十二ノ舞「ねぇ今どんな気持ち?」
ボンッ──
「ぎゃあああああああああ!う、腕、腕が!」
「これはどういうことでしょう!
中堅戦開始早々、魔法の詠唱を始めたノースリンドブルムのブリドー選手!
その瞬間、ブリドー選手の両腕が吹き飛びました!
さすがにこれは続行不可能・・・っと、今判断されましたね。
勝者はアビスリンド、ショーヤ選手です!」
「魔力の逆流・・・であるか?
これを意図してやったのであれば、非常に危険な能力なのである。」
ショーヤは対戦相手の方を見もせず、不機嫌そうな顔をしながら戻ってきた。
----- 10日前
「よってアビステイン兄。
今後魔力を逆流させるための『魔力干渉』の発動を禁止する。」
姉さんがショーヤに制限をつけた。
当然と言えば当然だ。
逆流は下手をすれば相手の命を奪いかねない。
真っ青な顔をしながらも、真剣な面持ちでショーヤが口を開いた。
「学園長、2つ条件を頂けないでしょうか。」
「なんだ、言ってみろ。」
「1つ目は、自分の命が危険に晒されたときです。
立場上、簡単に命を落とすわけにもいかないので。」
「・・・分かった。では、2つ目は?」
「大切なものを、笑われた時。」
俺はその時、ショーヤが誰かを睨むのを初めて見た。
-----
後からイオに聞いた話だが、アビステイン家は仲間との絆を何よりも大事にする家系らしい。
それならばイオの扱いについて思うことはあるが、それはまた別の話だ。
仲間を守り、仲間と共に戦場を翔け、仲間と共に戦に勝ってきた過去がある。
それ故に他の国と比べると仲間意識が人一倍強い、とのことだ。
当然ながら、ショーヤやイオにもその教えは幼い頃から叩き込まれている。
イオ曰く、大切な仲間を作るために学園に来たんだそうだ。
そんなショーヤが、アカネを笑った奴らを許すわけがなかった。
「逆流操作の気分はどうだ、アビステイン兄。」
不機嫌そうに壁にもたれかかり、ドカッと座ったショーヤに姉さんが声をかけた。
ショーヤは顔をあげず、そのまま答える。
「気分は最悪ですね。仲間を笑った奴らに同情の余地なしと思ってはいるのですが・・・
自分がここまで冷徹な判断をするとは、正直自分でも驚いています。」
姉さんはフッと笑い、何も言わずにショーヤの頭を撫でた。
撫でるといっても、グリグリと下を向いてしまうくらいには強かった。
まるで悔しそうな表情をするショーヤの顔を、他人に見せないようにするかのように。
「傷は塞がりましたが・・・出血の量が多すぎますね。
正直なところ、3日間は絶対安静が必要です。」
アカネに回復魔法をかけていたイオが、疲れた顔をしていた。
礼を言い、イオの頭を撫でる。
3日間か・・・明後日の準決勝は4人で闘わなくてはならないのか。
アビステイン兄妹で2勝は確実にとれるとして、シャルロットか俺で1勝しないとだな。
魔法使いタイプ苦手なんだよな。
そんなことを考えながら撫で続けていたら、イオの顔が真っ赤になっていた。
しまった、つい撫でやすい身長差だから無意識に続けてしまった。
「さて、行ってくるわ。」
イオを撫でている間に、副将戦メンバーの召集がかかったらしい。
シャルロットが立ち上がり、俺に向けて腕を伸ばしてきた。
「アップしてきなさい。必ずアンタに繋ぐから。」
頷き、拳を合わせた。
「信じてるぞ、シャルル。」
シャルロットは驚いた顔のまま頬を赤く染め、振り返り壇上に上がっていった。
揺れるポニーテールの隙間から、嬉しそうな笑顔が見えた。
きっとシャルロットも大切な仲間を作りにきたのかもしれない。
勝手にそんなことを考えながら、ショーヤを小突き、親指で行くぞ、と合図。
意図を察し頷きながら立ち上がり、付いてきてくれた。
仲間ならその場に居て応援しろと思う奴が居るかもしれない。
だが俺の考えは違う。
必ず俺に繋いでくれると本気で信じ切っているから、安心してアップに専念できるんだ。
それにシャルロットは3000人以上が受けた、今年の受験者の主席だ。
主席が必ず繋ぐと言った。
信頼の理由なんて、それだけで充分だ。
-----
「さていよいよ副将戦。
後がないアビスリンドは、本年度主席『炎の魔法使い』、シャルロット・マリア・ヴァルローレン選手に託します!
対するノースリンドブルムは、本年度次席『氷の女王』、アンジェリーナ・フィルロ・イザベラ選手!
炎使い対氷使い、大注目の一戦です!」
「観客も今日一番の盛り上がりであるな。」
対峙した2人は互いに感じ取っていた。
目の前の少女は、自分と同格かそれ以上の存在である、と。
名乗る余裕などなかった。
互いに大剣を構え、既に目の前の敵から目を離せずにいるのだ。
「それでは、試合開始!」
「火属性魔法 包み込む炎」
「氷属性魔法 凍てつく刃」
開始の合図と共に、互いに自身が得意とする魔法で剣を強化した。
しかしそこから動けない。
下手に動くとやられる──そんな気がしてならなかった。
どれくらい時間が経っただろうか。
10秒か、20秒か。
観客のざわつきや、早く動けと野次が飛んだりしているが、2人には聞こえていない。
このままどちらも動かないのではないかと錯覚するほどに、開始の宣言がされて以降2人の少女は微動だにしなかった。
しかし、その膠着状態は急に終わりを告げた。
アンジェリーナが一息ついた瞬間、我慢比べが得意ではないシャルロットが剣を振り下ろした。
「炎属性魔法剣 飛竜剣─竜の旋空!」
炎の竜が一直線にアンジェリーナに向かって放たれた。
かつてアカネを吹き飛ばす程の威力をもった竜は、アンジェリーナの横薙ぎに触れ─
凍った。
「なんということでしょう!
膠着状態から一転、シャルロット選手が放った炎の竜に対し、アンジェリーナ選手の横薙ぎ一閃!
一瞬にして凍ってしまったー!!
しかしシャルロット選手の炎もその氷を溶かし、一瞬にして壇上が水浸しの状態に!」
「一手目は互角であるな。」
シャルロットは感じ取っていた。
互角なわけがない。
氷を溶かし壇上に広がったのは水なのだ。
相手は氷使い。
水を氷に変えることなど造作もないだろう。
今この壇上は間違いなく相手の得意なフィールドだ。
炎で水を蒸発させ水蒸気に変えたところで、それは結局水分である。
今炎属性の技を使ったら、空中すら敵のフィールドになってしまう。
つまり最初のたった一振りで炎属性魔法剣を封じられたのだ。
氷を溶かしてしまう以上、長期戦は間違いなく不利。
かと言って焦って短期決戦に持ち込もうとすれば隙が出来てしまう。
互角以上の相手にそれは命取りだ。
アカネやイオを笑ったことは許せるものではない。
今でも相手に対して怒りの感情はある。
しかしそんな感情とは裏腹にこの圧倒的に不利な状況に、シャルロットは無意識に笑っていた。
「この状況で笑えるなんて、貴方どうかしてるわよ。」
「人間、あまりにもどうしようもない時って笑うくらいしかできないのよ。」
「分かっているのなら、さっさと棄権しなさい。痛い目をみたくなければね。」
その言葉を聞いた瞬間、シャルロットは駆けていた。
棄権?寝言は寝て言え。
必ず繋ぐと約束したのだ。
今の自分では逆立ちしても勝てない奴にあそこまで啖呵をきった。
アイツは、なんの根拠もない言葉を──アタシを信じてアップをしているはずだ。
試合も見てすらいない。
その信頼に、応えたい──
「痛い目をみないと分からないようね・・・」
アンジェリーナは、はぁとため息をつき、剣を水浸しの壇上に突き立てた。
『絶対零度』
水で覆われたフィールドが一瞬にして凍り付いた。
使用者以外全てを凍らせる凍てつく刃の大技。
アンジェリーナは審判の試合終了の合図を待つだけだ。
「イザベラ!!」
アレクサンドが思わず大声をあげた。
大会規定違反ギリギリだ。
凍り付き一面青色に染まったフィールドに、一際目立つ赤い髪が躍った。
「何を勘違いしているのか知らないけど、隙だらけよ?」
その技の範囲内で、今まで動けた者は誰一人として居ない。
ノースリンドブルムのメンバーですら、終わったと錯覚していたほどだ。
全身に炎を纏った少女の剣先が、アンジェリーナの左腕を捉えた。
『五月雨』
先鋒戦でアカネが見せた技だ。
アカネ程剣捌きが上手というわけではないのでカウンターではできないが、隙だらけの敵には話は別だ。
まだ練習中と謳っていた技を、失敗すれば敗北しかねないという大舞台での1戦。
赤い髪の少女はその大事な場面で、これ以上ない程完璧に放った。
完全に油断していたアンジェリーナの左腕が裂け、青く染まったフィールドに赤色が混ざった。
顔を歪ませながらも左腕に自身の魔法をかけるアンジェリーナ。
自身の左腕を氷漬けにして止血したとしても、痛みが消えるわけではない。
試合開始時点のクールな顔とはまるで別人だ。
「貴方、なんで・・・!」
なんで動けるのか。
その問いにシャルロットは当たり前じゃない、と言いたげな表情で答えた。
「アンタより優れた氷使いを知ってるわ。
その子の魔法は、アンタの表面を凍らせるだけの薄っぺらいものじゃない。
アタシを止めたいのであれば、3メートル四方で凍らせなさい。
そうじゃないと、溶かしてしまうもの。」
「そんなの普通の人間ができるわけないじゃない!」
その瞬間、シャルロットを纏っていた炎の威力が倍増した。
フィールドを覆っていた氷は一瞬で溶け、蒸発した。
大闘技場内の温度が一気に上昇し、観客の数人がふらついていた。
「・・・・・アンタの罪はアタシの前で2度も仲間を侮辱したこと。
絶対に許さない・・・絶対によ!」
「う、うるさい、黙れぇ!!」
悲鳴ともとれる叫びと共に大量の氷柱がアンジェリーナの上に出現し、歩いて向かってくるシャルロットに向けて放たれた。
左の頬、右腕、左脚と次々に傷を受けるシャルロットだが、その歩みは止まらない。
傷を受けた部分から血が出るも、覆われた炎の熱で一瞬で固まった。
その形相は鬼を彷彿とさせる程恐ろしいものだった。
「やめろ、来るな・・・来るな、来るなぁあああ!!」
アンジェリーナは恐怖のあまり尻もちをつき、涙を流し足を震わせ、震わせた足の間からはムワリと臭いのする液体が流れ、すぐに蒸発した。
『炎属性魔法剣 豪炎剣 ──』
ガシッ─
技を出そうとしたシャルロットの剣を、審判のニックが素手で抑えた。
火傷では済まない熱を帯びているはずだが、ニックの手は火傷1つも負っていなかった。
「試合終了!!
ノースリンドブルム、アンジェリーナ戦意喪失!
勝者アビスリンド、シャルロット・マリア・ヴァルローレン!」
「副将戦決着ー!!
勝者アビスリンド、シャルロット選手!
これで2勝2敗に並び、勝敗の行方は大将戦に委ねられることになりましたー!!」
シャルロットはフン、と鼻を鳴らし炎を収めた。
パチンと指を鳴らすと、アンジェリーナのみっともなく開かれた足の間に火がつき、臭いのついた下着を燃やした。
「黙っておいてあげるわ。」
そう言い残して踵を返すシャルロット。
アンジェリーナは心身共に完全敗北を喫し、その場でしばらく打ちひしがれていた。
シャルロットが自陣に戻ると、イオに抱き着かれた。
涙目になりながらも礼を言うイオに、照れながら抱き返すシャルロット。
その顔は普段の強気な彼女からは想像もできない程、穏やかなものだった。
-----
実況の声が聞こえた。
シャルロットが勝利したようだ。
手を止め急いで闘技場に戻ると、イオがシャルロットの傷の手当をしているところだった。
「約束通り繋いだわよ。」
ニヒヒと笑い腕を伸ばすシャルロットに、いつも通りのグータッチ。
続いてイオも腕を伸ばしてきたので拳を合わせた。
「ユウ、今の集中してるお前だと相手が危険すぎる。真剣は使うな。」
そう言い、愛刀である木刀を投げて寄越した。
さすがに死人が出るのは俺もごめんだ。
先人のアドバイスは素直に聞いておこう。
「3秒で終わらせてこい。」
ニヤリとした笑顔をしながら無茶振りをする姉さん。
これはあれだ。
俺がシャルロットを信頼しているように、全幅の信頼をされているようだ。
「いよいよ試合も大詰め、残すは大将戦のみ!
ノースリンドブルム本年度主席、ルクス・アーツ・フェギナ選手!
対するアビスリンドは『神速の剣姫』の弟、ユウリ・アマハラ選手!
この両名に勝敗は託されましたー!!」
「ノースリンドブルムの試合が大将戦までもつれたのは、9年前が最後であるな。」
「イーストテイン学園以来ですね!
今回もまた『神速の剣姫』率いるアビスリンドが、ノースリンドブルムに土をつけるのか!
はたまた、王者の意地を見せつけられるのか!
まもなく試合開始です!!」
「ルクス・アーツ・フェギナだ。
『神速の剣姫』の弟か何だか知らんが、3分で片付けてやるよ。」
短い金髪に両耳にピアス、いかにもチャラそうな見た目だ。
主席と知っていなければナメてかかっていたところだ。
おそらく、こいつもユニークスキル持ちなんだろう。
「ユウリ・アマハラ。
大将だか主席だか知らんが、3秒で終わらせてこいとのことだ。
せめて5秒は持てよ?」
「ナメてるのか貴様・・・!」
ナメてないさ。
最初から本気で行かせてもらうつもりだ。
後ろから姉さんの笑い声が聞こえるが、聞かなかったことにしておこう。
ユウリは木刀を予め右肩の前に構えた。
「ユウめ・・・やる気だな?」
いち早く気づいたのは『神速の剣姫』。
続いてシャルロットも気づく。
アイツの剣の舞は、右肩の前から始まる技が多いのだ。
起点となる弐式の動きの終着が右肩の前で、そこから4つに分岐すると以前に言っていたのを思い出す。
参式、伍式、陸式、漆式に繋がるのだ。
この大将戦という大事な試合で、体力消費の大きい参式を使うとは思えない。
伍式は敵と接敵していないと意味がない。
つまり、開始早々で未だに見たことがない陸式、または漆式を使うということだ。
一体どんな技を隠し持っているのだろうか。
「それでは、試合開始!!」
「速度最大強化」
開始早々3日に1度の大技を発動。
目に見える程の雷がユウリの身体・剣を覆い、そのまま予備動作なしに飛び込んだ。
『剣の舞 陸式 雷光─千鳥』
ドガァァァンッ──
ユウリが消えたと認識した時には既に土煙をあげながら、アレクサンドの50センチ右のフェンスが崩れていた。
そこには黒い煙を上げながら意識を失う、ルクスの姿があった。
「ちっ、はずした・・・やっぱ制御難しいな。」
右手を大きく前に突き出した格好のユウリが思わずこぼした。
ルクスを吹き飛ばし、アレクサンドにぶつけるつもりだったのだ。
試合開始からわずか2秒。
一瞬の決着だった。
「勝者アビスリンド、ユウリ・アマハラ!
よって3勝2敗でアビスリンドの勝利!」
場内に割れんばかりの大歓声があがった。
「雷光一閃!勝者はアビスリンド、ユウリ選手!
王者が初戦で姿を消すという、大波乱の幕開けです!
1回戦第一試合、制したのはアビスリンド学園ー!」
木刀を腰にぶら下げた瞬間、横からシャルロットが飛び込んできた。
「ユウ・・・やっぱアンタ凄いわ!
今のは陸式?何がどうなった『凍える風』ひょああああ!!!」
テンションあがってるのは分かったけど、くっつきすぎだしいっぺんに喋るな変な声出すな。
イオもいきなり首筋にはやめてやれ。
まあ見てる分には面白いけど。
姉さんがアレクの前で、ねぇ今どんな気持ち?どんな気持ち?
と、『神威』でちょろちょろしながら言っているのを横目に見ながら皆と向き合い、右腕を出す。
ショーヤも合流し、今は4人だが勝鬨をあげよう。
「我々の勝利だ!」
ゴツンッ
4つの拳がぶつかり、鈍い音をたてた。
今度はアカネも含め、5人でぶつけよう。
-----
「アカネも目を覚ましたし、アレクの悔しそうな顔も拝めたし、良かった良かった。
今日は私の驕りだ!遠慮せずどんどん食え!」
宿に戻り、姉さんが上機嫌で御馳走を頼みまくった。
倍率35倍が当たりましたからね。
大して飲めないのに酒とか頼んじゃってるし大丈夫なのか、コイツ。
「それで、ユウ。陸式はどんな技なの?」
いつの間にか姉さんと同じ呼び方になっているぞ、シャルロット。
別に嫌なわけじゃないけども、俺が慣れるまで時間がかかりそうだ。
「速度強化を最大にした『神威』の勢いのまま、相手の鳩尾に一直線に突きを入れただけだぞ。」
「真剣じゃなくて本当に良かったわね・・・想像したくもないわ。」
まあ真剣だったら急所を一刺しだからな。
姉さんの助言を聞いておいて本当に良かった。
「最大強化したんだ・・・?」
青白い顔でアカネがジト目で睨んできた。
良いからお前はレバーとほうれん草食って血を作りなさい。
「大切な人がやられて、黙っていられなかったんだよね、ユーリは。」
うるさいよショーヤ。
いつもクールぶってるのにニヤニヤした顔でこっち見ないでくれ。
アカネはアカネで顔を赤くしてるし。
血足りてるんじゃないか?
「でも3日に1回ってことは、準決勝では最大強化は使えないってことですよね。」
イオが心配そうな顔をしながら俺の腕に回復魔法をかけてくれていた。
今日は回復魔法を使いまくってるから、ずいぶんと眠そうな顔だ。
「準決勝はたぶんショーヤとイオに頼ることになるだろうな。
できればシャルルと合わせて3つ勝って終われたらベストなんだが・・・」
「任せなさい!」
ニヒヒと笑うシャルロット。
いつもその笑顔のままなら本当に可愛いんだけどなぁ、こいつ。
「とにかく明日はきっちりと身体を休め、準決勝に挑もう。
対戦相手の視察には僕が行ってくるよ。」
「お供しますよ、ショーヤ殿!」
サクの声を久しぶりに聞いた気がする。
ここに来てからやれることが少なくて手持ち無沙汰だったようだ。
宿も別にとってるし、選手控室には入れないしで、一緒に来てたことを忘れるところだった。
ここぞとばかりに名乗りをあげ、ショーヤもそれに同意した。
「ところで2人はいつの間に仲良くなったの?」
アカネがシャルロットと俺を見て首をかしげていた。
確かに互いに愛称で呼ぶようになったんだよな。
大きな肉にかぶりつこうとしていたシャルロットの動きがとまり、思わず目が合った。
シャルロットの顔が見る見るうちに赤くなっていった。
「なんというか、アタシのことを信頼してくれてるんだなと思ったら、つい・・・」
「つい、なんなのでしょうか。抜け駆け?抜け駆けですよね?信頼されて堕ちるとかチョロすぎませんか。アカネさんだけですら強敵なのにシャルロットさんまで・・・」
小声で早口にブツブツと、闇堕ちしたような目で呟くイオが怖い。
内容は聞き取れなかった、というか聞くの怖いから良いのだけど。
それはおいといて、仲間を信頼するのは当たり前だろう。
自分のことを信じてくれているのならなおさらだ。
互いに信頼に応えようと切磋琢磨する。
それがチームワークが良くなる秘訣だろ?
「まあ、わたしはズタボロにされて眠ってただけなので何も言えませんけどね。」
むぅっと口を尖らせるアカネ。
あれは相手が悪かっただけだから気にすることないのに。
誰もアカネを責めたりしないはずだ。
「アカネボコボコにされてたなー!あはははっ!」
おい酔っ払い空気読め。
「まあ、なんだ。
勝つだけが勉強じゃないってのはお前は身に染みて分かってることだろ?
オヤジー、酒おかわりー!」
最後の一言がなければ良いこと言った感じだったのに台無しだよ。
アカネは確かに、って納得してるけど。
「それで?ユウは誰が本命なの?」
その言葉に3人が一斉に顔をあげた。
このクソ酔っ払いめ・・・!
保護者連れてこい保護者!
・・・俺か。
なんて言ってる場合じゃないですよね、これ。
誰がと言われてもなぁ。
アカネは過去に数えきれない程助けられた恩があるし
イオは境遇とか聞いて助けてあげたいって思ったし
シャルロットは一番意見が合っていざって時に頼りになるし
現時点じゃ誰とは決めれん。
「今は皆、仲間ってことで。」
「じゃあ私が貰っちゃっても良いってことだな!」
テーブルの反対側にいたはずの姉さんが、俺の膝の上に現れた。
酒くせぇぇ・・・
「「「それはダメ(です)!!!」」」
こうして新人戦初戦は勝利で幕を閉じ、夜は騒ぎに騒いだのだった。
拙い作品ですが、よろしければ最後まで見てやってください。
よろしくお願い致します。




