダグラス先輩の作った壁を破壊してクリスタルへと迫っていた。


「あっ、ダメっ!!」


ここでダメと言ってもどうにもなりませんよシャルロットさん。

だがまあ、問題ないだろう。


全員が揺れに気を取られた中で1人だけ。


クールに燃えているレイピア使いは、ブラッシュ先輩に向けて魔法が放たれた瞬間から狙いを定めているのだから。


「『侵略すること炎の如く』」


突き出したレイピアから文字通りに炎の柱が現れ、クリスタルへと向かう。

隣の画面では大きな氷柱がアビスリンドのクリスタルへと向かっていた。


ドガァン─


再び大きな揺れに包まれるダンジョン。


両軍のクリスタルが、同時に破壊された。



-----


「こっ、これは勝者はどちらだー!?

両軍のクリスタルが同時に破壊されたように見えました!!

引き分けの場合、明日に再試合となりますが・・・。

ルーナ隊長の目にはどう映りましたか?」


「贔屓目とか言われたくないからあまり言いたくはないのだけど、0.1秒弱くらいアビスリンドの破壊が早かったように見えたわ。

まあ私たちがどうこう言うよりも、魔法解析チームの結果を待つ方がいいわね。」


「それを判断できるルーナ隊長の目も相当規格外ですけどね。

とにかく今は結果を待つとしましょう!

ちなみに両軍同時のクリスタル破壊はなさそう・・・あっ、引きわけはありました!

14年前の準決勝ですね。

アーデルハイド様率いるウエストテイン対、チェイ・ホワン様率いるノースリンドブルム!!

ありましたねえ、ノースリンドブルムの電撃作戦。

5人全員が撃破された瞬間と、ウエストテインのクリスタル破壊がまったくの同時で引き分け再試合となった試合ですね。」


「あの時の総隊長の意味が分からないと言いたげな顔は今でも覚えてるわ。

あ、結果が出たようね。」


「はい、こちらにも届きました!

魔法解析の結果、アビスリンドの攻撃が0.04秒早くクリスタルを破壊!!

よって勝者、アビスリンドBチームです!!」



-----アスカ視点


強い力に引っ張られる感覚の後、耳をつんざくほどの大歓声。

直後に胸に飛び込んでくるサクラに驚いた。


「ありがとうございます、アスカ、みんな。信じてましたよ!」


目に涙を浮かべながら満面の笑みで微笑まれた。

全員でサクラの頭をくしゃくしゃに撫でてやった。


「うわわわ、やめてくださいー!」


ギリギリとはいえ、勝ったんだ。

これで決勝進出。


父さんが作ったレールの上を歩くわけではなく。

僕なりのやり方で、ここまで来たんだ。


父さん。

僕にも、こんなにも最高の仲間ができたよ。



だけどまだ、その大切な仲間の1人が苦しんでいる。

レールの上を歩くだけの僕に、仲間という光をくれた大恩人だ。


今度は僕が助ける番。


それが、仲間ってものだろう?



だよな、アカネくん。


無事でいてくれよ。


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ