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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第2章 新人戦編

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十三ノ舞「可愛い女の子には勝てない」


 翌日、偵察に向かうショーヤとサクを見送り部屋に戻ると、シャルロットがなにやら考え込んでいた。

イオは昨日回復魔法をめちゃくちゃ使った上に遅くまで姉さんに振り回されていたため、泥のように眠っている。

邪魔をしないように軽く外を走ってこようと踵を返したところで、シャルロットに呼び止められた。


「ねぇ、ユウ。自分と同格以上の相手と対峙して自分が不利と悟った時、どう立ち回るのが正解なのかな?」


珍しく髪を下ろしているシャルロットは顎に左手をあて、難しい顔をしている。

ポニーテールよりそっちの方が似合うとか言えば喜ぶだろうか。


昨日の試合の事は打ち上げの席で聞いた。

なりふり構わず、信頼に応えたいという一心で突っ込んでいたらしい。

それが相手に大技を使用させ、隙を作ることに成功した。


だが、この闘い方ではシャルロット自身は何も成長できていない。

その事に自分で気付いたからこそ、こうして午前中の間ずっと頭を悩ませているのだ。


シャルロットは自身の勝利にも慢心したりはせず、勝利でも敗北でも一戦一戦頭を使い考え続けてきたからこそ、今の強さをもっているのだろう。

それは過去の自分と重なる部分がある。

サムライと呼ばれる祖父や、『神速の剣姫』と呼ばれる姉さんからなんとか一本取るために努力をし、頭を悩ませていた事が懐かしい。

いつの間にか、初心を忘れてしまっていたようだ。


話が脱線したな。

不利と感じてもどうにかするしかないのであれば、とにかく攻める方が良いのではないだろうか。

守りに入ってもジリ貧になるだけだしな。

相手に攻める手を与えないほど攻め続ける。

たぶん、俺ならそうする。


「なるほどね・・・じゃあ今回はあながち間違えてなかったのね。」

うーん、と天井に目をやりながら考えるシャルロット。

こういう姿勢は学ばないといけないな。

俺も実家に居た頃はアカネとあれだこれだ言いながら意見を交わしていた。

今ならアカネ以外にも話せる相手が居る。

この環境に感謝しないとだな。


ふと時計を見ると、12時を回っていた。

腹が減るわけだ。

イオはまだ起きる気配がないので、そっとしておこう。


飯でも行くかとシャルロットに尋ねると、起きてから何も食べていなかったようで、ハッとした顔でお腹を抑えながら立ち上がった。

ゆっくり食べて、ショーヤ達の帰りを待つとしよう。



姉さんにシャルロットと飯に行ってくると伝えると何を勘違いしたのか、ニヤニヤしながら金貨3枚を渡された。

ちなみに銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚だ。

昨日大金を得たからとはいえ、財布のひもが緩すぎるだろう・・・



シャルロットの希望で、宿の飯ではなく外に行くことになった。

クノッサスのある中央地方では小麦の生産量が高く、パンが主食なのだそうだ。

アビスリンドのように周りに海があるわけではないので、魚類は多く出回っていない。

どちらかと言うと西部との流通が盛んなので、そちらの名産の肉や野菜の方が多いのだ。


俺はイオが色々と作ってくれているおかげで栄養バランスは完璧なはずだ。

アカネも実は料理の腕はめちゃくちゃ高い。

なのでシャルロットもそれなりの物を食べているだろう。

肉やジャンクな物が食べたくなるお年頃なだけに、そういったお店ばかりに目が行ってしまうのだが、今はシャルロットも居るのだ。

サンドウィッチとかのお店が妥当だろう。



普段と違い髪を下ろし白いフリフリのついた服を揺らしながら、楽しそうな顔で色々なお店に目を輝かせているシャルロットに付き添い、ゆっくりと散策。

いつもツンツンしているイメージだからか、年相応な反応は新鮮だ。

にしては多少はしゃぎすぎだが、まぁ良しとしよう。

少し先に目当てのサンドウィッチが看板に書いてあるお店を見つけ、そこに入ることにした。


中に入るなり、パンや肉を焼いた香ばしい匂いに腹がなった。

看板娘だろうか、にこやかな女性に2名と伝えると、すぐに案内された。

店は20席もない小さなお店で、俺たちが案内された席以外は埋まっている。

お昼時で待ち時間もなく座れるとはラッキーだ。

シャルロットの向かいに座ると、既にメニューを広げて何にしようかと目を輝かせていた。


普通のサンドウィッチだけかと思っていたのだが、ホットサンドもあるのか。

チーズにトマト、鶏肉が入っているらしく、銅貨3枚なのに量もあって素晴らしい。

これにしよう。


シャルロットはタマゴサンドと野菜サンドが入ったヘルシーな物を選んだ。

肉のイメージがあったのだが、さすが女の子といったところか。


ご機嫌に鼻歌を鳴らしながら、可愛い笑顔で肩を揺らして待つシャルロットを横目に見つつ店内を見渡すと、見知った顔が居た。

見知ったというか、昨日闘った顔だ。

思いっきりこっちを睨んでいるところに目が合ってしまった。


えーと、名前忘れた。

副将の女の子と、大将のチャラ男だ。

てっきり昨日のうちに帰ってると思ってたけど、こんなところでデートだろうか。


あれ、ということは今の俺たちもそう思われてるのか?

視線をシャルロットに向けるも、まだ気付いていなそうで上機嫌だ。

まぁこの楽しそうな笑顔を見れるならそれでもいいか。

と思っていると向こうから話しかけてきた。


「私達に勝った翌日にこんなところでデートなんて、浮かれすぎじゃないかしら。」


シャルロットの動きがピタリと止まり顔を徐々に赤く染め、「アンタには関係ないでしょ」と言いながら外を向いた。

今日は身体を休める日と決めたしな。

どう使おうが俺たちの自由だ。


そもそもオタクらも負けた翌日にデートしてる身だろう。

俺たちに色々言ってこれるような行動はしていない。

というか公共の場で突っかかってくるような小物に興味もない。

どこぞの世紀末のように、髪型はモヒカンの方が似合うと思うぞ。


「その調子じゃ、次のマジックギルドに負けて終わりだな。

今年のマジックギルド(やつら)は全員が上級魔法を短縮詠唱で打てるって噂だぜ。

お前らの()()ここまでだな。」


言いつつシャルロットの肩に手を乗せるチャラ男。

シャルロットは驚いたのか身体をビクンと震わせ、振り払った。

彼女の前で堂々と他の女の子に触れるとは、コイツ本当にチャラいな。


というか負けたのは運のせいってか。

実力のうちという言葉もあるくらいだ。

運を味方につけれなかった時点で、その実力はたかが知れてるな。

などとは思っても言わずに無言で居ると、飽きたのか舌打ちをして出ていった。

何がしたかったんだろう。


「この借りは個人戦で必ず。」

女の方はシャルロットに言い残し、出ていった。

外を向いたまま「楽しみにしてるわ」と一言返したのは、2人が店を出ていった後だった。



それにしても、短縮詠唱で上級魔法か。

しかも全員がって。

まあショーヤとサクがその辺の詳しい情報を持って帰ってきてくれるだろう。

今は今、ということで到着したサンドウィッチを食べるとしよう。


シャルロットはサンドウィッチが思っていたよりも大きかったようで、両手で持ちリスのように食べていた。

アカネと同じくらい幸せそうな顔をして食べるのな。

とてもお気に召したのか、たまごサンドを3つ持ち帰りで注文していた。

イオとアカネと一緒に食べるそうだ。

いつもの、ひょああああ!!!で落とさないようにな。



帰り道、上機嫌のシャルロットにいつもの髪留めはどうしたのか聞いてみた。

どうやら昨日の試合中に、自分の炎でダメにしてしまったのを寝る前に気付いたらしい。

お気に入りだったんだけどね、と寂しそうな笑顔をされた。

この辺りは雑貨や装備を売っているお店もあるから、帰りがてら見ていこう。

耐熱の髪飾りとか、マジックアイテムでないだろうか。



それっぽいものを売ってるお店を見つけ、呼び止めた。

「どうしたの?」と駆け寄ってきたシャルロットに新しい髪留めを買ってやると言うと、「ホント?」ととても嬉しそうな顔をしてくれた。


昨日の今日でアレだけど、シャルロットの楽しい時や嬉しい時の顔を見てるとドキッとしてしまう。

いつもツンツンしてる釣り目なイメージなので、ギャップ萌えというやつだろうか。

なんか違うか。

元々イオに負けず劣らず綺麗な顔をしているのだから、仕方ないだろう。

何が仕方ないかと言われると返答に困るが、まあ俺も男なので。

男とは、可愛い女の子には勝てない生き物なのだ。



店内には多くの品が並んでおり、種類も様々だ。

女性用の髪留めから、剣を握りやすくするためのグローブ、装備に付けるアクセサリーなど、雑貨屋と呼ぶに相応しいだろう。


しばらく店内を物色していたシャルロットの動きが急に止まった。

その視線の先を見ると、青白く輝く大きな蝶の形をした髪飾りだった。

店主曰く、周りのものより数段値段が高いのはマジックアイテムを加工して作られたものだからだそうだ。

なんでも、いかなる魔法の効果を受けない髪飾りらしい。

その代わり衝撃には弱いから気を付けるように、とのことだ。

こんなにあっさり目当てのものが見つかるとは思わなかった。


値段を見たシャルロットは落ち込んだ表情になった。

高くて買えないと思ったのだろうか。

確かに他のものにすれば、高くても銀貨1~3枚程度のものが並んでいるお店だ。

無理して高いものを買わなくてもいいだろう。

だが、装飾品に疎い俺でもその蝶の髪飾りは綺麗に見えた。

なによりシャルロットの赤い髪に似合いそうだ。

いつも身に着けるものなのだから、自身が気に入ったものがベストだろう。


オヤジさんに(ソレ)が欲しいと伝えるとシャルロットが慌てて止めに入ったが、姉さんから小遣いをもらったことを伝えると、しぶしぶ納得してくれた。


値段は金貨2枚だったが、金貨1枚と銀貨80枚まで値下げしてくれた。

彼女へのプレゼントなら、という理由で。

すまんなオヤジさん。彼女ではないが甘えさせてもらおう。


姉さんはここまで見越して金貨3枚渡してきたのだろうか。

頭が上がらないな。下げても俺の方が顔の位置高いけど。

いつも陰ながら支えてくれているサクにも何か買っていこうと店内を物色。

桜の花びらの刺繡が入った黒い小物入れを見つけ、それを一緒に購入した。



ところで髪留めではなく髪飾りなのだが、良いのだろうか。

いつものポニーテールにはできず、少し流した髪をまとめる程度になってしまうのだが。

聞いてみたところ、それはそれ、だそうだ。


それでいいのかと思っていたのだが

「ユウ、本当にありがとう!大切にするね!」

と満面の笑みで言われては返す言葉もなかった。



早速付けて帰るとのことでますます上機嫌になったシャルロットと店を出ると、ショーヤとサクの姿が遠目に見えた。

ちょうど寮に戻るところだったらしい。

合流するなり髪飾りが新しくなっていることに気付いたショーヤに、ニヒヒと嬉しそうに笑いながら自慢するシャルロット。

それを後ろから見ながらサクと並んで歩いていると、サクが声をかけてきた。


「いつもは陰ながら見ているだけなので、こうして並んで歩くのは新鮮ですね。」

気配には気付けないが、いつも近くで見てくれているのだろう。

その感謝の気持ちを込めたプレゼントの袋を渡すと、サクもまたとても嬉しそうな顔をするのだった。

女の子はプレゼントを喜ぶのか。覚えておこう。


後でシャルロットが変な声を上げてたまごサンドの袋を落とすだろうから、それを地面に落とさないようにしてくれとも伝えておいた。



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 部屋に戻りいつもの『凍える風(フリーズ)』ひょああああ!!!を見た後しばらくして、全員がこちらの部屋に集まった。

ちなみにたまごサンドが入った袋は案の定落下したが、サクが残像が見えるくらいの移動速度で空中でキャッチしたので無事だった。

思わずイオと共に拍手してしまった。


全員がどこかしらに腰かけたのを確認し、ショーヤが切り出した。

「対戦相手はイーストテイン学園相手に5-0の完封で、案の定マジックギルドだ。

4人は短縮詠唱の上級魔法を使っていたけど、大将は疑獣化の魔法を使って近接戦闘をして相手を圧倒していたよ。」


疑獣化って虎とかに変身でもしたのだろうか。

確かに強そうだ。

「たぶん勘違いしてるから念のために言っておくが、見た目は人のまま獣・・・白狼(ホワイトウルフ)と言っていたかな。

その身体能力を得る、という方が近いと思う。

耳や爪なんかも出てきていたから、御伽話の獣人なんかのイメージをしてもらった方がいいかもしれないね。」


チャラ男の言っていたように短縮詠唱ができるメンバーに加えて、そんな変わり種も居るのか。

帰り際に今年はマジックギルドだろうと噂が聞こえてきていたが、あながち出まかせというわけではなさそうだ。



今回アカネは休ませるとして、4人でどういったオーダーを組むか。

普通であれば先鋒、中堅、大将は絶対に落としたくないものだ。

先鋒で勝ち勢いに乗りたい、中堅では連敗で迎えた場合3連敗を阻止したい、大将は2勝2敗でチームの命運がかかっている。

その各所にエース級の人材を割くのが普通の組み方だ。


万が一のために大将にはショーヤに入ってもらうのが良いだろうか。

だがそうすると俺とシャルロットが2人とも負けてしまった場合は、ショーヤに回らずその時点で敗北が決定してしまう。


それであれば次鋒と副将に俺とシャルロットが入り、先鋒と中堅にショーヤとイオを置く。

大将には回さず、3試合か4試合で決めに行く布陣。

こちらの方が良さそうだ。


対戦相手5人の特徴を聞き、全員でああでもない、こうでもないと話し合った結果、明日のオーダーが決まった。

明日も安静にしていなくてはいけないアカネはむぅ、とつまらなそうな顔をしていたが。

最近あまり構ってあげれてないし、今度時間を作って話でもしよう。



今日はこれで解散、自由時間になるそうだ。

ひとまず部屋を出てゆっくりしようとしたところでニヤニヤしている姉さんに捕まった。

シャルロットと出かけて、どうだったのかと聞きたいのだろうか。

別にどうもこうもないのだが、小遣いのお礼は言わないといけないな。

そう思いつつ引きずられるままに宿の階段を降り、直結の飯屋に到着したところで久しぶりに聞く声に呼び止められた。


「よっ、ユウリ、ミドリ。」


背は俺とあまり変わらないが身体はガッシリしていて、高そうな剣に片手用の大盾、肘と膝にプロテクターを付けた、いかにも冒険者という中年の男だ。

S級以上の冒険者しか身に付けられない金色のプレートが首飾りのようにぶら下げられている。

あれがあれば色々な恩恵があると前に聞いたことがある。


その少し後ろに、男と同じような冒険者風の装備に身を包んだ黒髪の姉さんが居た。

相変わらず髪の色が違うだけで、それ以外では本当に見分けがつかない程そっくりなのだ。

瓜二つとはこのことを言うのだろう。



そこには5年ぶりに再会した、父さんと母さんの姿があった。



拙い作品ですが、よろしければ最後まで見てやってください。

よろしくお願い致します!

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