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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第3章 学園交流編

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二十六ノ舞「分身の術」


 マジックギルドの選抜メンバーが学園交流に来て5日目の朝。

このところ毎晩のように布団に潜り込んでくるアリスを起こさぬように布団を抜け出すのも上手くなってきた。

今日は雨が降っており、いつものトレーニングはできなそうだ。

そういう日に何が出来るかを考えたものの、まだ寝起きの頭ではうまく考えがまとまらない。

顔は洗ったが昨日のアカネとの模擬戦で疲れているのか、まだ眠い。

仕方ないので布団に戻ろう。

アリスから自分の布団を奪い取り、寝床についた。

「イオちゃん、寒い・・・」

アリスは夢の中でイオに氷魔法を使われているのだろうか。

そんな寝言をスルーしつつ、暖かい布団で眠りに落ちた。



再び目を覚ますと、アリスが布団に潜り込んでいた。

デジャブ!!

コイツはあれか、人の布団に潜り込まないと死んじゃう病なのか。

時計を見ると昼前を指していた。

休みとはいえ、ちょっと寝すぎたな。

ぼちぼち起きて身体を動かさないと、鈍ってしまう。

アリスを起こさないように抜け出し、起きていたトニーとイオに挨拶をした。


「ユウリさん、おはようございます。珍しく遅いですね。」

「昨日アカネと模擬戦をして、思ったより疲れたのかぐっすりだったよ。」

アカネもどんどん力をつけてるからな。

短い時間だったとはいえ、トレーニング後に闘うとこちらも疲労困憊だ。

サクも毎回審判ばかりさせて申し訳ないから、今度は一緒に鍛錬でも・・・ん、今何か閃いた気がする。

けど何を思いついたのかが分からない。

喉まで出かかっているのに出てこない感じだ。


思わずベランダに出て叫んでいた。

「サク!!居るか!!」

「はいな!」

ザッとすぐに横に現れたウチのシノビは、雨で濡れながらも近くで待機してくれていたようだ。

「それ以前に、ここ三階なんですけど・・・」

後ろから何事かと着いてきたイオが、サクの身体能力に驚きを隠せずにいた。

とりあえずサクにタオルを渡し、部屋の中へと招いた。


「それで、急にどうしました?」

タオルで一通り拭き終えたサクは、急な招集に驚いているようだった。

「さっきサクの事を考えた時に何かを思いついたんだが、出てこなくてな。

本人を前にして話してみたら分かるかと思って。」

サクは「なるほど」と一言言うと、何でもどうぞと言わんばかりに笑顔になった。

「シノビ、どんな技使えるんだ?」

トニーが興味津々と言った表情で質問していた。

サクは得意げな表情をしながら「シノビは手の内を明かさないものなのだよ」と答えていた。

「やっぱ、分身とかするのけ?」

「それだっ!!」

思わず大きな声を出していた。

アリスが起き出してくる程には大きな声だったらしい。

いやごめんて。


「それって、まさか分身ですか?」

サクが驚いた表情のまま聞いてきた。

「ああ、サクは分身できるか?できたら教えてほしいんだが。」

「オメが分身なんかしたら、誰が勝てんだ。」

姉さんなら『疾風一閃(でんこうせっか)』一発だと思うぞ、うん。

いや、分身が俺と同じ性能なら、あれも喰らわずに避けることもできるはずだ。

「えーっと、私で良ければお教えしますけど・・・

その、マジックギルドの方々の前でお話しして大丈夫な話なのですか?」

しまった。

最近ずっと一緒に居るからか、他校生ということを忘れていた。

「トニー、今の話は忘れろ。さもなくば再戦はなしだ。」

「オメが勝手に話したのに、そりゃないべ!」

ガーンと音が出そうなくらいショックを受けたような表情をするトニー。

まあ、再戦までに完成させておいてやるとしよう。

立ち聞きをしていたアリスが「ふふ」と笑っているが、お前も一応他校生だからな?



-----



新技の開発をするからと言い、サクと二人で修練場を訪れていた。

はずなのだが、何故か当然のようにアリスが着いてきていた。

「未来の旦那様のために、何か力になりたいと思うのは当然よ。」

「じゃあ新技開発のための秘密の特訓をしたいので寮で大人しくしててください。」

「秘密はないに越したことはないわ。」

こんなやり取りがあったのだが、「見聞きした内容は誰にも言わないとポーラン家に誓うわ」の一言を信用した。

サクは「旦那様は否定しないのですね」と笑っていたが、まだ将来の事など分からないからな。

自分の気持ちを考えてみたら、そんな未来も悪くは無いと思ったのは事実。

正直に生きることにしただけだ。



ひとまず捌式のイメージを説明し、そのために分身が出来ると理想的なこと。

可能であれば5人に分身、つまり分身を4つ作りたいということを説明した。

手始めにサクが分身の術をやってみせてくれた。

ボンと音を立てて現れたサクの分身は、どこからどう見てもサクそのものだった。

「すげぇな。どこから見てもサクだ。」

そんな俺の呟きに「そうでしょうとも」と気をよくしたのか、残り3人の分身を一気に作った。

それぞれが星型の先端部分のような配置に立ち、「イメージ的にはこんな感じですかねっ!」と言うとアリスが魔法で作り出し、中央に置かれたトニー人形を5人で一斉に斬った。


「そう、まさにそんな感じ。それ俺にも出来るかな?」

「どうでしょう?ユウリ様の忍術の才能次第ではあるかと思います。」

忍術の才能というか、魔法の才能はないんだよな。

ひとまず速度強化(ヘイスト)を発動し、分身の術を試しに習ってみよう。


忍術には(いん)というものがあり、それが魔術で言う詠唱の役割を果たしている。

魔力を印に流しながら、実際の効果をイメージしながら印を結ぶ。

これが忍術の基本なのだそうだ。

実際に印を教わってやってみたものの、ながら作業が多く魔法の才能がない俺にとっては非常に難しい。

印を結ぶのに集中しすぎると魔力供給が足りず、魔力供給をイメージしすぎると効果のイメージができなくなる。

と言った具合だ。


ボンッ─

「意外と難しいわね、これ。3人出すつもりだったのに。」

住所ブライデン王宮、職業マジックギルド学院所属学生兼自称嫁のアリスは、このように供述しており、あっさりと分身を作ることに成功していた。

他校生徒の忍術窃盗容疑だ。

というか、なんでこんなにもハイスペックなくせに俺のこと慕ってるのこの人。

他にもっと優良物件いくらでも居るだろうに。

「魔力制御の応用のイメージね。」

「さすがは全能と呼ばれているだけはあるなあ。」

サクも「マジっすか」みたいな顔で頬をかいていた。


「わたしが魔力を外から制御するから、ユウリさんは印を結ぶのと結果のイメージをしてみて。」

そう言って俺の両手首をそっと握り、目を瞑るアリス。

ひとまず手伝ってくれるというなら、やってみよう。

身体の中から手に向けて魔力を流す。

「やん、ちょっと強すぎ。もう少し優しくして?」

実験の段階なので、ゆっくりと印を結ぶ。そこに魔力を流し続ける。

「もうちょっと下よ。そう、そこ、ゆっくりゴツン(無言のヘッドバット)」

魔力を流しながらもこの印から分身を生み出すイメージをして、力を込める。

「ちょっと強いけど、制御はこんなもんかしらね!」

タンコブを作り涙目になりながら、アリスが印から外に魔力を放った。


ボンッ─

目を開くと、そこには俺が居た。鏡でも見たような感覚だ。

サクが「できたー!」と両手を上げ喜びの声をあげた。

感激のあまり分身と二人でアリスの手を握り「「ありがとうアリス!」」と手をぶんぶんと振ってしまった。

アリスの顔がみるみる赤くなり、「旦那様が二人・・・わたしはどうすれば」と言いながら頭から煙を出していた。

しかしそこは『全能』。即座に解を出した。

「はっ!!わたしも分身を出して二人ずつにしてしまえば、子どもが出来る速度もにば痛ったぁー!!!」

頭に向けて木刀を振り抜いた。

「ちょっ、今のトニーの肩を壊した伍式じゃないの?!嫁に向かってすることじゃないでしょ!!」

「誰が嫁だ!()()()()そういう関係じゃないんだから変なこと言ってる方が悪いだろ!」

「やん、今はまだなんて・・・うふ」

両手を赤らめた頬に当て嬉しそうにクネクネするアリス。

ダメだこいつ、早くなんとかしないと。

「ユウリ様の夫婦漫才のお相手が増え続けていることが、最近のサクの悩みです・・・」

ウチのシノビの憂鬱の種は今のところ尽きなそうだ。



気を取り直して、今度はアリスに魔力制御を教わっていた。

俺の速度強化(ヘイスト)とアカネの付与術(エンチャント)を例にして話してくれたので、とても分かりやすい。

俺の速度強化は魔力で雷を身体に纏わせて、常に魔力を放出していること。

対するアカネの付与術は魔力を自身に留まらせることで効果を発揮させていること。

これを放出と吸収と言うらしい。

放出の対義語は備蓄じゃなかったかと思いはしたが、確かにイメージで言うと出した魔力を自身で纏うのだから吸収と呼ぶのも理解できる。

つまりは攻撃魔法や、シャルロットのサラマンドラなんかは放出の魔法。

イオの大地の盾(アースシールド)は、放出したものを吸収と同時に行っているわけだ。

そして霊媒はおそらく、吸収の魔法だ。


そして今回やろうとしている分身は、印に魔力を吸収しそこから放出する作業が必要なのだそうだ。

確かにさっきアリスに手伝ってもらった時、自分の魔力が印に集まり、印の完成と共に魔力が外に出ていった感覚だった。

なるほど。

出来るかどうかはともかく、アリスの説明はとても分かりやすい。

アカネの説明よりも身近な人で例えてくれる分、理解がしやすいのだ。

ただ魔法を沢山使えるというだけでは『全能』は名乗れない。

魔法そのものを理解し、他人に教えることができなければ、その称号は与えられないだろう。

見た目は綺麗だけど口を開くと変態な残念な人かと思ってた。

どうやら俺が思ってたよりもずっと凄い人だったらしい。

お詫びに甘いものでも買ってあげるとしよう。


仕組みさえ分かれば、あとは反復練習あるのみだ。

反復練習に関してはアカネとの研鑽の結果で剣の舞(ブレイドダンス)が生まれているのだ。

むしろ得意分野だ。

あとは印を普段から練習することで、身体に動きを染み込ませる。

初日にしては、大きな進歩だ。

二人に心からの感謝と共に頭を深く下げ、三人で寮に戻った。

いつの間にか、雨はあがっていた。



-----



サクにお礼と別れを告げアリスと共に寮に戻ると、トニーとシャルロットが既に準備運動をしていた。

シャルロットのシャツに猫がお茶を飲みながら「働いたら負け」と書いてあるのだが、二人とも勤勉だこと。


いつものメンバーで、いつも通りのトレーニングをこなす。

シャルロットが二人を相手している間、座りながら印を練習した。

結構長いこと相手をしていたので、かなり練習することができた。

アリスが途中で俺が練習していることに気づきシャルロットにアドバイスをもらったりと、わざと引き伸ばしてくれたようだ。

帰り際に頭をポンポン叩きお礼を言うと、顔を真っ赤に染めて嬉しそうにしていた。

思いもよらぬ反応をされてドキッとしてしまったので、先を走ってごまかそう。



マジックギルドの面々のおかげで、ここ数日充実しすぎている。

捌式完成も時間の問題だろう。

残すはトニーとの再戦だ。

あれだけ楽しみにしてくれているのだ。

きちんと全力で闘えるように整えておかないとな。


明後日からは授業も始まるし、明日は依頼でも受けておくか。

そんな事を考えつつ、最高の学友(なかま)達と共に走って帰るのだった。



拙い作品ですが、よろしければ最後まで見てやってください。

よろしくお願い致します。

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