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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第9章 団体戦編

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八十八ノ舞「ユウリが絡むとね」


-----通常視点


日課の深夜鍛錬を終えて宿に戻る道中。

ゆっくり歩いていると、少し前を走り抜ける見慣れた赤い髪。

走って追いつくのは可能だが、声をかけて叫ばれて(ひょあああ)も困るしな。

街中で雷になるのも気が引ける。

ということで見なかったことにしておこう。

こんな時間まで何をしていたかなんて聞くのも野暮だしな。

俺ももう少し鍛錬してから戻るとしよう。

日付変わって今日は全休だし、寝てても問題ないだろう。



結局昼まで寝てしまった。

起こされても起きる気はなかったが、同室のアビステイン兄妹の心遣いが嬉しいね。

部屋を見渡すとイオは窓際で読書を、ショウヤはベッドで双剣の手入れをしていた。


「ようやく起きたか。昨晩も遅くまでやっていたのかい?」

「おはようございます、ユウリさん。」

「おはよう。帰ってきたの5時過ぎてた気がするな。」


そんな心配そうな顔をしないでほしいものだ。

2人してそんな顔で見られたら、悪いことでもしてしまった気分になる。

良いことはしているつもりはないけど。


「体調や身体を壊さないように、ほどほどにな。」


手入れの終わったショウヤが双剣をしまいつつねぎらってくれた。

ちょうど2人が居るし、気が早いがマジックギルド戦の作戦会議でもしておこうかな。

すぐにその会話を切り出すと2人とも乗っかってきた。


イオはクリスタル前に陣取り、その前にアカネとシャルロットの布陣。

3人の鉄壁で迎え撃つ。

そして攻撃は俺とショウヤが務めるわけだが、そこで昨日思いついたこと。

真っ先に仕留めるのはリシリア先輩。

それも早ければ早いほど良い。

アリスを攻撃に回させなくしたいからな。


トニーとナナシー先輩は守備なんてできるガラじゃない。

そして補助能力は高いが、守備能力は決して高くないケイオス。

つまり100%アリスが守備に就くのだ。

そうなれば守備の3人の負担もかなり減る。

ナナシー先輩とトニーを相手にしなければならないという事実は変えようがないのだけど。

そこにアリスが加わらないのが分かっているだけで、天と地の差があるのは間違いない。

イオですらそれには大きく頷いていた。

互いに認め合うライバルとして、相手の厄介さをきちんと理解しているようだった。


結局シャルロットが夕飯でも一緒にどうか、と呼びに来るまで作戦会議は続いた。



-----


「さあ、今年の団体戦も早くも2回戦第2試合!

第2試合はアビスリンド対ウエストポート!

どちらも全員が2年生で構成されているチームなだけあり、来年に向けて勝利を手にしておきたいところ!

優勝本命のノースリンドブルムを破り、勢いにのるアビスリンドがそのまま制するのか!

はたまた昨年新人戦ベスト4チームが、その勢いを止めるのか!

注目の1戦、間もなく試合開始です!!」


翌日、クノッサス大闘技場。

最前列を確保して先輩たちの応援だ。

相変わらず試合前までにたくさんの方に声をかけられ、端っこに座るアカネはもみくしゃにされていた。

前回の失敗を経験しているのだから、端に座るとそうなると学習してもいいと思うんだけどな。



クリスタル前に全員が集まり、試合開始の合図が出される。

フィールドは洞窟。

前回に引き続き、先輩たちはフィールドの引きが良い。

こういった見通しの悪いフィールドはサクの能力を活かしやすいため、有利に闘いを進められそうだ。


開始早々サクは分身を生成し、索敵を開始。

情報というのはこの団体戦において、大きな武器だ。

たとえ分身がやられたとしても、情報はすぐにオリジナルに入ってくる。

サク本体が味方クリスタルから動かない以上、相手の動きは先輩たち全員に筒抜けということだ。

もちろん、見通しが悪いフィールドは隠密行動に非常に向いている。

そのまま分身が奇襲をかけ、敵を撃破することも充分に有り得る。

こちらはサクの魔力だけしか使用していないのに対し、相手は攻撃メンバーが減っていく。


「ブギー・ポリッツ、戦闘不能!」


メンバーが減ることを恐れて守備に人員を割いてしまうと、索敵しつつクリスタルの捜索をしている分身がクリスタルを発見してしまう。

そこにサク本体とアスカ先輩という強力なコンビネーションを持った2人が突撃してくるわけだ。

当然数の差で不利になることはない。

サクの魔力が尽きない限りは何人にでも分身できるのだから。


つまりアビスリンドの残りの3人は何が何でも自陣のクリスタルを死守することだけを考えていればいい。

5対5の団体戦ではあるが、サクは索敵・捜索・防御・攻撃と全ての役割を魔力だけで担うことが出来る。

仲間からしたらこれほど頼もしい人材はおらず、相手からしたらこの上なく厄介な相手は居ないだろう。



クリスタル前に守備4人で迎え撃つウエストポートに対し、6人に分身したサクとアスカ先輩が到着。

捜索終了後に守備に回した分身も含めて、洞窟内にサクが11人居るのだ。

15対4。

圧倒的な数的不利ではあるが、相手も昨年新人戦ベスト4の意地があった。

乱戦の中で素晴らしいコンビネーションを見せ、サクの分身を4人撃破し善戦。

しかし分身の動きに翻弄された隙を見逃さず、アスカ先輩のレイピアが敵クリスタルを破壊。

アビスリンドの勝利となった。


「アビスリンド学園Bチーム、これで無傷の2連勝!

ベスト8に駒を進めました!

3回戦では本日先に行われた第1試合の勝者、ウエストテインAチームと対戦です!

強豪同士の対決、今から楽しみですね。」



-----


宿に戻り、先輩たちを労いつつ夕飯を食べている。

シャルロットの姿はなく、今日もどこかで鍛錬しているのだろう。

相変わらず努力の塊だな。

俺も見習わないとだ。


「こほっ・・・」

「うがいしてこい、アカネ。」

「うん、そうするよ。ありがとう、ユウくん。」


あのアカネが咳なんて珍しい。

俺ですら、風邪ひいてるところなんて1回も見たことがない程の健康お化けなのに。

馬鹿はなんとやらだな。

席を立つアカネを見送っていると視線が向けられていることに気付いた。

そちらに顔を向けると、サクと目が合った。

夏休みはほとんど一緒だったけど団体戦では別のチームだからか、最近あんまり話せてないからな。

従者として寂しいのかもしれない。


「サク、今日も大活躍だったな。」

「団体戦で活躍できなかったらシノビ失格ですよー。」


立ち上がりサクの後ろから声をかけると、ぱあっと明るい顔になりつつも厳しい意見を言うサク。

確かにこういった複数対複数の闘いの中で暗躍するイメージはある。


「それでもサクが活躍すると、俺も嬉しいんだよ。次も頑張ってな。」


言いながら軽く頭を撫でると、「えへへー」と嬉しそうな緩んだ顔と声をするサク。

その反応にざわついたのは先輩たちだ。


「サクラって意外とそういう反応するんだな。」

「ぅうえぇ!?今のナシ!!忘れてください!!」


ボンッと音を立てて丸太に変わるサク。

逃げるために変わり身使うなよ。


「ふふっ、サクラ先輩も乙女ですね。」

「普段はクールなんだが、ユウリが絡むとね。」


アビステイン兄妹の会話に頬をかきつつ、席へと戻った。



-----シャルロット視点


クノッサス王国騎士団、駐屯所内の稽古場。

そのど真ん中で大の字で息を切らせて倒れている。

3番隊隊長のアンドレ・サベージロードさんと手合わせをさせていただいたのだけど、ボコボコのボコにされたところだ。


「学生にしては素晴らしい剣であるが、まだその域止まりなのである。

今のままでは学生には通用してもそこから鍛錬を積んだ者、そもそも学生の域を超えている者には通用しないであるな。」

「はい!ありがとうございました!!」

「うむ、精進するのである。」


アンドレさんの声に即座に反応し、起き上がり正座。

言葉が終わるなり頭を床につけてお辞儀。

目上の方に対しての礼を大事にしていたところを気に入られ、今回の稽古に繋がった。


アタシはまだまだ弱い。

アカネやユウには通用しないと言われて悔しい想いはもちろんある。

それでもこのスタンスは変えない。

これで今回のように本当の強者との手合わせができるチャンスが増えるのなら、自分のプライドなんて要らない。


「今回の相手はアンドレだったのか。毎回違う相手とよく闘うものだ。」


端のベンチに腰掛けて目を瞑り、脳内反省会をしているとアーデルハイド様が隣に座って声をかけてきた。

この人の気配のなさにも慣れてきた自分が恐い。


「はい、ここに来ると色々な方に稽古をつけて頂けるのでありがたいです。

ルーナ師・・・隊長には断られちゃいましたけど。」


「ふははっ!あのバカも学生時代によくここに来ては俺や先代の2番隊隊長、アンドレたちに毎度のようにボコボコにされていたからな。

自分の昔を見ているようで恥ずかしいのだろう。」


それは知らなかった。

確かにミドリ師匠が身近に居て、強くなりたいと思わないわけがない。

ルーナ師匠の隠れて努力する性格は、学生時代からずっと変わっていないのね。

今のアタシのように。


「それでもあのバカは1戦ごとに守備は硬くなっていった。

1つ覚えとはよく言ったものでな。

3年の個人戦の前には全ての隊長から10分以上、誰からも攻撃を受けなかったぞ。」


「そんな昔の話をしないでくださいよ、総隊長!」


見回りで外に出ていたルーナ師匠がちょうど戻ってきた。

恥ずかしそうにしながら歩いてくる師匠だけど、改めてやっぱり凄い人なんだ。


さっきのアンドレ隊長との立ち合い稽古。

開始10秒は盾魔法でアンドレ隊長の攻撃を受けきっていた。

それ以降攻め方を変えてきたアンドレ隊長。

まるでこちらの攻撃を誘うかのような立ち回りと攻撃。

そして、こちらの攻撃に合わせたカウンターを何度も受けてボコボコにされてしまったのだ。


10秒。

この数字が、今のアタシの実力だ。


「たのもー!!

アイギスに呼ばれて来たんだが、うちのバカ弟子が悩んでんだって?」


自分の実力を突きつけられ、落ち込みかけた瞬間。

まるで道場破りのような言葉で、入口に仁王立ちしている少女。

小さい身体に見合っていない長めの刀。

長い金髪に和服の少女は、いつものニヤリとした表情だ。


『神速の剣姫』の突然の登場にざわつく駐屯所内。

落ち込みそうな気持ちなんて一瞬でどこかにいってしまった。

師匠はアタシを見つけるや、1歩で隣に来るとアーデルハイド様に向けて剣を抜き放った。


「おぉいおっさん。アタシの弟子いじめてねえだろうな。」

「ふははっ!相変わらず口の悪いガキだな。

壁にぶつかってるみたいだから少し見てやれ。

その代わり、こっちにも苦労の代償を払ってもらうがな。」

「相変わらず良く分かんねえものの言い方しやがって。」


言いながらアタシを見て剣を持った手の親指を立て、「こっち来な」と合図をする師匠。

久しぶりに稽古をつけてくれるらしい。


「お前ら、あの悪ガキをちゃんと見ておけよ。

世界で5本指には入るであろう剣士の剣だ。

まあ、見えるかどうかは別だがな。」


アーデルハイド様のそんな言葉に、駐屯所内の全ての視線を浴びながらの稽古。

こんな晒し者みたいになるとは思っていなかった。

それでも久しぶりの稽古、そして『神速の剣姫』を前に緊張なんてしていられない。

この1本、アタシの全力でやらせてもらおう。



-----ミドリ視点


本人は気づいていないだろうが、自ら極限の集中状態に入れる奴なんてそう居ない。

しかし目の前の愛弟子は、いとも簡単にそれに入る。

アタシも『神速の剣姫』を使わないと、この状態のシャルロットには攻撃を通せないくらいだ。

この状態のシャルロットなら、ここに居る中ではアーデルハイドとアイギス以外には負けないと思うんだがな。

誰と闘う時も今のアタシに向かっている気持ちで闘えるようにならなくてはダメだ。

そのあたりをそろそろ教えてやらないとな。


装備付与(ハイエンチャント)─『神速の剣姫』」



-----


『神速の剣姫』の連撃を完璧に捌くシャルロットの姿に、駐屯所内はざわついていた。

先ほどまで学生の域を出なかった少女が、自分にも見えていない連撃を完璧に捌いているのだ。

当然剣だけではなく盾魔法も駆使してのことだが、驚きを隠せないほどには別人に感じる。

『神速の剣姫』の攻撃は自分たちが知る剣戟のどれよりも速く、鋭い。

しかしそれを防ぎ、さらには2番隊隊長の得意とする盾魔法も連発する姿に全員の視線は釘付けになっていた。


そんな攻防が10分続き、ようやく最初の1撃がシャルロットに入った。

しかし倒れるほど深く入ってもいない。

ふう、と一息をついて汗をぬぐうミドリに対し、肩で息をしながら剣を構え直すシャルロット。

盾魔法を連発しているだけあり、疲労感はシャルロットの方が上だった。

心配するギャラリーをよそに、シャルロットが詠唱を開始した。


「我が身は大楯(おおたて)、心は鎧。

守護(まも)り身として、命捧ぐ覚悟あらんや。

ある、有る、()れ。」


「・・・・・・それはまだとっておけ。」


詠唱中に剣の柄を鳩尾に叩き込み、崩れ落ちるシャルロットを抱える『神速の剣姫』。

穏やかな目をしつつ、ルーナにニヤリとした顔を向けた。


「サンキューな、アイギス。お前のおかげで弟子の成長をまた喜べそうだ。」

「わたしにとっても1番弟子なんだからその喜び、わたしにも分けてよね。」


2人の微笑みを見てふっと笑うアーデルハイド。

自分の世代が育ててきた世代が、また次代を担う若者を育てている。

こんなにも素晴らしく、嬉しいことはない。


「それじゃあ、せっかくの機会だ。『神速の剣姫』と手合わせしたい奴は順番に並べ!」

「はあっ!?そんなの相手するわけねえだろおっさん!!」

「おっと、うちの稽古を止めた代償はきっちり払ってもらわないと困るぞ。」

「あはは、ミドリ諦めなさい。こればっかりは総隊長に賛成よ。」

「あっ、てめこのアイギス!!裏切ったなー!!」



結局このあと『神速の剣姫』による蹂躙(けいこ)が始まった。

王国騎士団の半数以上が駐屯所内に倒れ、目を覚ましたシャルロットが「地獄絵図」と称したのだった。



拙い作品ですが最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!

今後ともよろしくお願い致します!

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