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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第5章 個人戦前編

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四十八ノ舞「たとえどんな銘刀だとしても」


翌日、目が覚めるとアカネとイオが見舞いに来ていた。

声をかけようとすると、アカネは人差し指を口に当ててシーっとジェスチャーをし、その後ベッドの反対側を指さす。

見てみると、目の周りを腫らしたシャルロットがベッドに突っ伏して寝ていた。

夜は気付かなかったが、服がボロボロなのを見るに姉さんとの稽古中に呼ばれたのかもしれない。

本当に申し訳なく思い、軋む右手で頭を撫でた。

そっと撫でたつもりだったのだがガバッと頭を抑えて起き上がり、俺に撫でられていたことに気付いて「なんで起きちゃったんだろう」としょんぼりしながら呟いた。

そんなに頭を撫でられるのが好きなのだろうか。


「ところでアカネ。今日試合じゃないのか?」

皆で雑談している最中に、ふと思い出した。

日付がすっ飛んでなければ、今日はDブロック1回戦のはずだ。

「出番最後だから、少しでも緊張しないところに居ようかと思って。

ここに居たらユウくんが心配で、緊張どころじゃないし。」

そういえばトリだったな。

まだ朝9時だし、出番まで6時間はありそうだ。

6時間でさらに思い出したのだが、クノッサスからアビステインまで片道6時間と考えると、俺は12時間以上気を失ってたのか。

昨日の昼から何も食べていない計算だ。

「・・・腹減った。」

「会話がずいぶん斜め上に飛んだわね。」

シャルロットが思わず突っ込むくらいには繋がっていないらしい。

俺の頭の中では全部繋がっているのだが。


イオがリンゴを剥いてくれたので、食べながらふと考える。

なぜ病院の見舞いの際はリンゴなのだろうか。

同じくらい栄養があるバナナの方が剥きやすいし捨てやすく、手も汚れず良いと思うのだが。

そもそもナイフを病室に持ち込んだりして大丈夫なのか?

・・・結論は出なそうだ。


そんな無駄な考えを巡らせていると、シャルロットが何かを思いついたような顔をした。

「ユウはどんな相手と闘ったの?」

「召喚術士の褐色ロリ。」

「おぉーい!見舞いに来てやったのに随分だね!」

急な声に勢いよく・・・は無理なのでゆーっくり振り向くと、ナナシーとトニーが居た。

というか最大火力の漆式をまともにくらって、なんでピンピンしてるのこの人。

ルクスとか全治1ヶ月だったのに。

「シャルル、俺の対戦相手だったマジックギルドのナナシー先輩。

隣に居るのは召喚獣のジーニーだ。」

「オラの扱い、昨日からひどくねか?!」

アカネとナナシーが思いっきり吹き出していた。

「トニーは召喚獣だったのね。」

と真顔で言うシャルロットに、俺も含めて笑いが起きた。

「もうやめ・・・お腹いた・・・」

アカネが呼吸も苦しくなるくらいお腹を抑えて笑っている。

イオは口元を抑えて吹き出すのを必死に堪えて震えていた。


「まあ冗談は置いといて、召喚術士のナナシー先輩だ。

ジーニーとタマっていう召喚獣と無詠唱魔法の使い手で、昨年の準優勝選手だ。

こちらはうちの学園のシャルロット。新人戦最優秀選手です。」

シャルロットは照れながらもナナシーに会釈をした。

ナナシーはシャルロットを値踏みするように見た後、

「最優秀選手なのに個人戦には出れてないんだな!」

とシャルロットの傷口に塩を塗りたくったナイフを突き刺した。

言葉のナイフって、結構斬れるんだぞ・・・


しかし、トニー以上にオブラートって言葉を知らない人だな。

アリスが苦手意識をもつのも分かる気がする。

シャルロットが涙目になりながらも反撃。

「昨年準優勝の割に1回戦敗退なのね。」

「いい度胸だね、君も!!」

表へ出な、と言い始めたナナシーをトニーが力ずくで抑えていた。

なるほど、このためのトニーか。


「とにかく、このボクにまぐれとはいえ勝ったんだ。

次で負けたら承知しないからな!」

そんな見方をしているから敗けたのだと言ってやりたいところではあるが、火に油を注ぐ意味もないので何も言わずに頷いておいた。

今は大人しく血を作ることの方が大事だ。

ナナシーは言いたいことだけ言って、満足そうに帰って行った。

トニーも大変だな。

「ユウの闘う人って変な人ばっかりね。」

シャルロットの言葉に大きく何度も頷いておいた。



-----


午後になり、アカネが準備を始めていた。

せっかくなのでシャルロットと共にウォーミングアップをしてから行くようだ。

2人の試合以降、むしろ今までよりも仲良くやっているように見える。

じゃれ合いが増えたというか、距離が近くなったような感じだ。

互いに良きライバル、良き仲間として改めて認めあったのかな。

何にしてもアカネにライバルが出来るのはいい事だ。

今まで俺ばかりと闘っていたし、シャルロットの存在は良い刺激になるだろう。

しばらくして、2人はウォーミングアップに出かけて行った。


イオは特にやることもないので、ここに居てくれるようだ。

正直1人でベッドに居ても暇すぎるので、ありがたい。

この際だし、神話級魔術誕生秘話でも聞くとしよう。


「『雷霆を纏いし光の槍ジュピターズ・スピアー』ですか?

入学してから雷属性を練習していて、最近ようやく最上級の『雷撃(サンダーボルト)』まで使えるようになったんです。

でも実際、上級の『電撃(エレクトリック)』の方が使い勝手が良くて。

どうにかして上手く使えないかなと考えていた時、ユウリさんを思い出したんですよ。」

まさか自分の名前が出てくるとは思っていなかった。

確かにいつも雷を纏ってるからな。


「ユウリさんみたいに雷を魔法に纏わせられないかなと。

それで試行錯誤した結果、光属性最上級魔法に纏わせて『雷撃(サンダーボルト)』の雷のエネルギーで形状変化まで可能になり、今の形になったんです。」

「つまりはイオのオリジナル魔法ってことか?」

「そういうことになりますね。

神話級魔法というのは魔法属性の得意不得意もあって、他の人がなかなか使えないので基本的にはオリジナルなんですよ。」


なるほどね。

雷は自分と剣以外に纏わせたことがないからな。

分身の術で放出と吸収を学べたから、他の何かに雷を纏わせたり出来るようになるだろうか。

新技を作る際の参考にしておこう。

「ちなみに『大地の盾』を見ると思うんだが、放出した魔力を吸収するってのはどうやるんだ?」

ただ魔力を放出したり、吸収した魔力を放出したりはできるんだけどな。

ふと聞いてみたつもりだったのだが、イオは急にフフッと笑い出した。

「ユウリさんって本当に強くなることに貪欲ですよね。」

「隠れて神話級作っちゃうくらいなんだから、イオも人のこと言えないだろ。」


そんな会話で、2人で笑いあった。

俺の周りには、こんな笑顔の溢れるようにしたいものだ。



-----アカネ視点


ウォーミングアップも終わり、いよいよもうすぐ出番だ。

これから出場選手用の控え室に行こうというところで、シャルルに声をかけられた。

いつもみたいに緊張しないようにって、気を遣ってくれてるのかな。


「アカネは何事も気にしすぎなのよ。

ユウに対しても、アタシに対しても気を遣いすぎ。

世界随一の銘刀(おおかねひら)』を使わないのもそうだし、どこか一歩引いて見ているような気がするのよね。」


あれ、思ってたのと違う。

斬れ味鋭すぎるよシャルル。

わたしだって、したくてそうしてるわけじゃないもん。

それでも、拒絶されることが怖い。

今の関係が壊れてしまうのが怖い。

だから、そうならないように立ち回っているだけなのだ。

それでもシャルルは納得いかなそうな顔で続けた。

「アタシと闘った時、最初からあの技を使っていればもっと楽に勝てたじゃない。

その程度で嫌ったりするほど、器は小さくないわよ。

アタシはもっとありのままのアカネを見たいし、そんなアカネと闘いたいわ。」


思わず抱きつきそうになっちゃった。

それでも、過去のことがあるから怖いんだ。

「あの剣を初めて使った時ね、道場の先輩が相手だったの。

うちの道場で唯一ユウくんと張り合えてた人。

その人に勝てばユウくんに振り向いてもらえるかなって思ってた。

最初の一撃で、その人を病院送りにしちゃってさ。

結局その人、その日から道場に来なくなっちゃった。

あの時向けられた皆からの拒絶の目を思い出したら、怖くて・・・」

思い出したら震えてきた。

両手で身体を抱えて震えるわたしを、シャルルはそっと抱きしめてくれた。


「大好きな人に振り向いてもらいたいから頑張るのは、間違いじゃないよ。

その程度で来なくなったのなら、そいつがその程度だったってことじゃない。

アタシは、絶対にアカネをそんな目で見ないわ。

仲間で、ライバルで・・・その・・・し、親友なんだから。」

なんでこの子は、こんなにも優しいんだろう。

この学園に入って、シャルルと出会えて本当に良かった。

そう思うと、自然と震えは止まった。


顔を真っ赤にしているシャルルの頬っぺたをつつきながら。

「シャルルの分まで、勝ってくるからね!!」

「当然よ!負けたら承知しないから!」

ニヒヒと笑うシャルルと、拳をぶつけ合った。

やる気モード、全開だよ!



「いよいよ、個人戦1回戦も最後の試合となりました!

ウエストブルム騎士育成校、シャンディ・フォークレット選手。

アビスリンド学園、アカネ・オオヒラ選手。

今年の新人戦決勝で見事な勝利を収めた2人が、満を持して登場です!!」


どこかで聞いた事あると思ったら、決勝でショウヤと闘ってた人だ。

ショウヤの敵討ちだ。

使い方あってるか分からないけど・・・まあ大体あってればいいか!

「シャンディ・フォークレットだ。

新人戦決勝以来だな。」

「アカネ・オオヒラよ。

今日のわたしは一味違うから、気をつけてね。」


正直、気をつけてどうこうなる問題でもないのだけど。

あのウエストブルムの甲冑は厄介だけど、世界随一の銘刀(おおかねひら)の前じゃ無力だもん。


「試合時間無制限。3ダウン、または10カウントダウンで敗北とする。

それでは、試合開始!!」


装備付与(ハイエンチャント)世界随一の銘刀(おおかねひら)

強化付与(エンチャントアームズ)筋力上昇(パワーアップ)。」

重量級鎧(パワードスーツ)。」

相手の甲冑の上に、さらに黒い全身鎧が纏われた。

それでいて移動スピードが落ちてないって、凄いなあ。

感心しつつも、剣を居合の型に構える。


「我は(なんじ)

悠久の時を経て、我、汝と共に歩み進む者也。

目指すは高み、天より高く。

蝶となりて彷徨う魂、進むべき道を授けよう。

(むすび)の剣─心魂灯剣(しんこんのともしび)


ズバンと音を立て、全身鎧を甲冑もろとも斬り落とした。

前後が入れ替わり、居合抜きで右腕を振り上げたわたしの後ろで、ガシャンと音を立ててシャンディが倒れた。


「一撃必殺、居合斬り炸裂ー!

長期戦が予想されていた1回戦最終戦、まさかの一太刀で決着!!

勝者はアビスリンド学園、アカネ・オオヒラ選手です!!」


大闘技場はどよめきに包まれていた。

やっぱり、そういう反応になるんだよね。

()()()()()()()()()


「アカネー!やったわね!!」

ニヒヒと笑いながら、腕を伸ばしてくるシャルル。


他の誰もがわたしを拒絶したとしても。


この絆だけは、誰にも。

たとえどんな銘刀だとしても斬れないよ。


「ありがとう、シャルル!」

アカネは大好きな親友に、満面の笑顔で拳を伸ばして応えるのだった。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。今後ともよろしくお願い致します!

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