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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第7章 個人戦後編

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七十三ノ舞「それを信じている限り」


-----アリス視点


「試合時間47分24秒の長期戦、ついに決着ー!!!

アカネ・オオヒラ選手、兄妹弟子対決を制しアリス選手が待つ決勝へと駒を進めました!

前回準優勝者、前回優勝者を倒す快進撃を続けていたユウリ選手、準決勝で無念の敗退!

この両者に届いているかは分かりませんが、大闘技場からは盛大な拍手が起こっております!」



決勝の相手が決まった。

そんなことを考えるよりも先に、分身を出して走り出していた。

2人とも無茶をしすぎなのよ。

アカネちゃんは意識はあるから、ユウリくんが先ね。

この出血量は急いで処置しないとまずい。


完全回復(リザレクション)


倒れているユウリくんを白い光が包み込む。

意識を失ったままだけど、顔色が少しだけ良くなった気がする。

後は安静にしていれば問題ないわね。

担架で運ばれていく姿を見届けると少し寂しい気持ちになった。



続けてアカネちゃんもだ。

医者を目指しているわけではないけれど、あの技が身体に負担をかけているのは分かる。

そんな状態で明日まともに闘えるはずがないじゃない。


そう思い回復をかけようとした瞬間、アカネちゃんに手で制された。


「明日闘いづらくなっちゃうし、どんな傷も覚悟の上だから。」


震えた足で立ち上がるアカネちゃん。

言葉を残して、こちらに一度も振り向かずにゆっくりとふらつきながら闘技場を後にしていった。

わたしでもそうするかもしれないけどさ。


ふと視線を感じて振り向くと、シャルロットちゃんが視界に入った。

わたしが頷くと意図を察してくれたのか、猛ダッシュで走りだした。

アカネちゃんのことは任せたわね。



さて、決勝の相手はてっきりユウリくんだと思っていた。

学園交流の時に負けて、それ以降リベンジに燃えていたのに。

アカネちゃんも確かに強い。

だとしても勝ち上がってくると思っていたのだけれど。


でも、ここでは結果が全て。

どれだけ善戦しても、どれだけ追いつめていても、負けは負けでしかない。

まずはそれを受け入れないとね。

ユウリくんも、そしてわたしも。


そしてきっと、ユウリくんはそれをバネにもっと強くなるから。

わたしもそれについていけるように頑張らないとね。


相手は手負いで、わたしは万全であろう明日の決勝戦。

手を抜くつもりは一切ない。


頂点で、待ってるからね。



-----通常視点


気が付くと最近見慣れた白い天井が視界に入った。

医務室のベッドの上だ。

この大会では試合のあと医務室で起きることが多かっただけに、またかくらいにしか思わないが。

カーテン越しにも外が暗いのが分かった。

どうやら今回は夜まで寝てしまったらしい。

身体がまったく痛まないのはアリスのおかげだろうけど。


しかしアリスか。

俺は、アカネに負けたんだよな。

あんな約束をしておいて、決勝の舞台にすらあがれないなんて情けない。

次に会う時どんな顔をして会えばいいんだろうな。


気分が重たくなりながら身体を起こすと、向かいのベッドでイオが身体を起こして本を読んでいた。


「おはようございます・・・といっても、夜中ですけど。」


イオもアリスに完全回復を受けたのだろうか、まったく外傷はなさそうだ。

パタンと本を閉じるイオに挨拶を返すと、互いに無言になってしまった。

普段寮で一緒に生活している時は普通に話せるのにな。

2人とも負けたあとだし、なんて声をかけていいか分からないってところだろう。

少なくとも俺はそうだ。


そう思っていると、イオが俯きながら喋り始めた。


「やっぱり、悔しいですね。

以前勝ったからとか、そういった油断は一切なかったのですけど。

魔法で完敗することなんて、なかったので・・・。」


声を震わすほどの悔しさなのだろう。

目の周りが腫れているあたり、俺が目を覚ますまでに泣いていたのかもしれない。

そんな相手に優しい言葉をかけてあげられるほどのイケメン力がないのが悔しいところだ。


「俺は相手がアカネってこともあって、心のどこかでまだ負けないと思っていたかもな。

対してアカネは俺に勝つことだけ考えてた。

この結果はその差かもしれないな。」


こんなに早く受け入れられるとは自分でも驚きだけどな。

ジジイに散々やられていたから、負けることに慣れているというのはある。

最近は幸運にも負けることがなかったから、久しくこんな気持ちを忘れていた。


「・・・悔しいな。本当に。」

「・・・はい。」


アリスもアカネも、シャルロットも居ない。

サクは近くに居そうだが、まあどのみち感知はできないので居ないのと同じだ。


夜の静けさに包まれた病院の一室で。

声に出した悔しいという気持ちを糧に、まだまだ強くなれると信じながら。


「ユウリさんと決勝で闘いたかったです。」

「イオと闘うのは2度とごめんだ。」


そんな冗談を言い合いながら、イオと俺の個人戦は幕を閉じた。



-----


「さあ、いよいよ今年の個人戦も残すは決勝のみ!!

今大会は大波乱の連続でした。

前回大会で結果を残した選手たちが次々と1年生に破られ、ついにはベスト4全員が1年生という結果に!

そんな中決勝の舞台への切符を手にしたのは、神話級魔法対決を制したアリス・ポーラン選手!

対するは優勝大本命と言われていたユウリ・アマハラ選手を撃破した、アカネ・オオヒラ選手!

どちらが勝つにしても1年生が大会を制するのは『神速の剣姫』以来で、史上3度目ですね。

超満員の大闘技場、間もなく試合開始です!」


イオとトニー、シャルロットと共に観戦に来たのだが、座る席がない。

仕方なく立ち見をすることになったのだが、イオが人込みに埋もれてしまい結局トニーの肩の上にチョコンと座っている。

なんというか、小動物感が凄い。

ちなみにシャルロットと俺は背伸びをしてなんとか頭1つ出すことに成功している。

これも訓練の一環ということで。

頼むから長期戦だけは勘弁してくれな。



新人戦決勝と同じ実況と解説。

ということは審判はアーデルハイドさんだろう。


大神殿、大聖堂、王国騎士団それぞれの第1部隊長が出てくるだけあり、選手側からすれば特別な試合という印象がある。

しかし決勝に残る実力者を見極め、直々にスカウトをするかどうかを判断できるというのは運営側、もとい部隊長たちにも利点はあるのかもしれない。

もちろん護衛の意味も兼ねているだろうけど。


審判のアーデルハイドさんが登場した瞬間、大歓声に大闘技場が揺れる。

新人戦の時と同じだが、前回と違うのは自分が場外に居るということ。

こればっかりは悔しさを感じてしまうな。

思わず苦笑いが出てしまった。


「王国騎士団総隊長の名において、公平なジャッジを約束しよう!

それではこれより、個人戦決勝戦を始める!

両選手は前へ!」


アーデルハイドさんの声に、2人が壇上へとあがった。

アリスは緊張した面持ちながらも堂々とした足取りで。

アカネは明らかに疲弊した表情に加え、全身筋肉痛であろう変な動きで。

試合になるのか、これ。


「それでは、試合開始!!」



「分身の術!」

装備付与(ハイエンチャント)世界随一の銘刀(おおかねひら)!」


アリスの6人分身も手慣れたもので、分身それぞれが出てきた瞬間に散開した。

色んな角度から魔法を使うことで中級魔法を上級ないし最上級と同程度の威力まであげられる。

分身を身に着けたことでアリスの魔法の幅は、とてつもなく広がったと言っていいだろう。


対するアカネは『世界随一の銘刀』のみ。

身体への付与はしないのか、できないのか。

どちらにしてもあの様子じゃ『緋走緋々葬』は使えないだろう。


そんな身体の状態にも関わらず、アリスの回復は断ったらしい。

不器用なのか、頑固者というべきか。


昨日闘ってみて、普段との違いに気付いたことがある。

アカネは最初から、俺と闘う準決勝だけに照準を合わせていた。

絶対にその前で負けることも、その後のことも考えてない。

準決勝に身体の状態のベストがくるように調整したのだろう。

いつもよりも剣が重いのに速く、動きも軽かったのだ。


言い訳にするつもりはないが、Cブロックは1戦1戦が激闘だった。

そんな調整など考える余裕もなかった。

組み合わせが決まった時点でこの結果は見えていたのかもしれない。

しかしどんな理由だろうと、負けは負け。

次は『緋走緋々葬』も攻略してやるから首洗って待っとけ。



脱線したが、特に大きな動きがあるわけでもなさそうだ。

強いて言えばアリスが『白夜結界』を発動し始めたくらいだろう。

動きが鈍くなっているアカネの行く先を徐々に潰していき、分身によって通常の7倍速で結界が完成する。


「分身の術!」


結界に閉じ込めたのを確認し、分身の数をさらに増やした。

それぞれの分身がやったことはいくつかあった。

外から見ていると分かるのだが、結界内からだと何が起きているのか全てを理解するのは難しいだろう。


まず土魔法で壇上とまったく見分けがつかない地面を、闘技場の外周の壁まで作り出す。

続いて結界を徐々に壁の方に動かし続ける。

最後に気付かれないように分身を駆使しながら注意を引き続けた。



アリスは魔法を使用するにあたって、色んな角度から考えに考えたのだろう。

1つの魔法に対し、どうすることで効果をあげられるか。

どういう効果が得られるのか。

とことんまで突き詰め、頭に入れているのだ。


その努力が今大会で、完全に開花した。


きっかけは分からない。

だが、積み上げてきた努力はある日突然、花開くことがある。

かつてのアカネや俺がそうだったかのように。


そしてその時には必ず、誰かの支えや信頼できる仲間の力添えがあったりするんだ。


だから俺は、仲間との研鑽の力を信じている。



「アカネ・オオヒラ、場外10カウント!

勝者、アリス・ポーラン!!」



それを信じている限り、まだまだ俺たちは強くなれる。



-----


アーデルハイドさんの宣言直後に結界を解いたアリスが、即座に『完全回復』でアカネを癒す。

何が起きたのか分からないという顔をしていたアカネも、自身の立っている位置に驚いていた。

あと5歩後ろに下がれば壁にぶつかるであろう位置まで後退させられたいたのだ。

結界が壁にぶつからないギリギリの距離。

かつ、壇上からは程遠い場外。


回転する結界で方向感覚を失わせ、分身の攻撃を防御させつつ、徐々に後退させた。

結界に閉じ込めておくことで剣士の間合いの外に置きながら。

完全にアリスの作戦勝ちだ。

互いに無傷で試合を終える試合となったが、良いものを見せてもらったな。


盛り上がる実況を聞きながら、イオと共に表彰のために壇上へと向かう。

イオも決勝のアリスの闘い方を見て思うところがあったのか、ぶつぶつと独り言をこぼしていた。




「それでは個人戦の表彰式を始める。

今大会ベスト・オブ・マッチは、準決勝第2試合、ユウリ・アマハラ対アカネ・オオヒラ!

歴代個人戦で最長の試合時間を闘いぬいた2人に送りたいと思う。」


てっきりイオ対アリスが選ばれると思っていたので、これには面食らってしまった。

アカネと目が合って初めて呼ばれたと自覚して、大慌てで壇上へとあがる姿に大闘技場からは笑いが起きた。

新人戦の時よりも立派な長方形の木の枠の真ん中に銀のプレートが埋め込まれており、その中心にベストオブマッチと書かれている。

やはり個人戦という大会の評価は、それなりに高いらしい。


続いてベスト4でイオと俺が、準優勝でアカネが次々と呼ばれ。


「優勝、マジックギルド学院1年、アリス・ポーラン!」

「はい!」


綺麗な長い銀髪を揺らしながら堂々と壇上へとあがる姿に見とれてしまう。

アーデルハイドさんの祝福する言葉に礼を応えながら、大きな金色のプレートを手にするアリス。

その目にはうっすらと涙を浮かべていた。


「それでは、優勝者インタビューと参りましょう!

アリス選手、おめでとうございます!

今の率直なお気持ちを聞かせてください。」


決勝で実況をしていたエリーゼ・アッシュフォードさんがマイクをアリスに向けた。

驚きながらもふっと笑みを作るアリス。


「そう、ですね・・・素直に嬉しいです。

今まで辛い想いをしたこともありますし、魔法から逃げ出していた時期もありました。

それでも仲間の支えがあって、ここまでたどり着くことができたので。

関わってくれた皆に、感謝の気持ちでいっぱいです。」


「今後、色んなところからのスカウトが来ると思いますが、将来の進路についての考えはあるのでしょうか?」


「お誘いは嬉しいのですけど、おそらく全てお断りさせていただくことになると思います。

父の跡を継ぐ可能性もありますけど・・・

何よりも、愛する人に添い遂げたいので。」


そう言いながら、満面の笑みを向けてきた。

大闘技場の大歓声がここまで辛いと思ったのは初めてだ。

最前列で酒を飲みながら爆笑している金髪の合法ロリだけは後で覚えておけよ。


その後は大会に関係のない質問が多くなり、大闘技場は盛り上がったもののアリスはクールな対応で躱していった。


俺に対する色んな方向からの視線は、大会中のどの攻撃よりも痛かった。



-----


「やっと解放されたわ・・・。」


表彰と閉会式も終わり、各所からスカウトを受けてもみくしゃにされたアリスが、ようやく出口までたどり着いた。

俺たちが出てから1時間が経過した頃だ。


酔っ払った姉さんを宿まで送り、布団です巻きにしてサクから借りた縄でガッチガチに縛り上げて部屋に放置し、ちょうど今イオと共に戻ってきたところだ。

まるまった布団の中央から金髪が少しだけ見えて、たくあん巻きみたいになっていたが。



その間トニーとシャルロットが勝負をしていたらしく、スタミナが切れたシャルロットが大の字で倒れていた。

トニーも服がボロボロになっているあたり、結構いい勝負をしていたのかもしれない。


姿を確認するなり、全員が「おめでとう」と声をかけていた。

満面の笑みでお礼を返すアリス。


最後に俺の前で立ち止まり、涙を溢れさせながらニヤリと笑った。


「わたし、いつまでも待ってるから。

公衆の面前で宣言しちゃったからには、来てもらわないと困るわよ?」


「必ず行くさ。てっぺんで待っててくれ。」


そう言い、頭をくしゃっと撫でた。

そのまま顔を見ずにその場を立ち去った。


慌ててイオもシャルロットも着いてくるほど驚きの行動だったらしい。

決勝の舞台にもあがれなかった俺には、これくらいで良い。


9月半ばから末にかけて行われる団体戦。

頭の中はそのことでいっぱいだからな。


来年以降のことは、その時に考えたらいい。

大会ごとに強くなっていくつもりだし、来年の自分の強さは今の自分では想像もつかないしな。



個人戦が終わり、6月も終わりが近づいている。

残りの2か月ちょっとでどこまで強くなれるか。


5人が一斉に闘う団体戦とはいえ、個人のスキルアップは必須だろう。


この夏は、面白くなりそうだ。


そんな期待を胸に。

弟として姉の偉業である個人戦3連覇に追いつきたくはあったが、それはもう叶わない。

ならば3冠こそ超えてやる。



このアビスリンドのメンバーなら、必ず超えられるはずだからな。


心から信じられるメンバーと共に、帰路についた。



第7章 個人戦後編~完~


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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