四十二ノ舞「祭りの中心は」
激闘の興奮がおさまらないまま、2人の居る医務室へと足を運んでいる。
ノックをして中に入ると、イオがベッドで上半身を起こしていた。
シャルロットは全てを使い切り気を失ったまま運ばれたようだが、いまは眠っているようだ。
イオにひと言かけると、悔しそうな顔をした。
「せっかく完成した神話級魔法なのに2度も防がれると、流石に凹みますね。」
俺もアカネに剣の舞をよく止められるから、似たような気持ちは覚えがある。
サクがよしよしとイオの頭を撫でて慰め、ショウヤは「代表決定おめでとう」と声をかけていた。
アカネはというと、シャルロットの手を握って真剣な顔をしていた。
「ユウくん・・・わたし、シャルルの分まで絶対に勝つから。」
最近の暗かった表情とは違い、いつものアカネだ。
正直あのままだったら喝を入れていたところだった。
シャルロットの気遣いに感謝だな。
それと俺もシャルロットに言っておきたいことがある。
寝てしまっているので本人には伝えられないが、選抜メンバーが揃っているならここで公言しておこう。
「まだ先の話だけど、男女ペア戦はシャルルと組むわ。」
アカネとイオの時間が5秒ほど停止した。
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翌日、全校集会が行われた。
「ユウリ・アマハラ、アカネ・オオヒラ、サクラ・イガ、イオン・フォン・アビステイン。
以上4名をアビスリンド学園個人戦選抜メンバーに任命する。
各位、学園を代表して出場するからには、ベストを尽くして闘うこと。」
壇上に選抜メンバーが集められ、姉さんが堅苦しいことを言っていた。
「で、本音は?」という目を向けると、大袈裟にため息をついた。
「あーもうこんな硬っ苦しい言い方めんどくせぇ。
出るからには全員最低でもベスト8には入れよ?
アカネとユウは最低でもベスト4な。」
「ちょっ?!ハードル高いよミドリさーん!」
傍若無人な物言いに対して、焦るアカネ。
その言葉と反応に、修練場に笑いが起こった。
ふと顔を上げると、シャルロットと目が合った。
顔を赤くしてそっぽを向かれてしまったが。
全校集会の前に医務室に寄った時に、ちょうど目を覚ましたシャルロットと話ができた。
負けたのは悔しいけど最近泣きすぎて涙も出ないと言うシャルロットにペア戦は一緒に出ようと伝えると、嬉し泣きをされた。
涙出たな、とは流石に言えなかったけど。
なんにしても全てを出し切った末の敗北なので、納得できているようだ。
それでも神話級魔法を止めたことには変わりはない。
姉さんとの鍛錬もほぼ毎日やっているようだし、本当にこれからが楽しみだ。
願わくば、ずっと共に並んで闘いたいものだ。
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翌日、クノッサスに向けて出発するため、馬車に乗り込んでいた。
どうやら今回、姉さんは学園に残るそうだ。
1ヶ月と期間の長い闘いになるので、学園長としてそこまで離れられないらしい。
本音は弟子と一緒に居たいだけだろうが、そこは気付いていても言わないでおいた。
「アタシたちの分まで頑張ってよね!
この1ヶ月でアタシも成長しておくから。」
シャルロットはニヒヒといつも通り笑った。
5月の1ヶ月でもとんでもない成長をしたのに、まだまだ成長し足りないようだ。
「次は一緒に」と声をかけ腕を伸ばすと「ええ、必ず」と返しながら、伸ばした手に頭を当ててきた。
ハイタッチのつもりだったのだが・・・
とりあえずボサボサになるくらい頭を撫でておいた。
アカネみたいにアホ毛が立ってしまったが、まあそれも愛嬌ということで。
「直すの大変なのにー!!」
怒られた。
そんな賑やかな時間も過ぎ、馬車の中。
道中でアカネとサクが緊張して酔い、イオが回復魔法をかけまくったり、途中で降りて吐いたりと色々あったが、なんとかクノッサスへと到着した。
シャルロットが居ないからと完全に油断していたので、イオも大慌てだった。
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新人戦の時と同じ宿だったので、すんなりと入ることができた。
今日はこのまま何も無いので、せっかくなので皆で軽く街を回ろうと外に出ると、後ろから聞き覚えのある声と共に目を隠された。
「だーれだ?」
「随分古典的だなアリス。でもこの腕はトニーだ。」
「せっかくの再会なのに、面白みないわね。」
そんなことを言われましても。
トニーの手が離されると、目の前でアリスが微笑んでいた。
2週間前までは学園交流で共に過ごしていたので、特に変化もない。
ないのだが、女の子とは些細な変化に気付いてほしいものなのだと、以前イオに長々と説教をされたことがある。
それがあまりにも真剣だったので、見た目では全く分からなくても久しぶりに会ったらとりあえず見た目の話題をしようと心に決めたのだ。
「少しだけ髪切ったか?」
そう言うとアリスの顔がぱあっと明るくなり、
「前髪を少しだけね。
こんな小さな変化に気付いてくれるなんて、流石旦那様ね!」
と嬉しそうに前髪を指先で弄っていた。
イオには後でお礼を言っておこう。
ひとまずアリスのことはスルーして、トニーへと振り返り腕をガッシリと組んだ。
トニーとの挨拶と言えばこれだな。
これから少し遅めの昼食でも食べようとしていたところに俺たちを見つけたらしく、せっかくなので一緒に食べることにした。
「そういえば、シャルロットちゃんは?」
飯屋に入りそれぞれのオーダーを待っている際、アリスがストレートに聞いてきた。
イオとアカネが気まずそうにしていたのを見て「そう、負けちゃったのね」とアリスは寂しそうに零した。
「シャルロットちゃんじゃなくて、なんかごめんなさい・・・」
「そういうつもりで言ったわけじゃないのよ。こちらこそごめんなさい。」
サクの謝罪から、なんか空気が重たくなった気がする。
もちろんどちらも攻めるつもりはないのだけど。
「オラはユウリと闘えれば、なんでもいいでよ。」
戦闘狂は相変わらずだな。
アカネもうんうんと頷いているが、俺は同類じゃないからな?
「アカネはどうせあれだろ。
俺と闘いたいとかじゃなくて、俺とトニーが闘ってお前の部屋にある本のような展開を「ぎゃーーー!!!」」
叫んだアカネは店員にめっちゃ怒られていた。
「貴女には絶対に負けませんから。」
こちらでは魔法使い達が火花を散らしていた。
意外なことに、イオからアリスへの宣戦布告だ。
「貴女はもう少し大人しい子だと思っていたのだけど。
どちらも負けるつもりはないわよ?」
「また凍らされたいみたいですね?」
「あら、貴女程度の氷じゃわたしの想いの熱さで溶かしちゃうわ。」
怖いよこの2人。
何が怖いって、この会話めっちゃ満面の笑みでしてるんだよ。
サクがガクガクと震える子犬みたいになっていた。
しばらくして料理が到着し、トニーとアカネの料理のドカ盛り具合に皆で笑った。
「これくらいなら普通だよ?」
とはアカネ談。
俺の頼んだラージサイズの3倍の大きさはあろうハンバーグだ。
2人のそれはなんかもう、ただの肉の塊だ。
いやハンバーグ自体そうなんだけど。
アリスとイオの普通サイズが、めっちゃ小さく見える。
イオは自分の胸に手を当て、アカネの胸と見比べて「私もあれくらい食べないとですかね」と真顔で呟いた。
隣の俺とイオの向かいのアリスが盛大に吹き出し、またもや店員に怒られた。
店員さん、本当にごめんなさい。
ちなみにトニーとアカネは巨大な肉の塊を一瞬で食べ終えていた。
そんなはた迷惑な食事を終え、明日の組み合わせ抽選、明後日からの本戦が楽しみだという会話で盛り上がっている。
ちなみに食べ終わるなり追い出されるように会計をされたので、現在は外である。
まあ当然か。
「明日の抽選後、お誘い待ってるわね。」
とアリスに言われた。
次回はクノッサスでと約束してしまったし、コネの件の進展も聞きたいからちょうどいいか。
しばらく雑談をした後、解散となった。
クノッサスへと来たことによって、ようやく実感が出てきた。
明日からまたこの街はお祭り騒ぎのように賑やかになるのだ。
その祭りの中心は、俺たちアビスリンドでありたい。
そんな想いを胸に、皆で笑いながら宿へと戻った。
第4章「代表選抜編」~完~
拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願い致します!




