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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第3章 学園交流編

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三十一ノ舞「次はクノッサスで」


翌朝、学園交流の最終日。

最終日というのに相も変わらず布団に潜り込んでいるアリス。

起こさずに布団から出るのも上手くなってしまった。

まあ、そんな無駄スキルの発動機会も今日が最後なのだが。


この交流中にやりたいと思っていたことは昨日までで全て終わってしまった。

咄嗟の思いつきで玖式(きゅうしき)まで完成し、トニーとの再戦も果たしたので今日はとにかく身体を休める日に充てたい。

学園も休日なのだが、さてなにをしたものか。

いざ何も無い休みが急に来ると、何をしていいか分からなくなるものだ。

普段の充実した日々のおかげだろうか。


何をするべきか考えながらリビングで座っていると、アリスが起きてきた。

普段は起きてくる前に朝食の準備を手伝っていたり外に出ているので、リビングに座っているとは思ってなかったようで、だいぶ無防備に大きな欠伸をしていたのを見られて落ち込んでいた。

「一生の不覚よ・・・もうお嫁に行くしかないわね。」

そこは普通行けないものなのじゃなかろうか。

遠回しに責任取れと言われているようなものだが、そこはスルーだ。

それを言ったらアカネに責任を取らなくてはならない回数など100や200じゃ済まないのだから。


「ところで、ダーリン。」

誰がダーリンだ。

コイツの脳内と、切り替えの早さはどうなっているんだ。

「せっかくの交流最終日なのだし、デートでもどうかしら?」

いつも通りの口調ではあるが、声と身体が若干震えていた。

かなりの緊張をし、勇気を振り絞って誘ってくれたみたいだ。

初めて男の人を好きになったと言っていたし、こういう誘いも初めてなのだろう。

特に決まったやることがあるわけでもないし、言葉は違えど某方並に「諦めんなよ!」と言ってしまった手前、断る訳にはいかないか。

「せっかくだし、行くか。」

それを聞いたアリスはパァァと嬉しそうな笑顔になり、「うん!!」とこれまた嬉しそうに答えた。

普段なクールな印象とは違い、とても可愛かった。



-----


デートに適した服装など全く分からず、とりあえず見た目が悪くない程度に適当に選び着替え、寮の外で待つことにした。

女性のこういう時は悩みに悩んで時間がかかるものかと思っていたのだが、すんなりと出てきた。

一応旅先だから、持ってくる服の量もそりゃ限られてるか。

白い長袖のニット、ピンクのシフォンスカートに身を包むアリスは、とても女の子らしく可愛い。

顔を赤らめ「どうかしら?」と緊張した顔で聞いてきたが、どうと言われても可愛いと綺麗しか言葉が出てこない。

自分の語彙力の皆無さに頭を抱えたくなる。

一言、「似合ってるぞ」と言ってごまかしておいた。



そのまま街まで話しながら一緒に歩いたのだが、特にしたいことがあるわけではないらしい。

ゆっくりと一緒に歩き、気になったものを見て回るのが良いそうだ。

シャルロットの時と同じ感じで良いのだろうか。


休日ということもあり、街は多くの人で賑わっていた。

露店が並ぶ大通りは特に人が多く、商売人の声が至るところから聞こえてくる。

「凄い人ね」とアリスも驚いていたが、何かを思いついた顔をしたと思ったら嬉しそうな顔で腕を組まれた。

昔アカネと遊びに行った時に手を繋いでたりはしたものの、それ以外ではこういった経験は全くない。

思わず緊張して身体が固くなってしまい、アリスも恥ずかしそうにしながらクスクスと笑っていた。

最初は歩きづらいと感じていたものの、慣れてしまえば問題ない。

それよりも感触の方が問題で、理性を保つのに必死だった。


しばらくは色んなお店を見て回り、お昼時ということで何か食べようとなったのだが、さすが休日と言うべきかどこのお店も行列ができていた。

こんなことなら昨日のうちにお弁当を作っておくべきだったとアリスが悔しがっているが、こればかりは仕方ないだろう。

アリスの手作り弁当は食べたかったけども。

結局お店に入り落ち着けたのは、もうしばらくウィンドウショッピングをした後になってしまった。


入ったお店はどこにでもあるような小洒落た喫茶店で、アリスは紅茶とパンケーキを、俺はコーヒーとサンドイッチをそれぞれ注文した。

街を歩いていた時もそうだったのだが、店内でも変わらずアリスは人目を集めていた。

美しい銀色の長い髪で、容姿端麗という言葉がピッタリだからな。

そんな女性を隣に連れて歩く俺にも嫉妬と殺意といった視線が降り注いでいるが、殺意を向けられる事など慣れているので特に気にはしていない。

そんなアリスも視線には気づいているものの今を楽しむことを最優先にしている様子で、常にニコニコしていた。

大したエスコートも出来ていないが、こんな楽しそうな笑顔をしてくれるのは嬉しいものだ。


食事一つとっても楽しいようで、パンケーキをより美味しく食べるにはこうするのよと色々と教えてくれた。

途中で「あーん」とかやりださないか心配だったが、さすがにそこは自重してくれた。

ちょっと残念だ。

会計時に全額払おうとした際に多少揉めかけたが「()()()半分ずつで」と言うと、頬に両手を当ててクネクネしていた。

反応がいちいち面白い。


飯も食べ終え、再び腕を組まれ街を歩いているとアリスが何やら見つけた。

引っ張られるがままに見てみると、「カップル限定!」という文字が目に入った。

わぁーとそちらに行きたそうな顔をしていたが、どこからどう見ても男の入りづらそうな店だ。

別に下着屋とかそういうのではないのだが、女子高校生たちに人気で写真を撮ってはしゃぎそうな感じと言えば分かるだろうか。

とにかく、男にはその楽しさが理解が出来なそうな感じのお店なのだ。


ということで正直なところ行きたくないのだが、それを言ってしまうとアリスは絶対に落ち込むだろう。

そこで思いついた言葉をアリスに叩きつけた。

「カップル()()ってことは、()()()()()()()って意味なんだな?」

この言葉で俺が言いたいことをきちんと理解してくれるか不安だったのだが、雷に打たれたような表情の後、涙目になりぶんぶん首を振るアリスを見て大丈夫だと確信した。

お付き合いしている男女()()()でいいんだな、と言いたいことをきちんと分かってくれたようだ。

こういう時、アリスの頭の良さと回転の早さが羨ましく思ってしまうが、なんにしても入らずに済みそうで良かった。

ちょっと意地悪だったかな。



その後は大きめのマジックショップに入った。

先程意地悪をしてしまったお詫びに、アリスの好きそうなところに連れてきたというわけだ。

ただブライデン王国と比べると、質や量も劣るのは事実。

そちらに慣れているアリスからすると見飽きたものばかりかと思えば、意外とそんなことはないらしい。

逆に見たことも無いものばかりだそうだ。

アンティークと言うには新しすぎるが、自分の産まれる前の物には興味が沸くといったところだろう。

同じものでもブライデン王国ではテーブルの片隅に置けそうな大きさなのに対し、アビステインのものは洗濯機程の大きさで驚いて笑っていた。

とにかく楽しそうにはしゃいでいるので、連れてきた甲斐があった。

店主と思われるお婆さんに新婚夫婦が新居で使うものを買いに来たのかと勘違いしたと見え見えのお世辞を言われたのだが、ここでもクネクネしていた。

この子は結構チョロいのかもしれないと不安になった。



大満足といった様子でマジックショップを後にしたところ、随分と長居していたようで日が落ち始めていた。

「あら、あまりにも楽しすぎて凄い長い時間を使ってしまったわね。ごめんなさい。」

そう謝るアリスは本当に申し訳なさそうにしていた。

楽しんでくれていたのだから謝ることなどないのに。

「大丈夫だよ。そろそろ帰ろうか。」

そう言って、手を差し伸べた。

アリスは満面の笑みで手を繋ぎ、嬉しそうに鼻歌を鳴らしていた。

たぶん俺の顔は真っ赤になっていることだろう。

それでも夕日のおかげで、あんまり見えないだろうけど。

ここに来た時よりも、歩き回っていた時よりも、ゆっくりとしたスピードで歩いて帰った。



今日が帰る日だと二人とも忘れていて、寮に到着するなりマジックギルドの引率の先生に本気で怒られた。

結局明日の朝出発に変更となったのだった。



-----


翌朝、本当にこれで最後となる潜り込みアリスの頭を撫でて起き上がった。

結局あのあとアカネとイオに正座で根掘り葉掘り聞かれたくらいで済んだ。

まあイオの目がめちゃくちゃ恐かったけど。

シャルロットは見かけなかったので、どこかでトレーニングでもしていたのだろう。

いつも通りイオ、アリス、トニーとの朝食を終え、見送るために学園の前に集まった。


「また個人戦でな!」

そう言われ、トニーと腕を組む。

次は負けんと意気込むトニーに、いつでも受けてやると返す。

どうせ来月には会えるのだ。

今生の別れというわけでもないので、これくらい軽くて良いだろう。


それぞれが挨拶を済ませ順番に馬車に乗り込んでいると、アリスが正面から飛び込んできた。

「昨日は本当に楽しかったわ。ありがとう。

一緒に怒られたのも、初めてのデートのいい思い出よ。」

そう言い笑顔を見せるアリスだが、やはりどこか寂しそうにしていた。

また来月には会えるというのに。

「次回はクノッサスだな。」

短く言うと、アリスは顔を赤らめた満面の笑顔で「うんっ!」と答えた。


アリスが馬車に乗り込むと、ゆっくりと出発していった。

アリスとトニーが窓から身を乗り出し、こちらに手を振っていた。

高そうな杖でそれぞれ頭を叩かれ引っ込められていて、アビスリンドのメンバーは全員が笑っていた。



今回の学園交流は大成功だっただろうと思いつつ、見送った。

2週間という短いような長い期間を終え、日常へと戻っていく。

ライバルたちとの充実した日々を過ごし、確実に互いに成長できたはずだ。


個人戦選抜メンバー決定の予選が、今日から始まる─

「それじゃあ全校朝礼だ。行くぞ。」


この2週間の成長を、存分に示そうじゃないか。

ユウリはそう決意しながら、姉に続いて歩くのだった。



第3章 学園交流編~完~


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