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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第6章 事件編

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六十二ノ舞「雷光の銃弾」


-----イオ視点


まもなくユウリさんの試合が始まろうとしています。

第一試合終了からここまでリー・セイの監視をユウリさんとしていたのですが、ここからは私1人です。

正直に言うと怖いです。

あのナナシー・ヘンドリクスを破った、前回大会優勝の強敵。

気を抜くつもりはありませんが、常に全力でというわけにもいきません。

こういう時、魔法しか使えない自分が少し嫌になります。


試合を終えたリーはしばらくして闘技場を後にし、アリスとサクラ先輩が運ばれた医務室とは逆の方向。

クノッサスの南側地区、多くの人で賑わう歓楽街へと入っていきました。

どこかの店に行くのかと思いきや人気のない通りに入り、そこからさらに奥へ。


店舗の倉庫と思しき建物が立ち並ぶ中にある2階建ての古い建物。

周囲を確認してその中へと入っていきました。

彼らのアジトでしょうか。


ユウリさんと共に見張っていたのですが、特に目立った動きはありませんでした。



クノッサスの中でも最も無法地帯と化している南側。

酒場や夜の店などが他の地区と比べて多いのは、家賃が安いからでしょうか。

それはいいとして、そんなお店がたくさんあるだけあり、人の数は本当に多い。


気を隠すなら森の中。

人を隠すなら人ごみの中、ということでしょう。


正直ここから1人で闘技場まで戻れるかと言われると怪しいかもしれません。

それくらい奥まったところまで来ています。

しばらくしてユウリさんの試合時間が近くなり、戻ってしまいました。

監視役を買って出たのは自分ですが、いざやるとなると怖いものですね。



しばらく監視を続けていたのですが、特に動きがないまま時間だけが過ぎています。

そろそろユウリさんの試合が始まる頃でしょうか。

対戦相手は今大会五指に入ると言われるほどの攻撃力を有しているだけあり、少々心配です。

ユウリさんは、黙って無理をしてしまう人だから。

帰ったら回復魔法をかけたり、また厨房をお借りしてスタミナがつく料理でも作ってあげようかな。



そんなことを考えていた私は、完全に気が抜けてしまっていた。

「試合中からずっと見ていることに、俺が気づかないとでも思ったのか?」


後ろからの声に振り向こうとした瞬間、布で口を抑えられて首筋にナイフが突きつけられた。

入口が目に見えている1つかどうかなんて考えもしなかった。

完全に私の失敗だ。

背後からの接近に気付かず、完全に取り押さえられた形になってしまった。


「人質の王女か。どうしてくれたものかね。」

ククッと笑いながらも私を抑える力は緩めない。

いくら無詠唱で魔法が打てると言っても、魔法名すら叫ばせてもらえなそうなこの状況。


完全に詰みだ。

恐怖と焦りから、私の額には汗がとめどなく吹き出していた。



-----通常視点


「続きまして、Cブロック3回戦第2試合の模様をお送りしたいと思います!

アビスリンド学園1年、『雷光』ユウリ・アマハラ選手。

対するはセントラルポート学園3年、サンドラ・ロッジ・マーニ選手。

共に今大会屈指の攻撃力を有しているだけあり、激しい打ち合いが予想されます!」


皆は無事だろうか。

本来であれば皆と共に闘っていたかったのだが、シャルルとアカネ、そして姉さんとルーナ隊長に「任せろ」と言われてしまっては仕方ない。

分身も居るし、おそらく大丈夫だろう。

心配ではあるが、俺は俺のやるべきことをするとしよう。


「一つ、忠告をしておこう。」

「結構ッス。」


開始直前、サンドラが口を開いた。

試合前に心理戦を仕掛けてくるつもりだったのだろうが、そうはいかない。

そうでなくても考えなくてはならない事が多すぎて頭がパンクしそうなんだ。

余計な情報をこれ以上入れたくないんだよ。


サンドラは両手を逆ハの字に開いて大げさに溜息をつき、「やれやれ」と首を振った。

シャルロットだったら、こういう態度をされたら怒ってたかもな。



「それでは、試合開始!」

速度強化(ヘイスト)!」

装備付与(ハイエンチャント)振動する剣バイブレーション・ソード


アカネや姉さんと同じ、武器付与タイプの剣士か。

名前からして一発もらったら致命傷になりかねねぇな。

ベスト8まで勝ち上がってきているだけはある。

油断は禁物だ。


相手の出方を見つつ、カウンターで決めるのがベスト。

隙を見せたら高火力を叩きつけられるだろうから、細心の注意を払いつついくとしよう。


そういう相手には分身が有効だろうけど、既に作戦のために分身を出してしまっている。

これ以上出してしまうと、残りの魔力の関係で長期戦になったときに不利だ。

短期決戦に持ち込もうとして攻め急いでは、カウンターの餌食になってしまう。

高火力の相手にそれだけは避けたい。

なので出来ればこの試合は分身を出さずに終えるか、トドメとして出すかのどちらかだな。


こんなに考える余裕があるほど、集中できていないということだ。

仲間を信じて、今は自分の闘いに集中しないと。


サンドラが一歩ずつじわりじわりと距離を詰めてきている。

今までの俺の闘いを見て、一気に距離を詰めるのは得策ではないと判断したのだろう。

それなら攻め急ぐわけではないが、こちらの間合いに入らせてもらおう。



予備動作なしにサンドラの懐へと潜り、アカネが団体戦決勝で見せた『鹿威し』を放つため、相手の剣を木刀で弾こうと振り上げた。

その振り上げた木刀はスパンと音を立てて真っ二つに()()()


「速い・・・が、人の忠告は最後まで聞くべきだったな。」

「しまっ・・・!」


ズバンッ─


咄嗟に加速(ブースト)によるバックステップを試みるも間に合わず。

胴を右肩から左脇にかけて大きく斬られ、場外へと転がり落ちた。


「クリーンヒットー!!

サンドラ選手、ものすごいスピードで突っ込んだユウリ選手に対してカウンターの一閃!!

これにはたまらずユウリ選手も場外ダウン!

圧倒的な攻撃力をもろに受けましたが、試合続行はできるのでしょうか!!」



個人戦が始まってから、血を流しすぎている。


そのせいか意識が朦朧とする。


早く立って、試合に戻らないと。


そういえば木刀が折れたのは、イオと闘った時以来だな。


あの時も血まみれで満身創痍だったっけ。


代表選抜戦が、昔のことのように感じる。


アカネもイオも、全力で闘ってたな。


シャルロットは2人に惜しくも負けて、散々悔しそうにしていたな。


あれ、なんか色々なことを思い出す。


走馬灯ってやつか?


こんなところじゃまだ死ねないってのに、身体が動いてくれねぇ。


俺はここで負けるのか・・・




そう思い、動くことを諦めかけた瞬間。

分身が消えた感覚が走った。


分身が消えた・・・?

()()()()だ。

いや、シャルロットの方だな。


消えた理由は詳しくは分からないが、仲間を守って攻撃を受けたはずだ。

なおさら、全員の無事を確認するまで倒れられねぇだろうが。


何諦めかけてんだ、俺。

自分の考えた作戦で仲間を闘わせておいて、一人で倒れてんじゃねぇよ・・・!



まどろんでいた意識が覚醒し、悲鳴をあげている身体と頭に渇を入れて立ち上がる。

踏ん張って立ち上がり、壇上へと戻った。


実況が騒いでいる気がするけど、なんと言ってるかまでは分からない。

10カウントに間に合わなかったか?

いや、それにしては審判が止める気配がない。


続行でいいんだよな。

というか長くもつ気がしないから、もう行くぞ。


剣の舞(ブレイドダンス) 漆式(ななしき)・改 紫電─閃光の剣(ライトニングブレード)


本来の漆式は雷を纏った剣を叩きつける技。

しかし折れた剣では纏わせるには長さが不十分。


イオとの闘いの後、今後の闘いの攻防で剣が折れてしまうことが有り得るかもしれないと考えた俺は思考に思考を重ね、雷で剣の形を作ることに成功したのだ。

アリスの意識が戻るまでの間ずっと練習していたが、魔力の制御があまりにも難しく成功確率は3分の1といったところだ。

しかし成功してしまえば、今までの非ではない程圧倒的な攻撃力を誇る。


雷とまともに打ち合ったが最後、完全に身体の自由を奪えるのだから。


だが全身を覆っていた雷を剣に一点集中するのだから、移動力は落ちてしまう。

それだけが難点だが、それを補ってなおお釣りが来るほどの性能だろう。



右腕に閃光の剣を持ち、相手へ一直線へと向けて構えた。

重心がずれないように、左手で右腕を抑える。


雷光の銃弾ライトニング・バレット


分身の術を習得した際、魔力の放出については理解できた。

漆式で剣に吸収した魔力を、一直線に放出してしまえば疑似的な雷を起こせると気が付いたのだ。


言ってしまえばイオがよく使う『電撃(エレクトリック)』なのだが、俺は魔法をイオのように上手く使うことができない。

不器用ながらに同じことを再現してみた、というわけだ。


一直線に大闘技場を横断した雷は、こちらへ向かって動き始めていたサンドラを撃ち抜いた。

威力は充分。

サンドラは白目をむき、口から黒い煙をあげて壇上に沈んだ。


「サンドラ・ロッジ・マーニ試合続行不可能!

勝者、ユウリ・アマハラ!」


もうだめ、限界。

さすがに血を流しすぎた。


大の字に倒れた俺は、大歓声をうっすらと聞きながら意識が途絶えていった。



-----イオ視点


「イオを放せ。」


ユウリさんが速度最大強化(ヘイスト・マキシマム)を発動しながら、リーの背中に木刀をつきつけた。

両手は私を抑えつけているので完全に背後を取り、逃げるそぶりを見せたらこのまま電撃を叩きつけるつもりでしょうか。


「ちっ。」

自分の不利を悟ったのか、リーは私を開放して武器を捨て、両手を上にあげた。

すかさずユウリさんの後ろへと周り、『大地の盾(アースシールド)』を唱えて杖をかまえた。


「アンタの仲間は、俺の仲間が既に応戦している。アンタが最後だ。」

「『王国最強の盾』だけならともかく、『神速の剣姫』まで出てこられたんじゃな。」

「お前らの失敗は俺たちの仲間に手を出したことだ。」

「だが大人しく捕まるつもりもねぇよ!!」


そう言い放ったリーの身体は、一瞬で地面に飲み込まれていった。

地属性魔法でしょうか。

私も知らない魔法です。

ユウリさんも、気配を全く感知できなくなってしまったそうです。


「ユウリさん、助かりました。」

「怖い思いをさせてごめんな。」


私の頭に手を乗せて、そんなことを言ってくれました。

冷や汗でぐちゃぐちゃになっていそうなだけに恥ずかしいです。


でも、助けてほしいときに助けてくれるなんて、本当に兄さんみたい。

分身を置いておくなんて一言も打ち合わせていなかったのに。


私を心配して置いてくれていたのかと思うと、嬉しい反面少しだけ寂しい気持ちになりました。

確かに失敗をしてしまいましたが、もう少し信頼してくれたらもっと嬉しいのだけど。


我ながら、本当に面倒くさい女だ。


そう思った瞬間、ボンッと白い煙をあげて分身は消えてしまいました。

試合が終わったのでしょうか。

分身が消えたということは、回復魔法が必要なほど消耗していることでしょう。

急いで闘技場に戻らないと。



・・・もう聞こえていないけど、心から言わせてもらおう。



「ありがとうございます、ユウリ・・・兄さん。」


本当の兄さんに申し訳なさが出てきてしまった。

言葉にするのは、これっきりにしておこう。



恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、人気のない裏路地を全力で走るイオだった。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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