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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第4章 代表選抜編

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三十八ノ舞「ごめんね。」


翌日午前11時、修練場。

超満員の生徒たちに見守られ、2人の生徒が壇上にあがっていた。


「さあ、いよいよ注目の一戦!

シャルロット・マリア・ヴァルローレン選手対アカネ・オオヒラ選手!

共に1年選抜メンバーとして新人戦を制し、同室の仲として学園生活を送る2人の闘いが今始まろうとしています!!

勝った方が個人戦選抜メンバー、一番乗りです!」


「3ダウンで敗北とする。

試合時間()()()、存分にやりな。」

急なルール変更にも眉ひとつ動かさない2人。

既に2人の頭の中では、闘いは始まっている。

互いに互いの技を知っているだけあり、対処法も恐らく考えているだろう。

その表情を見た審判である『神速の剣姫』は、ニヤリと笑みを浮かべた。

こんなにも楽しみな試合を、特等席で見れるのだ。

付与術(エンチャント)の弟子と剣の弟子。

どちらにも思い入れはあるからこそ、楽しみで仕方がない。


「それでは、試合開始!!」


「燃え盛れ、咲き誇る狐百合(レーヴァテイン)!!」


全身付与(エンチャントオール)速度上昇(スピードアップ)

全身付与(エンチャントオール)防御力上昇(タフネスアップ)

強化付与(エンチャントアームズ)筋力上昇(パワーアップ)。」


アカネは付与術、シャルロットは武器強化。

それぞれが得意とする戦法で開幕した。

全ての付与が完了した瞬間、アカネが一気に距離を詰めた。

「アマハラ流─七星宝刀(しちせいほうとう)!」

自ら斬り込む、高速の7連撃。

付与術のかかったアカネの速度は並大抵の守備力では、捌き切ることは不可能だろう。

シャルロットは7連撃の初撃を防ぎ、2撃目。

アカネの刀の柄の5センチ程上を剣の先で正確に突き、動きを止めた。

「止まって見えるよ、アカネ。

ユウの最終奥義の方が速かったわ。」


アカネはレーヴァテインの熱と、驚きに堪らず距離を取った。

剣を止められたことに驚いているわけではない。

言われた言葉に対しての驚きだった。

「ユウくんの最終奥義・・・?あの剣が見えたの?」

「ええ、見ちゃいけなかったかもしれないけど、間違いなく見えたわよ。」


アカネの動体視力を持ってしても、この世で見えない太刀筋の剣は2つ存在する。

1つは『神速の剣姫』による連撃。

初撃はなんとか追えるが、連撃となると脳が追いつかない。

そしてもう1つ、アマハラ流最終奥義『天地開闢(てんちかいびゃく)天地初発之時(あめつちはじめのとき)』。

こちらも見えないと言うよりは、認識ができない。

その圧倒的なまでの速さで、全てを斬る剣。

それが最終奥義、天地初発之時。

サムライが、無心で刀を何十年と振り続けて到達した神速の境地。

ユウリは『速度最大強化(ヘイスト・マキシマム)』を使用することでその神速を再現し、経験の差を埋めている。

それもユウリの剣の才能があってこそなのだが、今はそれは置いておこう。

問題なのは、シャルロットにそれが()()()ことだ。


『神速の剣姫』との稽古を繰り返すうちに、動体視力ではなく速度に対する脳の認識力に変化が出ていた。

簡単に言うと、速さに脳が慣れたのだ。

単純な守備力で言えば、アカネの方が数段上だ。

しかしアカネには未だ止められていない、ユウリの壱式を止め、神速の剣姫をも止めている。

速さへの対応の一点に関してだけは、シャルロットに軍配があがる。


アカネは驚きと戸惑いを覚えて汗を流しているものの、口元は笑っていた。

入学直後は自分が教える立場であった相手が、既にそこに居ないことを恐れると同時に喜んでいるのだ。

「新人戦の時も思ったけど、本当にこの学園に来て良かった。

わたしの知らない世界をどんどん教えてくれる!」

アカネのその言葉に、シャルロットもまたニヤリと笑っていた。

「同感ね。あなた達に会えて本当に良かったわ。」

「行くよ、シャルル!わたし、負けないから!

装備付与(ハイエンチャント)世界随一の銘刀(おおかねひら)。」

「アタシも負けるつもりはないわ!」

笑顔で向き合い、互いの実力を認め合う。

この先の学園生活で、間違いなく自分に立ちはだかるであろう相手だ。

負けたくないという一心で、互いに駆け出した。


「炎舞─不死鳥連弾(フェニックスショット)!」

シャルロットが横に剣を振ると7羽の炎の鳥が現れ、それぞれがアカネに向かい飛び立った。

アカネは距離を詰めつつ向かってくる不死鳥を次々と斬り落とす。

最後の1羽を斬り目の前が開けた瞬間、アカネは足を止めた。

シャルロットが()()()

「炎舞─陽炎の鎧(インビシブルアーマー)

不死鳥は場内の温度を上昇させるための布石かつ視線誘導(ミスディレクション)

風のない室内、上がった気温。

陽炎の条件を満たして姿を消すための囮だ。


「炎舞─飛翔竜剣(ドラゴンライズ)!!」

シャルロットの最大火力がアカネの左腕に直撃した。

場外まで飛ばされ、1ダウンにカウントされる。

付与術で防御力を上げていたおかげで軽い火傷程度で済んだものの、かなりのダメージだ。

しかし、負ける訳にはいかない。

アカネの目が、その気持ちを現していた。


試合が再開されてもなお、シャルロットの攻勢は続いた。

シャルロットが技を使う度に室内の温度はますます上昇していく。

アカネの体感はサウナのソレと変わらないだろう。

大粒の汗を流し、息を吸うのも辛そうな表情をしていた。

「炎舞─鬼火(ジャックランタン)!」

無数の大小異なる炎がアカネを囲み、1つ1つが消えたり燃えたりを繰り返す。

そのうちの1つをアカネが斬ると、ボウッと大きな炎をあげて消えた。

それぞれが着火装置のようなものなのだろう。

20個程度の鬼火に囲まれたアカネは、迂闊に身動きを取れずにいた。

そこにトドメと言わんばかりに飛翔竜剣が襲いかかった。


爆発ともとれる大きな音をあげ、鬼火もろともアカネに直撃。

なんとか剣を支えにして立つアカネだが、ところどころに傷を負い血まみれになっていた。

ユウリを含め、観ている誰もがシャルロットの勝ちだと確信していた。

アカネは顔を上げ、シャルロットを探しキョロキョロとしながら呟く。

「シャルル・・・ごめんね・・・。」

これから使おうとしている技は、ユウリにも見せたことはない。

本来は世界随一の銘刀(おおかねひら)自体、仲間に向けるものではないからだ。

しかし、それを使わなければ勝てないと判断した。

それ程までに今のシャルロットは強い。

謝罪の言葉と共に、アカネは剣を大上段に構えた。


「我は(なんじ)

悠久の時を経て、我、汝と共に歩み進む者也。

目指すは高み、天より高く。

立ち塞がりし美しき魂、貰い受けよう。

(はじまり)の剣─月花葬斬(げっかそうざん)


その飛ぶ斬撃は寸分の狂いもなく、見えていないはずのシャルロットに襲いかかった。

レーヴァテインで触れた瞬間に弾かれ胴に直撃、そのまま壁まで吹き飛ばされた。


「そこまで!!

これ以上の続行は危険と判断させてもらう!

勝者、アカネ・オオヒラ!」


その言葉と共にシャルロットに駆け寄り回復魔法をかけるミドリ。

「なんで・・・まだ、やれ・・・るの、に・・・」

大量の血を流し、意識を朦朧とさせながらも反抗するシャルロット。

それに対し、師匠は震えた声で答えた。


「こんなところで、大切な弟子を失ってたまるかよ。

後でいくらでも怒りをぶつけてもらって構わない。

ただこれ以上、アタシの前でお前が傷付くのを見ていられなかった。

私情が入ったらダメなのは分かってるんだがな・・・すまない。」


直後イオが駆けつけ最上級回復魔法で傷を塞ぎ、担架で医務室へ運ばれて行った。


アカネも力の限りを出し切った様子で、その場に座り込み動かないでいる。

俯いているがその目からは大粒の涙を流し「ごめんね」と繰り返し呟いていた。


超満員のはずの修練場は、完全に静まり返っていた。



拙い作品ですが、最後まで見て頂けると嬉しいです!

今後ともよろしくお願い致します。

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