四十ノ舞「運命とは残酷だな」
サクのことが心配で急ぎ足でサクの下へ向かうと、アスカ先輩が腰掛けて自身に回復魔法をかけていた。
その隣で笑顔ですうすうと寝息をたてるサクを見てとりあえず一安心だ。
アスカ先輩に会釈をしてサクの隣に座ると、アスカ先輩から声をかけてきた。
「最後、変わり身の術を連発してくると決めつけてしまったよ。
今までと同じだと、実力の線引きをしてしまった。
まさか左腕を犠牲に突撃してくるとは思いもしなかった。
起きたら見事だったと伝えておいてくれないか。」
まもなく試合なのだが、それまでに起きてくれるだろうか。
一応「分かりました」と伝えるとアスカはフッと笑い、どこかに行ってしまった。
さて、この状況をどうしたものか。
現在壇上では、出番の2つ前の試合が始まったところだ。
特にすることもないので観戦しているのだが選抜メンバーの試合の後だからか、やはり少々物足りない。
かといってサクをまじまじと観察するのも申し訳ないし、完全に手持ち無沙汰だ。
そんなことを思っていると俺の心の叫びが届いたのか、サクが目を覚ました。
寝ぼけ眼で現状の確認をし、俺の姿を見てフリーズ。
数拍ののち目をカッと見開き顔を真っ赤にしていた。
「・・・寝顔見ました・・・よね?」
あまり見ないようにはしていたものの、様子を見に来たので見ていないわけではない。
「少しだけな」と答えると更に顔を赤くし顔を腕にうずめたものの、左肩の痛みで「痛ったー!!」と叫び声を上げて結局顔をあげていた。
そりゃレイピアがグッサリといったのだから痛いに決まってるだろうに。
とりあえず医務室に連れていくとしよう。
サクに肩を貸しつつ医務室に連れて行き回復魔法をかけてもらっているのだが、言い忘れていたことがあった。
「そういえばアスカ先輩が、見事だったと伝えてくれってさ。
代表決定おめでとう、サク。」
「ありがとうございます。ユウリ様もお待ちしてますね。」
姉さんのようにニヤリと笑うサクの頭をポンポンと叩き、自分の試合へと向かった。
アカネとサクに良い刺激を貰い、ヤル気は充分。
後は勝つだけだ。
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修練場の入口で、アカネが壁に寄りかかっていた。
顔を俯かせていつもの元気はなく、先程の試合を気にしているようだ。
「勝ったのにその顔は、シャルルにも失礼だぞ。」
短く言い肩を叩くと「ありがとう。」と短く返され、俯いたままどこかに歩いていった。
長引きそうだなと思いつつ、修練場へと入った。
「さて次の試合は全勝メンバーによる3枠目の代表決定戦!
1年選抜メンバーユウリ・アマハラ選手対、同じく1年トルティ・バルド選手!
まもなく試合開始です!!」
軽く身体を動かし壇上へ上がると、ショウヤのルームメイトが既にスタンバイしていた。
以前にシャルルと組んだタッグ戦での敗北の記憶が残っているのか、強ばった表情に加えて緊張でガチガチだ。
これじゃ試合にならないだろ。
申し訳ないが、助けてやる義理もない。
「時間が押しているので、試合時間は5分だ。
それまでに決着をつけろ。」
姉さんも同じことを思ったのだろうか。
後者は間違いなく俺に向けて言われた言葉だが、目では「5分も要らねぇだろ?」と言っている。
いやまあ、そうなんだけどさ。
やっぱり姉さんが審判だし、良いところ見せたいわけですよ。
前人未到の3連覇に弟として、尊敬する姉の記録に挑みたいわけでね。
だから、なんかもう少し代表決定戦の楽しみとかを味わわせてほし「試合開始!!」このクソ合法ロリがっ!!
「はああああっ!」
大きめの斧を振りかぶって突進してくるバルドさん。
たった今かなり機嫌悪くなったから八つ当たりするけど、ごめんな。
「アマハラ流無刀護身術─裂破掌」
『加速』で懐に潜り込み、その速度を活かした掌底突き。
思い切り鳩尾に掌底がめり込み、場外へ吹き飛んだ。
そのまま立ち上がれず、勝敗は決した。
「勝者ユウリ・アマハラ!」
「決まったー!!
女性を殴るという騎士としてあるまじき勝ち方は思うところはありますが、代表3人目はユウリ・アマハラ選手!
剣術だけでなく、なんと体術も一流でした!
この学園に勝てる人など居るのでしょうかー?!」
実況は公平であれよ。
女性だから殴らない、斬らないなんて逆に相手に失礼だろ。
壇上へ上がってきた以上、真の男女平等主義のもと闘ったまでだ。
戦場へ来た以上、相手は戦士なのだ。
男女平等顔面パンチをされても、なんらおかしいところはない。
爆笑している姉さんは、先の件も含めて後で説教しておこう。
そう心に誓い、修練場を後にした。
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闘いが続くこと数日、日に日に残る1つの枠を勝ち取る選手が限られてきていた。
残るは4人。
アスカ先輩、ダグラス先輩、イオ、そしてシャルロット。
全員が選抜メンバーであり、どの組み合わせになっても激戦となるだろう。
そして今日これから闘う、準決勝とも呼べる組み合わせが全校生徒に告知された。
「第1試合
ダグラス・ジャンVSイオン・フォン・アビステイン
第2試合
アスカ・ルギウスVSシャルロット・マリア・ヴァルローレン」
修練場の天井からぶら下がる4枚の黒板のような板に、画像で映し出されている。
サクとアカネと共に観戦に来ているのだが、アカネは未だに元気の無いままだ。
ダグラス先輩とシャルロットは初戦で闘っているので、組み合わせ的に避けるのは妥当だろう。
正直実力的にはイオが頭一つ抜けているとは思う。
使うつもりがあるかどうかは分からないが、他の3人が神話級魔法をなんとかできるビジョンが見えない。
もし使わないのであればアスカ先輩やシャルロットにも充分勝ち抜ける実力はあるだけに、楽しみで仕方ない。
ダグラス先輩はシャルロットに7秒で負けているようなら、申し訳ないがイオには勝てないだろう。
ほぼ全校生徒が見守る中、ダグラス先輩とイオが姿を現した。
ダグラス先輩は自身を応援する声に手を挙げて応えている。
意外と人気者なんだな。
対するイオは淡々としている。
丸メガネを外して、いつも通り壇上から離れた位置に置き杖を取る。
緊張している様子はないが、普段のニコニコしながらという表情でもない。
どちらかと言えば神話級魔法を使ったときのような真剣な表情だ。
「試合時間無制限、3ダウンで敗北。
それでは、試合開始!!」
「大地の盾」
開始早々のダグラス先輩の突進にも怯まず、イオは得意とする盾魔法を展開した。
3回のスーパーアーマーを無詠唱で何度も発動できるのは、やはり恐ろしいほどに厄介だ。
俺の連撃ですら防いでみせたその盾は、オートで攻撃を受けてくれるのでイオが動けるというのが最大の強みだ。
それを如何にして突破し、イオに到達するか。
対イオで必ず付きまとう課題だ。
ダグラス先輩は速度を落とすことなく、一気に接近した。
馬鹿でかい斧を縦に高速で回転させ、『大地の盾』を一瞬で全て砕いた。
そのまま回転させた斧を持ち直し、イオに向けて振り上げた瞬間。
「電撃」
ダグラス先輩が煙をあげながらドサリと倒れた。
「勝者、イオン・フォン・アビステイン!」
電撃の発動速度が日に日にあがってきている気がする。
近距離にも遠距離にも対応できるだろうし、中々に面倒だ。
再びイオと闘うことになったら、この前のようにはいかないかもしれない。
そして昼休憩を挟んで第2試合。
シャルロットがアスカ先輩を一太刀も浴びずに完封した。
シャルロットの実力も間違いなくかなり上昇している。
そんな2人が闘わなくてはならないのだ。
運命とは残酷だな。
翌日。
最後の椅子を賭け、シャルロットVSイオの試合が始まろうとしていた。
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めちゃくちゃヤル気あがります!
拙い作品ですが、最後まで見て頂けると嬉しいです!
今後ともよろしくお願い致します。




