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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第7章 個人戦後編

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六十八ノ舞「命を使う」


-----アカネ視点


準々決勝前日のこと。

軽く身体を動かしておきたいからとシャルルに付き添いを頼んで、決闘地区に居る。

事前にユウくんから予備の木刀を借りて2人で振っていると、トニーの姿が視界に入った。


明日わたしと闘う予定の選手と一緒に歩いていたけど、こちらに気付いて声をかけてきた。

「2人ともいつも一緒に動いてるべな。」

「仲良しだもん!トニーはいつも違う女の人と一緒だよね。」

「マジックギルドがそもそも男が少ないべ。」


そうなんだ、1つ賢くなっちゃったよ。

ふとシャルルを見ると、もう1人の女の人をジッと見てる。


「お久しぶりです、リシリアさん。」

「昔みたいにリアちゃんって呼んでくれていいのに。

邪魔してごめんなさいね。

ウチはマジックギルド学院2年のリシリア・フェイド。

明日はよろしくね、アカネ・オオヒラさん。」


リシリア先輩は、シャルルの知り合いなのね。

薄緑色の短髪でボーイッシュな感じなのに、フリフリの制服のせいで可愛く見えちゃう。

ちょっと恥ずかしそうにしてるシャルルがそれよりも可愛くて、抱きしめたくなっちゃうな。


「アカネ・オオヒラです。こちらこそよろしくお願いします!

シャルルとは幼馴染なんですか?」

「うん、互いの親が管理してる土地が隣同士なの。

だから昔はよく一緒に遊んだりしたよね。」

「アレが遊び・・・?」


シャルルは身体を震わせて顔を真っ青にしながら「テツ・・・コワイ・・・」ってブツブツ言い始めちゃった。

イオちゃんの時も同じになってたから、トラウマなのかな。


「えっと・・・恐がってますけど、何をしたんですか・・・?」

「ウチの錬金術の実験に付き合ってもらっただけだよ?」

「リシリア先輩は誰にも容赦ないべ。」


錬金術ってなあに?

まあマジックギルドに居るってことは魔法みたいなもんでしょ、たぶん。

考えても分からないことは考えないのだ。

時間の無駄だってユウくんに教わったもんね。


それにしてもシャルルにトラウマを植え付けるだけの実力者かあ。

(おわり)の秘剣』を出し惜しみしてたら勝てないかも。

ユウくんとの闘いのとっておきのつもりだったんだけどな。


「まあそれも5年以上前の話だけどね。

今日もトニーに実験台・・・じゃなかった。

新技の開発に付き合ってもらうつもりだったんだよ。」

「オラも一応明日試合なのを分かって言ってるからタチが悪いべ・・・。」


試合の前日なのに技の開発だなんて、タフだなあ。

トニーがタフなのは知ってたけど、マジックギルドではそれを良いことに利用されてそう。

可愛そうな子なんだね、トニーは。


「捨てられた子犬を見るような目で見ないでほしいでよ・・・。」



「まあ明日の対戦相手が居るんじゃ場所を変えるとするよ。

それじゃあ改めて、明日はよろしくね。」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」


にこりと笑ってトニーを連れてどこかに行っちゃった。

未だに帰ってこないシャルルの頬っぺたをつついてあげると「ひょあああ!」って久しぶりに聞けた。

本当にシャルルはなんでこんなに可愛いんだろう。


「アカネ、あの人の錬金術は本当に厄介よ。

自分の手足のように鉄や銀を操ることから『銀鉄の錬金術師シルバー・アルケミスト』なんて呼ばれてるわ。」


テツ、コワイってそういうことか。

んー、銀に鉄かあ。


「どれだけ操れるかは分からないけど、たぶん大丈夫じゃないかな。」

「楽観的すぎよ。確かにアカネは強いけどさ。」

「銀は分からないけど、()()()斬れるし。」


シャルルは何かを言おうとして口を開けたまま固まっちゃった。

わたし、何か変なこと言った?


「銀より鉄の方が硬いし、それなら大丈夫か・・・?」



-----通常視点


「大変長らくお待たせ致しました!

壇上の整備もろもろ終了し、ようやく準々決勝最終戦のDブロック!

マジックギルド学院2年、リシリア・フェイド選手。

アビスリンド学園1年、アカネ・オオヒラ選手。

この2名による闘いがまもなく始まろうとしております!

解説のルーナ隊長はリー選手を連行して詰所に向かってしまったため、ここからの放送席は私1人となってしまいました。

ルーナ隊長ファンによる、この盛大なブーイングにもめげずに張り切っていこうと思います。

間もなく試合開始です!」


リシリア先輩とアカネが壇上で向かい合った。

互いに闘うのを楽しみにしていたのか、嬉しそうな表情をしている。

リシリア先輩はともかく、アカネも試合の観戦をしていたのか。

ほとんどシャルロットと一緒に居ただろうに、一体いつ観たのやら。


「昨日はどうもね。

ウチの錬金術がどこまで通用するか、試させてもらうよ!」


「こちらこそです。

わたしこそ挑戦者ですし、全力で行かせてもらいます!」


「それでは、準々決勝最終戦。

リシリア・フェイド対アカネ・オオヒラ、試合開始!!」


装備付与(ハイエンチャント)世界随一の銘刀(おおかねひら)

全身付与(エンチャントオール)速度上昇(スピードアップ)。」


アカネは付与を終えた瞬間飛び出した。

俺の速度強化には劣るものの、相変わらず速い。

対するリシリアはその場に動かず、じっとアカネを見据えている。


「我は(なんじ)

悠久の時を経て、我、汝と共に歩み進む者也。

目指すは高み、天より高く。

蝶となりて彷徨う魂、進むべき道を授けよう。

(むすび)の剣─心魂灯剣(しんこんのともしび)


アカネの速度上昇されたダッシュに加え、おそらく最速の居合斬り。

開幕速攻のその攻撃に対しリシリア先輩は、

包み込む銀鉄シルバー・コーティング

分厚い銀の壁で受けた。


金属と金属がぶつかる高い音の後、アカネの高火力を受けきるほどの壁がぐにゃりと形を変えた。

()()はアカネの剣に瞬く間に巻き付き、バスタードソードの刃と同等の大きさに丸まった。


「わわっ!」

アカネの驚いた声とズドォォンという大きな音が同時にあがり、アカネの愛刀である『(いおり)』は壇上へとめり込み土煙をあげている。


あれほどまでに巨大な銀の塊では、今までのように簡単に振ることなどできないだろう。

というか持ちあげられるのか、あれ。


強化付与(エンチャントオール)筋力強化(パワーアップ)

うぉぉぉぉおーーーーいしょーーーー!!」


戦闘中とは思えない掛け声と共に、女性とは思えないほど両脚を開いて踏ん張り、両手で持ちあげなんとか肩の上に乗せることに成功した。

「ぷっ、あははは!!マジかい。」

その姿に思わず対戦相手のリシリア先輩も笑いが堪えられずに吹き出した。


「お、重い・・・。」

アカネは何をやらかすか分からないという意味では、本当に毎回面白い闘いをしてくれている。

観客からも笑いや拍手がおきたりと、他の試合とは違った良さがある。

次は何をやらかしてくれるのだろうと、観ているこちらもワクワクしてしまうほどに。


()()() 伍式 破剣─星崩し!!」


あーんの野郎、人の技をまた勝手に使いやがって。

重さを頼りに相手に叩き下ろした斬撃は、リシリア先輩が銀で作った壁を軽々と破壊した。

剣を纏っていた銀も同時に破壊し、アカネとしては一石二鳥だな。


身体を動かして躱すリシリア先輩。

アカネの踏み込みは剣の重さのせいでかなり大きく、ギリギリ剣先がリシリア先輩を捉えた。

だがダウンを奪えるほど入ったわけでもない。

制服すら斬れていないところを見ると、咄嗟にガードしたのか。


案の定大きな音を立てて、リシリア先輩の腹のあたりから斬れた鉄の塊が壇上に落ちた。

「初戦を見て思ったんだけど、本当に鉄を斬れるんだね・・・。

ダイヤでも持ってこないとかしら。」


新人戦でも甲冑をぶった斬ってたしな。

あの世界随一の銘刀(おおかねひら)のおかげもあるだろうが、俺と同じ鍛錬を積んできたアカネだし、別に驚くことではない。

しかし銀塊が砕けるほどの衝撃を受けたはずなのに、刃こぼれ1つも起こさないとは。

銘刀とは聞いていたが、あの剣も相当規格外だな。


「ダイヤなんて斬ったらもったいないじゃん!」

「いや、そういうこと言ってるんじゃないんだけど・・・」


リシリア先輩はあれか、苦労人なんだな。

ツッコミ気質というか。

まあマジックギルドの周りのメンバーがトニー、アリス、ナナシー先輩だから仕方ないのだろうけど。

アリスはともかく、あの野性的な2人をまとめるのも大変だろうな。同情するよ。



「ともかく、これだけ斬られるんじゃ出し惜しみしても意味なさそうだね。」

杖を上に掲げると、無数の鉄の槍のようなものが生成された。

リシリア先輩が杖を振り下ろした瞬間、その全てがアカネに向かって降り注いだ。


「槍でも降るって、こういうことを言うのかなっ?」

言いながらも凄まじい速度で剣を振り、一歩ずつ後退しながらも槍を撃ち落していくアカネ。

しかしその槍は囮。

アカネが何歩目かを後退した瞬間、鉄の棺のようなものがアカネを捕らえて閉じ込めた。

「おわっ!?」


これはあれか、有名な拷問器具だ。

鉄使いならではってところだな。

鉄の牢獄(アイアン・メイデン)!!」


本来であれば棺の中に棘があったり、外から身体中を刺したりするのだろうけど、今大会は色々あったからか危険な攻撃は一切禁止されている。

それをきっちり守りながら闘うリシリア先輩は、全ての槍を脚に向けて放った。


「我は汝。

悠久の時を経て、我、汝と共に歩み進む者也。

目指すは高み、天より高く。

導べに従う御霊よ、新たな伊吹となりて顕現せよ!!

(おわり)の秘剣―六道餓鬼・千手観音!!」


アカネの聞いたことのない詠唱。

『世界随一の銘刀』の纏うオーラが鉄の牢獄の至る方向から飛び出し、飛んでくる槍をことごとく撃ち落とした。

その隙間から牢獄をぶった斬り姿を現したアカネの剣は、今までの付与(エンチャント)とは比にならない程の凄みを帯びていた。


普段の美しさに加え、目に見える程増幅したオーラ。

名の通りとまではいかないが10を超える腕のような形をしている。

いつの間にあそこまで自在に付与術を使いこなせるようになったのやら。


だがそれも完全に操れているというわけでもないらしい。

リシリア先輩が放った槍の1本がアカネの左脚をかすめていたようだ。

大きな傷ではないにしても、血が流れるには充分な傷だ。

そして何より、肩で息をしていて尋常じゃない汗の量。

あの技はアカネにとって諸刃の剣なのかもしれない。


普段のトレーニングでは涼しい顔をしながら俺についてくるほどの体力の持ち主だ。

そのアカネがここまで疲労している姿は、俺との立ち合い以外では初めて見たかもしれない。

それだけリシリア先輩の連撃が効いたということなのだろう。


しかしどちらもダウンには至っていない。

見た目ではアカネが不利だが、自身が得意とする鉄を片っ端から斬られてリシリア先輩も決め手に欠けているといったところだ。



-----アカネ視点


どうしよう、体力がほとんど残ってない。

やっぱり『千手観音』はまだ無茶だったかな。

『世界随一の銘刀』にさらに付与をし続ける体力と技術は、まだ足りないみたい。

それでもそうしなければ危なかったのは事実。


救の秘剣はたぶんあと1回が限界だ。

本当にユウくん相手の切り札だったけど、もうそんなことは言っていられないよね。


ここで負けたら、その闘いの舞台にすら上がれないんだから・・・!



千手観音のオーラをしまい、剣を体の前。

中段に構える。

幾千、幾万とやってきたアマハラ流の基本の構え。

まだ短い人生だけど、ここまで生きてきた命を使って辿り着いた終着。


使命って不思議な言葉だよね。

命を使うって書くんだよ。


文字通りにたどり着いたこれが、今のわたしにできる最強の斬撃。



「我は(なんじ)

悠久の時を経て、我、汝と共に歩み進む者也。

目指すは高み、天より高く。

導べに従う御霊よ、新たな伊吹となりて顕現せよ!!

(おわり)の秘剣―六道天・如意輪 緋走緋々葬(ひそうひひそう)!!」



-----通常視点


口上が終わると同時に、2人の位置が入れ替わっていた。

アカネは剣を振り抜いた格好で。

リシリア先輩がガードのために出そうとした鉄は全て砕け散って地面に散らばった。


直後アカネはうつぶせに倒れ、リシリア先輩はあおむけに倒れた。

何が起きたのか全く分からないほどの速度。

俺のマキシマムよりも間違いなく速かった。


両者ダウンの10カウントが始まるも、会場は何が起きたのか理解できている人は居なそうだ。

おそらく、数人を除いて。


あの技、先ほどの千手観音よりも諸刃の剣だ。

ただ一刀に自らの命を乗せたような、神速を超える速度の斬撃。

俺が言うのもなんだが、人間の限界を超えている。


間違いなく命を削っている。

すでに姉さんがアリスを連れてリングの傍まで来ているほどには危険な技なのだ。


「ガハッ・・・!」

血を吐きながらも剣にすがり、なんとか立ち上がるアカネ。

その脚は生まれたばかりの小鹿のように震えている。

しかし立ち上がったことでアカネのダウンカウントは停止した。


「0!リシリア・フェイド10カウントダウン!!

勝者、アカネ・オオヒラ!」


完全回復(リザレクション)!!」


勝者宣言とほぼ同時にアリスがアカネを回復させた。

身体の震えは止まったが、完全に眠ってしまっている。

アリスがトニーを呼び、駆け寄ったシャルロットと共に医務室へと連れていった。



「準々決勝最終戦も決着!!

ベスト4に残ったのはアカネ・オオヒラ選手。

今大会ベスト4全員が1年生ということになりました!!

これは大会史上28年ぶり2度目です!」


-----



大闘技場はざわめきと歓声が残り、準々決勝は幕を閉じた。

明日の休養を挟んだ2日後、準決勝が行われる。


屈指の魔法使い同士の対決である、イオ対アリス。

そして兄妹弟子対決のユウリ対アカネ。


すでに観客の興味は準決勝へと向いていた。



ユウリは最後のアカネの技、姿が目に焼き付いて離れなかった。


アカネの覚悟、そして家族として無茶をさせたくない気持ち。

色んな感情が渦巻いていた。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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