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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第6章 事件編

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六十三ノ舞「絶対にだ」


-----イオ視点


闘技場に戻ると、案の定ボロボロになったユウリさんが治療を受けていました。

この個人戦が始まって以降、どれだけ血を流しているのでしょうか。

大きな傷に加えて、魔力欠乏も見てとれます。

試合とは関係のないところで複数回の分身に加えて速度最大強化(ヘイスト・マキシマム)の発動。

試合は見れませんでしたが、この傷なら激戦だったのでしょう。


明日まで目を覚まさないコースですね。

しかも起きても筋肉痛というおまけつき。

太っ腹すぎませんか。


しかし毎度のことになっていますが、よくもまあ毎試合こんなにも傷を受けながら勝てるものですね。

初戦といい今回といい、敗者の手当てをしているのではと勘違いするほどの傷です。

聖なる祝福(ハイ・ヒール)一発で治るとはいえ。


ひとまず即座に傷をふさぎ、医務室へと連れてきました。



明日はDブロックのアカネさんの試合があり、明後日は休養日。

明々後日に全てのブロックの準々決勝を1日で行い、再び休養日。

そのあと準決勝、決勝は連日行われる予定。

かなりのハードスケジュールなので、私も使用する魔力を考えなくてはなりません。


今のユウリさんの闘い方では、毎試合後に回復のために魔力を使用している状態です。

その辺も伝えておかなくてはいけませんね。



ユウリさんがリーと対戦するのは、3日後。

速度最大強化のリミットが3日なことを考えると、ギリギリですね。

身体にダメージが残っているようなら、使用を制限しないといけない可能性もあります。


仮にもし使用可能な状態で、使用して勝ち上がったとして。

中1日で準決勝。

そこでアカネさんと対戦する可能性もあります。

さすがにユウリさんも後先考えて行動するはずなので、決勝に標準を合わせるはずだ。

つまり次の準々決勝、速度最大強化は使用しないでしょう。


私もトニーさんとの対戦の後なので、余力が残っているか分からない。

魔力を使いきってしまえば、1日寝こまなくてはいけなくなります。

仮にトニーさんとの勝負に勝ち上がったとして、身体を動かせずに準決勝に挑むことになる。

それは何としても避けたい。


Bブロックはおそらく、最大のライバルが勝ち上がってくるから。


今後のスケジュール的にも、ユウリさんが起きたら釘をさしておかないと。



コンコン─

「どうぞ。」


ノックに思わず返事をしてしまいましたが、私が許可してよかったのでしょうか。

いや私が居るかどうかなんて分からないから、返事がなければ結局入ってきますかね。

そんな無意味な考えを巡らせていると、アリスとトニーさんが部屋へと入ってきた。

噂(?)をすればなんとやら。

もう起きて平気なのですね。


「わたしの観ていないところで本当に無茶しないでほしいわ。」


アリスは寂しそうな表情をしながらも、嬉しそうな声で言いながらユウリさんの頭を撫でた。

トニーさんから全てを聞いたのでしょう。

先ほどの私もそうでしたが、自分のためにしてくれているのが分かると強く言えないのですよね。

非常に分かります。



トニーさんに隣の部屋に学園長とサクラ先輩も居ると聞いて、そちらに向かうことにしました。

アリスを1人置いていくのは不安ですが。とっても不安ですが。


2人の様子を見るに、学園長は疲労、サクラ先輩は魔力欠乏ですね。

目立った外傷はなさそうなので、少し安心です。

義手については私にはどうにもできないので、それはカウントしない方向で。


トニーさんと共に部屋から出ると、ちょうどアカネさんとシャルロットさんが戻ってきました。

即座にシャルロットさんの顔の傷を治しつつ、トニーさんにそういえばルーナ隊長はどうしたのかと質問。


どうやら捕まえた2人を取り調べるために基地へと戻ったそうだ。

本当に責任感が強くてカッコいい人ですね。

少し憧れます。



その後は全員でユウリさんの部屋に集まり、明日の行動を決めることに。

今日あった出来事を伝えると、シャルロットさんから単独行動は避けて最低でも2人1組で、という方針が出されました。

アカネさんを応援に行くチームと、ここに残ってユウリさん達の警護チームだ。


いの一番にアリスが「ここに残るわ」と意思表示をした。

ということはトニーさんも残るでしょう。

サクラ先輩も学園長も明日には目を覚ましているでしょうし、こちらは大丈夫ですね。

シャルロットさんと私で、アカネさんを応援です。


私はできれば、明後日のために無理はしたくない。

もちろん闘いになれば全力を尽くしますが。

それはトニーさんもアリスも同じだと思います。

1人になったリーが、昨日の今日で仕掛けてこないことを祈るしかなさそうです。


各自細心の注意を、とシャルロットさんが促したところで今日は解散することになった。

と言っても、アリスとトニーさんは残るようです。

今から警護するために気を張って、大丈夫なのでしょうか。



-----アカネ視点


「さあいよいよベスト8、最後の椅子をかけた闘いが始まろうとしています!

イーストテイン学園3年、ベーン・ゴーノ・シーナナ選手!

アビスリンド学園1年、アカネ・オオヒラ選手!

アカネ選手の攻撃に、ベーン選手がどれほどついていけるかが鍵になりそうです!」


昨日シャルルと一緒にルカリを捕らえて王国騎士団に引き渡し、医務室に戻ったのだけど。

案の定、ユウくんはベッドの上だった。


わたしたち全員を信頼しながらも、自分の分身を置いてフォローして。

そのうえで試合だなんて、わたしなら集中できる気がしない。

それでもちゃんと勝っているのだから、そのあたりはユウくんらしい。

ベッドで寝こんでいるのも、個人戦が始まってからはほぼ毎試合のことなので慣れちゃった。


昨日はそのままシャルルが代わりに皆をまとめて解散になったけど。

その後もシャルルはわたしの部屋まで付き添ってくれて、今日も応援に来てくれている。

本当に大好き。



この調子でいくと、準決勝でユウくんと闘うことになる。

絶対にそこに行くまで負けられない。


昨日の夜、シャルルとそんな話をしていた。

緊張しいのくせに先のことばかり考えすぎだと怒られたけど。

確かにシャルルが居なかったら今頃緊張でトイレとお友達になってたかもしれないけどさ。

それでも今まで完全に封印していた『世界随一の銘刀(おおかねひら)』を解禁してからは、前ほど緊張することがなくなった。

たぶん、負けないという自信があるからだと思う。


『世界随一の銘刀』にはそれほどの自信がある。

今まで師匠とミドリさん以外に、破った相手は居ないのだから。


ベーン・ゴー・・・なんだっけ?

反対から読んだら名無しの権兵衛って気づいて、昨日シャルルと笑ってたのは覚えてるんだけど。

そんな有名選手ではない相手だろうとも、油断なんて一切しない。


絶対に勝って、次の試合も勝って、ユウくんと準決勝で闘いたい。

ユウくん相手に『世界随一の銘刀』がどこまで通用するのか、試してみたい。


「それでは、試合開始!!」


ミドリさんには怒られるかもしれないけど。

この大会でのわたしのやりたいことは、それだけだ。


装備付与(ハイエンチャント)世界随一の銘刀(おおかねひら)

全身付与(エンチャントオール)速度上昇(スピードアップ)。」


だからユウくんも、次の準々決勝。

未だに唯一逃げているリーが相手だけど、絶対に勝ちあがってきてね。


わたしも絶対、その舞台に立つから。



-----通常視点


頭を撫でられる感触に目を覚ました。

感触があるということは、どうやら死なずに済んだらしい。

窓から差し込んでいる夕焼けの明るさに、目を開けるのをためらう。

またかなりの時間寝ていたみたいだ。


「あら、起こしちゃったかしら。」

頭を撫でながら覗き込んでいたアリスと目が合った。

アリスこそ無事で何よりだというのに。

心配そうに、けれども少し嬉しそうな表情でこちらを見ている。


「さっきまで居たのだけど、アカネちゃんも無事に勝ったみたいよ。

準決勝で旦那様と闘うまで絶対に負けられないんだーって気合十分だったわ。」


アカネも勝ったのか。

明後日の準々決勝で互いに勝ち上がれば、いよいよ対決ということになる。

まあそれも俺がリーに勝ったらの話だが。


「正直、追いつめられたリーが何をしてくるか分からないから不安なんだけどな。」

それに全身に激痛が走っているあたり、どちらかの分身が『速度最大強化(ヘイスト・マキシマム)』を使用したのは明らかだ。


正直なところ次の試合で使いたくはない。

使ってしまえば準決勝では本来の動きができない状態でアカネと闘うことになってしまう。

闘うたびに力をつけていたアカネだ。

今まで負けたことはないものの、実力差が縮まってきているのは分かっている。

そんな相手に全力で挑めないのは避けたい。


しかし先を見過ぎて足元を掬われるわけにもいかない。

次のリーとの対戦、間違いなく正念場だ。


「皆がついてるから大丈夫。

貴方が皆のために闘ったように、皆も貴方のために闘いたいと思っているはずよ。

わたしのことも助けてくれた。

だから今度はわたしが、旦那様を助ける番ね。」


そっと俺に抱きつき、背中を強く抱きしめてくれたアリスは、言い終えると静かに立ち上がった。

いつもの自信満々の表情で。

一体何をするのかと見ていると、印を結んで分身を3人出した。


「聖なる光よ!回復魔法(ヒール)!」

「癒しの光よ!治癒能力上昇(リジェネレート)!」

「癒しの波動よ!再生能力上昇(リバイブル)!」


「聖属性初級、中級、上級魔法・・・接続(コネクト)

伝説級聖属性魔法レジェンダリー・ホーリーマジック完全回復(リザレクション)!!」


3人の分身が使用した聖属性魔法をアリスがまとめて俺に向けて放つと、俺の身体を大きな光が包んだ。

少し身体が温かくなったと感じた途端に、どんどん軽くなってゆく。

普段の速度最大強化の後遺症が、嘘のように。

10秒程度で徐々に光が弱まり完全に消える頃には、先ほどまでの身体のだるさがまったくなかった。


「凄い・・・。」


思わずつぶやいていた。

今までどんな方法を試しても3日に1度が限度で、使用後1日から1日半は激痛で動けなかったのに。

アリスのその魔法は一瞬で治してしまったのだ。


俺の驚く表情を見て満足そうな笑顔をしたアリスが、「どうかしら?」と聞いてきた。

立ち上がって身体を動かしてみたが、痛みを感じるどころか、いつもよりキレが良いくらいだ。

思わず以前のようにアリスの手を取り、ブンブンと振っていた。

「ありがとう、アリス!これなら明後日全力で闘えそうだ。」


その反応にアリスは、煙が出てくるのではないかと思うほどに顔を一気に赤く染めていた。

「おおお、お役に立てたようで何よりよ。」

言いながらボンッと音を立てて消滅する分身。

そのまま俺の胸に飛び込むように抱き着かれた。


「どんな時でもわたしが付いているから、安心して。

貴方が救ってくれた命だもの。

これくらいのことでいいのなら、いくらでもやってみせるわ。」


俺だけが救ったわけではないのだけどな。

それでも本当に無事でよかった。

そして完全回復に関しては本当に感謝しかない。


「ありがとう。」

そう言ってアリスの頭に手を乗せようとした瞬間。


「ゴホン、お楽しみのところわりぃんだけどよ。」

気配も全くなしに部屋に入ってきていた姉さんが声をあげた。

思わず身体を放しそうになった俺に対し、動じずにそのままの状態で顔だけ向けるアリス。

この子は自他共に認めるメンタル弱者なはずだが、本当はメンタル強者なのではないだろうか。

姉さんの後ろで頬をかきながら微妙な表情をしているサクが普通の反応だろう。


「明日1日、義手の交換で病院から離れられないから皆のこと頼むな。

それじゃあ、あとは若い2人に任せて。」


言い回しが古いぞ。

ニヤニヤしながら出ていく姉さんと、姉さんに引っ張られながら出ていくサク。


いつまでもこのままじゃ、精神的に辛い。

ということで、アリスの頭に手を置いて。


「お礼に、明日街にでも行くか。」

「うんっ!」


アリスは、それはそれはとても嬉しそうな笑顔で頷いた。


普段クールな印象なだけに、この嬉しそうな楽しそうな顔を見ると毎回ドキッとしてしまう。

この笑顔をまた見ることができて、本当に良かった。



「オラ、最近空気と同じ扱い受けてねか?」


トニーの寂しそうな声に、2人で笑いあった。

居るのは分かっていたのだが。


こうして笑いあえる、普通でなんでもないこと。

でも今は、その普通を取り戻せたことが心から嬉しい。


次の闘いは、終盤の準々決勝。

俺たちの平穏を崩した張本人との一戦だ。


リー。

お前がどんな手を使って俺たちの絆を壊そうとしてきても。

この絆は絶対に壊せない。


絶対にだ。


必ず俺の手で、幕をおろしてやるからな。



胸の内でそう決意しながら、仲間たちと笑いあった。




第6章 事件編 ~完~

第7章 個人戦後編 に続く


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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