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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第3章 学園交流編

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二十三ノ舞「神威の秘密」


 朝の騒動の後、学園長室に両校の選抜メンバーとマジックギルド引率の教員、姉さんが集まっていた。

「アマハラ学園長、ウチのバカ共が到着早々お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。」

マジックギルドの教員は深深と頭を下げた。

50代くらいの女性だが、アリスの持つ杖と同じくらいか、それ以上の大きさの赤い水晶がついた立派な杖を持っていた。

見た目のか弱そうな印象とは裏腹に、相当な魔術師なのだろう。

実力を測れるわけではないので、あくまで勘だが。


「こちらこそ、バカな弟がバカで馬鹿にされてて申し訳ない。」

バカバカ言うな。同じ遺伝子のくせに。

というか今回の件に関しては、俺は悪くねぇっ!

そんな俺の反応を見たアリスがクスクスと笑っていた。

立派な杖で頭を小突かれていたけど。

クールな人だと思ってたけど、意外と馴染みやすそうな人なんだな。


「ひとまず長旅で疲れたと思いますし、今日はゆっくりされると良いでしょう。

余裕がある生徒にはウチの生徒を付けるので、学園内を見て回るといい。」

最初は珍しく丁寧な口調だと思っていたのに、段々普段の口調に戻る姉さん。

まあ実力で周りを黙らせてきた人だし、敬語とか苦手だもんな。

その姉さんの言葉で解散となり、イオとシャルロットと共にアリス、トニーを案内することになった。

この二人は、俺とイオの部屋に寝泊まりするらしい。

学園の一室とか貸し出したりしないのだろうかと考えたが、交流とはいえ他校の生徒を誰もいない校舎に泊まらせたりはしないか。

仲良くはするけど、過度な信頼はしないってところかな。


一通り校内の案内を終えた頃、アリスが普段どんなトレーニングをしているのかと聞いてきた。

魔法使いとしてイオに聞いているのかと思ったが、どうやら俺とシャルロットに聞いたらしい。

トニーも興味津々のようで、うんうんと大きく頷いていた。

言葉で説明するよりも一緒にしてみた方が理解も早いだろうということで、これから普段と同じトレーニングをすることになった。



一度寮に戻り、動きやすい格好に着替えた。

ついでに部屋の場所も教えられたので一石二鳥だ。

寮の出口で共に先に着替えさせてもらったトニーと準備運動をしていると、女性陣がやってきた。

アリスは長い銀髪をポニーテールにまとめ、白いシャツを脇腹のあたりで結んでいた。

目のやり場に困る格好だが、本人がそれが動きやすいと言うなら何も言うまい。

イオとシャルロットは上はTシャツ、下は学園指定のジャージだ。

イオのジャージ姿は久しぶりだな。


それぞれが軽く準備運動を済ませ、早速ランニングから始めた。

ランニングと言っても普段アカネと共に走る時のスピードなので、だいぶ早い。

最近ずっと一緒に走っているシャルロットと、歩幅が大きいトニーは着いてきているが、魔法使い二人はだいぶ離れてしまった。

こんなこともあろうかとイオには部屋で道なりを教えていたので、迷子の心配はしていないが、体力は心配だ。


目的地に到着してシャルロットと水分補給をしていると、少々遅れてトニーが到着した。

最初は悲鳴を上げていたシャルロットも、息はあげながらも同じスピードで着いてこれるようにまでなっている。

トニーは「オメら、早ぇなぁ」と言いながら息を整えていた。

次は筋力強化をするのだが、その前に久しぶりに座禅でも組んで精神統一でもしておこう。

地面に座り目を瞑る。

アビステインの海が見晴らせる場所なだけあり、火照った身体に浜風が気持ちいい。

三人並んで座禅を組んでいると、魔法使い組が肩で息をしながら到着した。

イオはギブアップとのことで、木陰で休んでもらうことにした。

アリスは肩で息をしながらも続行するようだ。

きっと、誰かさんに魔法戦で負けて悔しかったから、魔法以外も鍛えようとしているのだろう。



普段通りシャルロットと組み、腹筋、背筋、股関節の柔軟、体幹トレーニングを順番にこなしていく。

トニーとアリスも見よう見まねで着いてきた。

体幹トレーニングに関しては間違ったことをすると身体を痛めるので、コツを教えながら一緒に進めた。

トニーは流石と言うべきか筋トレに関しては自信があったようで、アリスに腹筋や背筋の際に力を入れる箇所も教えていた。

アリスのクールな表情が、疲労で歪んでいるのが心配だが、本人がやると言っているのだから尊重しよう。


続いて剣の素振りだ。

三本持ってきたスペアの木刀を全員に渡すと、トニーのだけ小さく見えるとアリスが言い出し、皆で笑った。

やっぱりこの人は結構馴染みやすい人だ。

ただ剣を振るのではなく、全身を使い真っ直ぐに振り下ろすように振る。

利き手にどうしても力が入りがちになるので、逆の手に力を入れるイメージでと教えると、普段剣を持たない二人も徐々に上手くなっていった。

シャルロットは普段振っている剣よりも軽い木刀だからか違和感があるようで、なかなかに苦労していた。

途中から自分の剣に持ち替えて、使いやすさにニッコリしていた。


最後に魔法なしの真剣勝負だ。

互いに体力、筋力共に疲労している時だからこそだ。

こういう時の実戦経験は、必ず戦闘で活きる。

ちなみに前回シャルロットと勝負した際、俺の『壱式』を止められた。

姉さん以外では初めてのことだ。

互いに魔法なしとはいえ、あの時のシャルロットの喜びようは目に焼き付いている。

まあ真剣勝負の最中にそんな隙を見せたシャルロットに面打ちをお見舞いしてやったけどな。


トニーとアリスも普段は剣を使わないが魔法を使わないアリスを殴る訳にもいかないので、全員が木刀を持ちシャルロットと二対一で闘うことになった。

トニーは最初は不服そうにしていたものの、シャルロットにあっさり一本取られると強者と認めたのか、楽しそうにしていた。

アリスは普段使わない近接武器に苦戦しているが、イオとの試合でも見せていた身のこなしの良さは健在で、三回に一回はシャルロットの攻撃を回避していた。

もっとも、一度もシャルロットに攻撃を当てれはしなかったが。


そんなこんなで周りもだいぶ暗くなってきたので、そろそろ切り上げようと声をかけると、アリスが大の字に倒れ息を切らしていた。

初めてでここまで着いてこれるとは思っていなかっただけに、正直驚いた。

俺はイオをトニーはアリスをそれぞれおぶり、来た時と同じくらいのペースで走って寮へと戻った。

アリスが「はいよー!トニー号!」と楽しそうにしていた。

今日一日で、物凄い印象が変わったな。



寮の前へと戻ると、ショウヤとマジックギルドの水色の髪の男が仲良さそうに話していた。

「ユーリ、シャルロット。ちょうど君たちを紹介しようと探してたんだ。」

姿を見るなりショウヤがそんな前フリをしてきた。

「こちら先程も話した、ユウリ・アマハラ。

サムライの孫で、学園長の弟君だ。」

紹介されたのでとりあえず会釈をしておく。

トニーが「えっ、そうなの?」みたいな顔をしているが、今はスルーしておこう。


「こちらはシャルロット・マリア・ヴァルローレン。

あー、直接闘ったから知っているか。」

シャルロットも無作法に会釈をしていた。

そんな俺たちの失礼な態度に怒ることもなく、ニコニコとしている。

ショウヤはコホンと咳払いをした後、その正体を告げた。


「こちらはマジックギルドのあるブライデン王国第二王子、ジャックス・ケイト・ブライデン様だ。」

「げっ」

王子様だったのか。

それでショウヤと仲良く話していたのね。

そして正体を聞くなりその反応はどうなのシャルロットさん。

そんなシャルロットは真っ青な顔で俺のシャツをクイクイと引っ張ってきた。

「ユウ、どうしよう・・・アタシ、王子様の左腕と杖、燃やしちゃった。」

今にも泣き出しそうな声で言うシャルロットに、アリスとジャックスが笑い声をあげた。

アリスはシャルロットに抱きつき「いいなあ、可愛いなあ」と撫でくりまわした。

「あれは戦闘での事故だから気にしないで大丈夫ですよ。

僕が貴女よりも弱かった。ただそれだけのことです。」

ジャックス王子はにこやかに元通りの左腕を見せながら言うと、俺の方へと向いた。


「それよりも気になるのは、君のあの移動法だね。

魔法が他国より30年進んでいると言われている我がブライデン王国でも、君ほどの魔法を使える者は片手で数えるくらいしか居ないんだよ。」

今朝も思ったが、魔法を使えるとか言われても困る。

こちとら身体強化とパッシブの武器強化しか使えないのだ。

・・・と言いたいところだが、これに関してはさすがマジックギルドと言うべきだろうか。

ジジイには一発でバレたが、姉さんにはバレずに済んでいたんだけどな。



普段から姉さんが使っている『神威』は完璧なもので、衣服の乱れなど起こすはずもない。

しかし俺が使えるソレは、完璧とは程遠い。

移動できる最大距離も短く、速く動こうとするため衣服も乱れる。

何度も繰り返し練習しても全く完成には至らなかったのだ。


そこでアカネと共に頭を悩まし、出した結論が「同じスピードで動けばいい」という、なんとも短絡的な答えだった。

単純に今まで一歩で動こうとしていた距離を、同じ速度で二歩で移動してしまえば経過はともかく結果は変わらない。

そう考えた俺たちは、図書館などで「脚を速く動かすための方法」を探した。

その結果、股関節の柔らかさが必要だということや、走る時の脚のあげ方等、いくつかの方法を知ることができた。

あとは実践あるのみだった。

股関節を柔らかくするための柔軟から初め、日々のランニングで脚のあげ方を意識しながら走る。

その成果として、ランニングと言えるのか分からないスピードでの走り込みが出来上がってしまったのだが、それは一旦置いておこう。


つまるところ、脚を速くあげ、速く下ろす。

これが大事なのだ。

それは速度強化(ヘイスト)で補ってしまえばいい。

あとは日々のトレーニングでそれに必要な筋力の強化と、速く動かす正しい方法さえ身体に染み込ませれば良いだけの話だ。

その成果は二年半後、俺の未完成だった『神威』をソレと同じ速度かそれ以上で移動する方法へと進化させた。

言葉で表すと、初動に縮地法の原理を使用した速度強化による超スピードのダッシュである。

ちょっと何言ってるか分からなくなってきたが、それが俺の移動法なのだ。

ジジイや姉さんが使っているのはあくまで縮地法で、それを剣術に応用させたもの。

初動の原理は同じでも、これは全くの別物だ。


オリジナルにはない利点として、小回りがきく。

オリジナルが一歩の距離を、こちらは二歩ないし三歩脚を動かす。

故に細かな角度や軌道の修正ができる。

欠点として、持続時間が短い。

二倍、三倍と脚を動かすのだから、言うまでもなく疲れるのだ。

言うなれば『神威』ではなく、『加速(ブースト)』の方が合っているかもしれない。



股関節の可動域の差だったり、脚の正しいあげ方を知らないか、筋力が足りていないか。そもそも速度強化のこんな使い方を思いつかなかったのか。

ジジイをもってしても出来なかったのは、この辺りが原因だろう。

それに『神威』は完成された技だ。

そこに何かを足すというのは、俺の未完成だったものをアレンジすることより難しいだろう。

しかしそれをわざわざ説明する程、俺もできた人間ではない。

これを完成させるまでに二年半かかったのだ。

その苦労を知らない人間が、理解しただけで使えるようになりました。

なんて、嫌だからな。


ちなみにこれを入学前の魔術試験で披露したものの、原理を理解されず0点となってしまった。

マジックギルドでの試験であれば反応を見る限りかなり上位に食い込めた気がするのだが、それは言っても仕方の無い話だ。

剣術で一位を取れたのだから、それで文句はない。



話が脱線したが、答えておかないとだな。

「俺が使っている魔法はあくまで速度強化(ヘイスト)だよ。

使()()()にアレンジはあれど、それは変わりません。

なので凄い魔法を使っているかのような言い方は間違いですよ。」

それを聞いたジャックスは「なるほど」と何かを考えるように顎に手をあてている。

先程までシャルロットをもみくちゃにしていたアリスが、俺の手を両手で握ってきた。

「それでも、魔法の使い方は一つじゃないという可能性を教えてくれたことに変わりはないわ!

ああ、本当にアビスリンドに来て良かった!

改めまして、ブライデン王国宮廷魔術師プラグニス・ポーランの長女、アリスよ。

貴方とは是非とも仲良くしたいわ!」

そう言って目を輝かせ握った手をブンブン振るアリスだったが、シャルロットが横からペシンと叩き、その手を離させた。

シャルロットの不機嫌そうな顔を見たアリスが続けた。

「あら、貴方たちお付き合いされているの?」

「ししし、してないわよ!!」

顔を真っ赤にしながら反論するシャルロットに、アリスは笑顔で油を注いだ。


「なら、わたしがアプローチしても問題ないじゃないの。」

最近人生に何度か来るという、モテ期が来たんじゃなかろうか。

そんな期待に胸を膨らませた俺に、続くジャックスの言葉が現実を突きつけた。


「将来的にブライデン王国に招待したいと思っていてね。

アリスと僕は、有能な人材に声をかけて回っているというわけさ。」


あっはい。

そんなことだろうとは思ったよ。

・・・ちくしょう。



拙い作品ですが、よろしければ最後まで見てやってください。

よろしくお願い致します。

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