八十五ノ舞「同じことができるか?」
「大変長長らくお待たせいたしました!
間も間もなく本年度団体戦が開始されます。
実況はわたわたくし、クノッサス王国騎士団4番隊副隊長の、グレシアス・ローレン。
人人生初の実況を勤めさせていただきます!
解解説はクノッサス大神殿守護騎士団3番隊副隊長、シャルティア・ロックバードさん。
審審判はクノッサス大聖堂第三守護部隊副隊長、ジーニアス・セレステアさんです!」
「相変わらず聞き取りづらい喋り方ね、アンタ。
今からでも代わったほうがいいわよ。」
「そんなことしたらわたくしのキャラが消えてしまうじゃないですか!」
「いきなり普通に喋ってんなあ?!
作り切れないなら無理してキャラ作るんじゃないわよ!」
第1試合の開始前、大盛り上がりの大闘技場。
だいぶ後ろの方になってはしまったが、なんとか席を確保して全員で観戦できる。
魔法で作られた空間に移動し、その空間内の映像が闘技場内の大画面に映されるらしい。
この闘技場でどう闘うのかと思っていたが、空間魔法なんてあるんだな。
第2試合の先輩たちの出番が来るまでは空間魔法や会場の分析といこう。
-----
第1試合はイーストテイン学園対ノースポート学園。
この勝者がウエストテインAチームと対戦か。
見たところフィールドは荒野。
荒れた地面に、ところどころにそびえ立つ岩、そして枯れた木々。
見通しは大して悪くないが、クリスタルの距離はおよそ1キロってところかな。
自陣のクリスタル前に全員集まったのを合図に試合開始。
イーストテイン学園が攻撃3、守備2だ。
うちのチームと同じなだけに、どのような動きを見せるか見ておこう。
荒野フィールドの岩をうまく利用し、隠れながら進軍していくイーストテイン代表。
なるほど、やっぱりフィールドの特性は活かすべきか。
むやみやたらに突っ込んでも相手に出くわす可能性もあるだけに、単独での突撃はわりと悪手なのかもしれない。
開幕速攻相手のクリスタルに突撃とか考えてはいたんだが、俺のスピードじゃあほぼ1対5になってしまう。
防御専門の選手が居たら戦死は免れないだろうな。
色々考えている間にノースポート代表が1人やられ、大闘技場へと姿を現した。
戦闘不能になると強制退場させられるのか。
そして空間内に撃破アナウンスが流れる、と。
これで内部でも戦況を把握できるってことか。
まあそのアナウンスが連続で流れた場合の怖さは尋常じゃないだろうけど。
その後は徐々に戦場を押し上げ、じわりじわりと距離を詰めながら歩みを進めるイーストテイン代表が優勢だった。
最終的に2対1となり、最後の1人を撃破し決着となった。
クリスタル破壊以外にも決着の方法があるのは助かる。
1人でも残っていれば相手を全員撃破すれば勝ちだなんて分かりやすくていい。
逆に5人残っていてもクリスタルが破壊されてしまえば負けなんだけどな。
マジックギルドのメンバーはおそらく後者狙いでくるだろうし、どうしたものかね。
-----
昼休憩が終わり、午後一番。
ついに先輩たちの出番だ。
相手はノースリンドブルムB代表。
個人戦ベスト8のヘノッヘをはじめ、2・3年が中心のチーム編成だ。
本来であればここにルカリ・ネス・チップが居たのだろうが、それは言っても仕方ないことか。
「ノースリンドブルム3年の戦闘指揮実技の授業を見学させてもらったんだが、相当鍛えられていたよ。
おそらくこの試合、先輩たちにとってかなりハードなものになるだろうね。」
ショウヤが心配そうな顔で説明してくれた。
確かに『先手のアレク』自ら教え、その授業を2年以上も受けているのだ。
そして軍事訓練にて鍛えられた体力、精神力は他の学園の3年と比べても間違いなく高い。
それが束になってかかってくるのだから、毎年強いのもうなずけるというものだ。
-----アスカ視点
フィールドは森。
緑に囲まれ、見通しは最悪。
四方を木に囲まれていてクリスタルを中心に直径約3メートルの円状の空間。
奇襲にはもってこいのフィールドだな。
好都合すぎる。
「第2試合、アビスリンド学園Bチーム対ノースリンドブルム学園Bチーム。
試合開始!!」
「サクラ。」
「分身の術!索敵はおまかせあれ!」
開始のアナウンスが流れて早々、6人に分身するサクラ。
言わなくても自身がやるべきことを理解している。
オリジナルを残し、分身が色々な方向に駆けてゆく。
索敵だけでなく、クリスタルの位置まで特定する気満々といった表情だ。
確かにこのメンバーでノースリンドブルムに勝つには、サクラの能力は必須だ。
オリジナルが出ていくのはクリスタルの位置を特定した後でいい。
そして隠れやすいフィールドにシノビというのは、これ以上ない程頼もしい存在だ。
「ノースリンドブルム学園リース・チャクラム、戦闘不能!」
分身が早速1人目の撃破。
見敵必殺、見事だな。
「むむ、分身2人やられましたね。
でもクリスタルの位置特定したよ、アスカ!」
「行くぞサクラ、先導頼む。
残っている分身は全て守備へ回してくれ。」
「はいな!」
駆けだしたサクラを追いかける。
初の対外試合だというのに、頼もしい仲間のおかげでまったく緊張しないな。
サクラが一部の学園の生徒に笑われていたことを知っている。
本人は気にしていなそうだったが、僕から言わせればどこに笑う要素があるというのか。
こんなにも頼りになり、共にしのぎを削って成長してきた友だ。
この団体戦、笑った奴らを見返すにはおあつらえ向きだぞ。
相手のクリスタルを視界にとらえ、サクラが投げナイフをクリスタルに向けて投げる。
着弾と共に爆発する札がついた投げナイフ。
クリスタルに着弾直前、急に左に曲がり近くの木を爆破した。
あれがヘノッヘの『導線誘導』か。
指1本で標的の導線を動かすとは聞いていたが、なかなかに厄介だ。
しかし相手の防御も2人。
これならやれる。
ヘノッヘに向けてレイピアで突きを仕掛けるも、『導線誘導』で地面を突かされる。
その隙をついてもう1人が僕に向けて踏み込んできた。
サクラが自慢の速度で間に割って入り、剣を受け止める。
ユニークスキル持ちが居る分戦力差を心配していたが、取り越し苦労だったな。
「こんなに遅い剣で試してすまなかった。
今度は最速で行くぞ。」
ヘノッヘに対してレイピアを構える。
対するヘノッヘは右手で剣を持ち、左手は空けている。
『導線誘導』で僕の剣筋をずらし、カウンターを入れるつもりだろう。
だが僕もこの1か月、遊んで暮らしていたわけではない。
「疾きこと雷の如く。」
ヘノッヘに対して1歩踏み出す。
レイピアは完璧にヘノッヘの右肩を捉え、戦闘不能のアナウンスと共に姿を消した。
「『桜隠れ』」
サクラの声に振り向く。
大量の桜が舞い、辺りをピンク色に染めていた。
それに目を奪われた瞬間、当然の如くサクラを見失う。
通常のこの葉隠れよりも舞う量が多く、見えていた視界の色との急な色の変化につい目を細めてしまう。
人間の習性を利用した新たな視線誘導だな。
「『風斬』」
声と共に、投げナイフを振り抜いた状態のサクラが姿を現した。
バキンと大きな音をたてて崩れるクリスタル。
「クリスタル破壊により、勝者アビスリンド学園Bチーム!!」
アナウンス直後、強い重力に引き寄せられる感覚。
気付くと大闘技場の壇上に居た。
大歓声に驚きつつも、満面の笑みのサクラとハイタッチを交わす。
サクラを笑った奴ら、見てるか。
後ろ指をさした奴ら、同じことができるか?
君たちがそんな扱いをした生徒が、優勝候補の一角を崩したぞ。
-----ユウリ視点
「アカネ。アスカ先輩のアレ、完璧とは言えないけど縮地法だよな。」
「そうだよ!ずーっと練習して遂に完成したんだよー!」
えへへーと自分のことのように喜ぶアカネ。
この喜びようからして特訓に付き合っていたのだろう。
人のことは言えないが、間合いの外からの一突きは見切るのは至難の業だ。
そしてサクの新技、『桜隠れ』。
これの相手を毎日していたが、ほぼ100%サクを見失う。
開発から付き合っている俺でも見切れないのに、初見で対応できる相手は居ないだろう。
つまりサクがクリスタルに到着した時点で、クリスタル本体を守らないといけないのだ。
索敵や捜索はサクの得意分野だし、最優先でサクを撃破しないといけないのか。
見通しの悪いフィールドで当たったら間違いなく勝てないだろうな。
そんな2人が連携した結果、大金星。
この攻撃力、一気に優勝候補に躍り出たと言っても過言ではない。
「アスカ先輩の笑顔も見れたし、良かった良かった!」
アスカ先輩の表情の変化は、相変わらずアカネにしか分からないけどな。
アビステイン兄妹も「笑顔?」みたいな表情で顔を見合わせていた。
拙い作品ですが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願い致します!




