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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第3章 学園交流編

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二十八ノ舞「ぶち壊して掴み取れ」


 夢を見ていた。

自分ではない、誰か別の人の夢だ。


幼い頃から魔法の才能を開花させ周りからは天才だともてはやされ、その呼び名に相応しい程の努力も重ねていた。

正義感が強く、周りの期待に応えようと必死だった。

しかしある時、()は幼いながらも自分の魔法の限界に気づいてしまった。

上級までの魔法は全て覚えたにも関わらず最上級魔法の適正が一切なく、全く使用出来なかったのだ。

何が天才だ、と少女は毎日泣いた。

いつしか杖を持つことをやめ、部屋に閉じこもる日々が続いていた。


ある日、そんな彼女を見て居られなくなった父親が外に連れ出した。

普段から済む王都ではなく、地方へ連れ出ることで何かしらの変化を期待してのことだった。

そこで少女は一人の少年と出会い、護衛として雇うことになった。

その少年は助けてくれた少女のために強くなると宣言し、宣言通りの成長を見せた。

塞ぎ込んでいた少女もその少年に感化されたのか、また杖を取るようになった。

そして以前はしなかった魔法の理解を深めるための勉強も始めた。

その努力が実り、いつしか彼女は『全能』と呼ばれるようになっていた。

最初は嫌で堪らなかったその呼び名も、護衛の少年があまりにも喜んでくれるので徐々に受け入れることができた。

その二つ名を受け入れてもなお、最上級魔法は使用できなかった。

しかし彼女は二度は折れなかった。

もちろん悔しくて、情けなくて枕を涙で濡らす日もないわけではない。

それでもその名に相応しくあるために相応の努力を重ね続けた。

短縮詠唱を身に付け、人に魔法を教え、国で最高峰の魔法学院に首席で合格する程にまで成長を遂げた。


そんな魔法だらけであった彼女の人生だが、初めて恋をした。

自分と同じように過去に挫折を味わったかのような影がありながらも、まっすぐな目は自身の努力を信じている。

そして強敵にも怯まずに真っ向勝負でねじ伏せる彼に、憧れと同時に彼に寄り添って歩みたいと感じていた。



-----


目が覚めると、いつもは布団に潜り込んできているアリスの姿はなかった。

昨日寝る前にぼんやりとだが、潜り込んできた気はしたのだが。

なんにしても今日から始まる授業の準備が何一つ終わっていない。

少し寂しさを覚えながら起き上がるユウリだった。


普段朝食の時には眠そうにしながら起きてくるのだが今日は姿を表さず、その後も学園に登校すらしていないようだった。

アリスだけならともかく、トニーもだ。

他のマジックギルドのメンバーに聞いてみるも、特に何も知らないようだ。

しかしマリーナとジャックスは「たまにあるから気にしない方がいい」と言っていた。

俺よりも付き合いの長い二人がそう言うのなら、信じておこう。



放課後になり、サクとアカネに魔力の吸収について見てもらっていた。

印を結ぶのはだいぶ早くなったものの、そこに魔力を留めるというのはなかなかに難しい。

「ユウくんは既に吸収は出来てるはずだよ。」

アカネが笑顔でそんなことを言った。

サクも何かに気付いたのか、「あれですね!」とアカネに笑いかけていた。

あれとはなんだ。

アカネはともかく、サクも知っているとなると考えるべき範囲は絞れる。

アマハラ流の技は魔力はほとんど関係ないから違うだろう。

となると、剣の舞(ブレイドダンス)か?

魔力を使う技は特になかったはずだが・・・

「あっ」

あるじゃないか、1つだけ。身体中の魔力を一点集中させる技が。

「漆式か」

アカネとサクが頷いた。

「漆式で魔力の吸収と放出って流れをもう出来てるんだから、そんなに難しく考えなくて大丈夫だと思うよ。」

吸収させる対象が剣から印に変わっただけのことか。


アカネの教え方は昔からこうだ。

ヒントはくれるものの、自分で考えて答えを出させる。

分かりにくいと思ったこともあるが、全てはその人のためになると思ってそうしているのだろう。

アリスの説明もとても分かりやすかったが、アカネの教え方のほうが俺に合っていそうだ。

ともあれ、方法は理解出来た。

あとは実践あるのみ。


漆式のイメージをしながら魔力を流して手に吸収し、印を結ぶ。

この前のアリスが制御してくれた時のように強すぎず、弱すぎず。

印を結び終わったら吸収していた魔力を、一気に解放する─


ボンッ

音の方を向くと、またも鏡を見たような感覚だった。

1人で完璧に成功したのだ。

サクとアカネは自分のことのように喜んでくれていた。

あとはこれを2人、3人と増やしていけばいい。

徐々に、捌式完成が見えてきた。



-----シャルロット視点


「学園長、ユウの過去に何があったの?」

昨日のゾンビキマイラに遭遇した際のユウの取り乱し方は異常だった。

本人に聞くのは申し訳なかったので、こうして学園長室に聞きに来たのだ。

学園長である『神速の剣姫』は「お前もか」と一言漏らした。

も、という事は誰かが既に聞きに来たのだろう。

どこにも姿がないと聞いていたので、すぐにアリスとトニーだと察しがついた。

「良いだろう、話してやる。その代わり他言無用だ。」

その真剣な顔に釣られて思わず生唾を飲み込んでしまったが、頷きを返した。


「5年前、アタシが学園を卒業して就職した次の年の誕生日のことだ。

ちょうど盆の時期だから、爺さんに誕生日くらい帰ってきたらどうかと言われて帰ったんだ。

実家に着くとちょうど爺さんがユウが居ないと騒いでいてな。

アカネを脅・・・問い詰めてみると、アタシの好物だった山菜を取りに裏山に1人で行ったと言われたんだ。

その山菜は普段ユウやアカネが立ち入りを禁じられている危険なところにしか生えてないんだよ。

それを聞いたアタシは嫌な予感がしてすぐに飛び出した。


その予感は的中していてアタシがユウを見つけた時、ユウはゾンビキマイラを相手に全身血まみれで、まさにトドメの一撃が振り下ろされようとしていた。

風属性魔法を反射することは知っていたんだが、咄嗟にユウを助けるために『疾風一閃(でんこうせっか)』を放ちユウを飛ばすことには成功したんだが・・・

ゾンビキマイラにも風の刃が当たっちまって、反射されたそれがアタシの右腕を切り落としたんだ。

それを見たユウはガムシャラに、今では漆式となった剣でゾンビキマイラのコアを破壊した。


なんとか連れて帰ってユウを医者に見せると、二度と剣を振れないかもしれないと宣告された。

それでもアカネの献身的なリハビリフォローと、ユウ自身の努力で今に至るわけだが。

・・・アタシがあの日実家に帰らなければ、もしくはもっと早く着いていれば・・・ユウは今頃もっと凄い剣士になっていただろう。

もしかしたらアタシをも越えていたかもしれない。

ユウの未来を奪ってしまった、もしかしたら剣すらも奪ってしまっていたかもしれなかったんだ。

そう考えると、怖くて、申し訳なくて、夜も眠れねぇ。

全て、アタシが悪いんだ。」


話しにくかっただろうことを一気に話してくれた学園長は目に涙を浮かべ、とても辛そうな表情をしていた。


分からない。


自分でもなんでか分からないけど、無言で『神速の剣姫』の胸ぐらを思い切り掴んでいた。


「・・・申し訳ないってなによ・・・悪いって何よ?!

確かに立ち入り禁止されているところに行ったのはユウが悪かったかもしれない。

それでも、心から大好きなアンタのためを思ってとった行動でしょ?!

それなのになんで、帰らなければとか言えるのよ!!

今のユウを見ていて、アンタのことを家族として愛していることくらいアタシでも分かるわ!!

なんでそれを見て、アイツの愛を向けて貰えてる・・・アンタが・・・なんでそんな感想なのよ・・・」


気付けば大声で叫び、そして泣いていた。

アタシ、本っ当にガキだ。

そんなアタシの表情を見て学園長も涙を流しながら「すまない」と短く言葉を漏らした。

その言葉はアタシに向けてのものか、自分の発言に対してのものか。

アタシに言われるまでもなく分かっていると言うかのようなその言葉に、手を離した。


昨日のユウの「恐かった、無事で良かった」って言葉の意味がようやく分かった。

それだけでも聞いた価値はあったかな。

「申し訳ありませんでした。失礼します。」

頭を下げて謝罪し、学園長室を後にした。

けれどなぜか、涙はいつまでも止まらなかった。



-----ミドリ視点


まさか、人に胸ぐらを掴まれる日が来るとは。

これまで他人よりも(かぶ)いた人生を送ってきた自覚はあれど、誰もそんなことをしてくる奴は居なかった。

説教をされたのも何年振りだったかな。

学園に通ってた時にアイギスの盾に風魔法でイタズラをして、模擬戦直前のアイギスの制服を木っ端微塵にさせた時以来かもしれない。


他人のために、目上の人相手にあんな顔で怒れる奴はなかなか居ない。

そんなに他人を想いやれる心優しい女性に好意を寄せられているのだ。

そしてそんな女性だからこそ、ユウも・・・

姉として、最愛の弟の恋路を見守ってやろう。

「ユウ、お前は幸せ者だな。」

誰に聞かせるわけでもないその言葉は、この小さな身体に不釣り合いな広い部屋に寂しく響いた。



-----通常視点


「そういえば来週から個人戦出場選手を決める予選会がありますけど、サク先輩は出るんですか?」

分身の術の練習を見ていたアカネが、サクに質問をしていた。

予選会なんてあったのか。知らなかった。

「一応選抜メンバーですから、出ますよー。おふたりと当たらないことだけ祈ってます!」

手を止めて何の話だという顔をしていると、アカネが説明してくれた。


「個人戦出場選手は各学園で4人で、合計48人。

代表を決めるために、選抜メンバー全員と一般生徒の参加希望者で予選会があるんだよ。

成績が同じ生徒の中からランダムで対戦相手が決められて、上位4人が決まるまで繰り返されるシステムだね。」

要は勝ち続けていけばいいと。

分かりやすくていいじゃないか。

しかし相手がランダムで決まるというのは、だいぶ運の要素もある。

初戦でいきなり、共に新人戦を闘ったメンバーと相対することも有り得るということだ。

そして何より、出場選手枠は4。

個人戦というだけあり、あの5人全員で共に闘えるわけではない。

誰が勝ち上がるにしても、敗退するにしても、覚悟はしておかないとな。

その後何度か分身の術を成功させたところで、今日はお開きとなった。



寮の部屋に戻ると、そこにはアリスの姿があった。

「わたしさ、周りが思うほど強い人間じゃないのよ。」

アリスの目は赤く腫れ、先程まで泣いていたのだろうと容易に想像にできる顔をしていた。

「初めて男の人を好きになったのよ。

まあわたしの入る余地はなかったみたいだけどね。」

目に涙を浮かべ、寂しそうに微笑むアリス。

俺はただ、黙って彼女の言葉を聞いていた。

「この気持ちは忘れられそうにないけれど・・・

そっと胸の内にしまっておくことにするわ。」

そっとしまっておくと言うなら、そんな顔をしてほしくない。

悔しそうに唇を噛みながら涙を流すアリスに、思わず肩を掴み言葉を返していた。


「諦められない気持ちに言い訳をして情けないと思うのなら。

自分で作った枷のせいで押し通せないものがあるのなら。

その枷を全て壊してでも、欲しいものがあるのなら諦めずに掴み取ってみせろよ!!

アリス・ポーラン!!」


我ながら熱苦しい。こんなキャラじゃないはずなんだけどな。

アリスは驚いた顔で呆然としていたが、急に何かを決意したかのように真剣な目をした。


「カッコよくて真っ直ぐな、わたしの大好きなその眼差しで、なんでそういうこと言うかなあ・・・

本当に貴方、何に対しても真っ向勝負なのね。

ライバルも、自分の限界も、世間の常識も・・・

その全部をぶち壊して、不可能を奇跡にかえてみせろ、か。

上等よ!『全能』のアリスの名において、絶対に貴方を振り向かせてみせるわ!!」


覚悟しなさいよ、とアリスはいつもの不敵な笑みを浮かべるのだった。

大声を出したせいで皆が集まってきた。

集まった皆に向けてアリスは高々に宣言した。

「絶対にユウはわたしに振り向かせてみせるわ!

この覚悟に挑んでくるのなら、個人戦本戦で決着をつけましょう。

誰にも負けるつもりはないから!」


その自信満々な笑顔は、まるで姉さんを見ているかのようだった。



拙い作品ですが、よろしければ最後まで見てやってください。

よろしくお願い致します。

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