百〇五ノ舞「それが叶うように全力を尽くす方が1000倍良い」
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姉さんが出て行ったあとすぐに解散になり、外に出るための準備をしていた。
シャルロットがついてきたが、残念ながら鍛錬するわけではないんだよな。
「わりいシャルル。手紙より走った方が早いから、今からブライデン行ってくるわ!
たぶん帰りは明日になるだろうから、よろしく!」
「なんだ、鍛錬じゃないのね。
走って行くと言われて驚かなくなってる自分が嫌だわ。
アビステインからブライデンまでの距離を一泊二日ってのも普通の人からしたら頭おかしい発言よ?」
何キロあると思ってんの、と半ばあきらめた様子で溜息をつくシャルロット。
確かにこの世界での移動基準となるものは馬車または船であり、アビステインからブライデンは馬車で片道3日ほどの距離だ。
手紙の場合は届けが必要だったりで、もう少し遅くなる。
それなら雷神モードで走って行って、明日またそれで帰ってくればいい。
圧倒的に早いし、直接アリスに会って説明できたうえで返事を聞けるのだから。
まあ直接じゃなくても返事はおそらくOKだろうが、会えるなら会いたいものなんだよ。
誰にともなく言い訳をし、雷神モードを発動。
ブライデン王国へ向けて、駆け出した。
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「ふう・・・やっぱ長距離移動は肺への負担はでけえな。」
ものの数秒で馬車では3日かかる距離を駆け抜け、ブライデン王国の関所へと到着。
いくら雷神モードとはいえ、不法侵入までしてしまってはダメだ。
きちんと手順を踏んで中に入らないと。
「ユウリくん!」
関所へと続く列に並ぶこと5分ほど。
ようやく汗がひいてきたところで、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには並んでいる人しか居ない。
明らかにアリスの声だったんだが。
「上よ、上!」
誘導されるがままに上の見ると、箒にまたがったアリスのスカートの中にちらりと水色のじゃなくて外でも箒で飛べるんだな。
あ、以前ブライデンから帰ってきた時にイオが飛んで追いかけてきてたっけ。
ということは団体戦の帰り道だったのを追い越してしまったということか。
アリスが上から降りてきて何があったのかと問われ、事の顛末を話した。
「なにそれ、流石にやりすぎじゃない?
わたしでよければいくらでも手伝うわ。
ユウリくんとも一緒に闘えるしね。」
「助かるよ、ありがとうな。
それとお願いついでに悪いけど、今日は泊めてくれると助かる。」
さて、一瞬で了承を得てしまった。
今日はもう雷神モードは使えないので、泊まっていくつもりではあるんだが・・・
そんな思案もまとまらないうちに、背後からの殺気に思わず飛びのく。
今まで居た場所が、アニマルズの攻撃によって地面が抉られていた。
俺が避けてなければどうするつもりだったんだろう、こいつら。
とにかく並んでいる人たちに迷惑をかけるつもりはない。
アリスがトニーを、俺は褐色ロリ先輩の首根っこを掴んで最後尾に引きずっていく。
「アリス、さすがに苦しいでよ・・・。」
「ちょっ、お前ぇ!ガキみたいに扱うんじゃない!」
「時と場所も弁えない人たちにかける情けなんてないわ。」
睨みながら冷たく言い放つと、アニマルズはブルブルと身体を震わせて大人しくなった。
アリス強し。
また最後尾から並び直しとなったものの、マジックギルドの面々と一緒なので先ほどよりは暇をつぶせそうだ。
とりあえずここに来た経緯を説明し、納得はしてもらえたようだ。
アリスの能力は仲間にも認められているというのが良く分かる。
実際組み合わせによって放たれる魔法は無数にある。
アリスが努力でそれを可能にしているというのが認められる要因なんだろうな。
「ところでユウリくん。」
アリスが真剣な顔でこちらに振り向く。
何事かとこちらも少々気を張る。
「見せた下着への感想はないのかし痛ったあああ!!」
「ふぎゃっ!?」
手に持っていたちっちゃい凶器(狂気?)でアリスを殴りつけてやった。
頭同士でぶつかったのにアリスはコブができただけで、ナナシー先輩はのびている。
以前に俺の伍式でも倒れなかったよな確か。
石頭め・・・。
そんなこんなで色々なことをしゃべりつつ、ブライデン王宮へと再びやってきた。
ナナシー先輩が静かになったおかげで平和だったな、うん。
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「ユウリ君が来ると知っていたら・・・もっと豪華に振る舞ったのに・・・!」
日中はアリス達との鍛錬に励み、夕食をいただこうとしたところ。
プラグニスさんが部屋に入るなりフリーズし、床に膝と両手を付いてガッカリしていた。
それをミクスさんが腕を引っ張りながら椅子まで連れてきた。
いや可愛い顔して強いなミクスさん。
案外プラグニスさんは尻に敷かれているのかもしれない。
そんなこんなで相変わらず楽しい食卓だった。
マリーナとも久しぶりにたくさん話せたし、最近のアリスのことも聞くことができた。
危うく姉妹喧嘩が始まりかけたが、ミクスさんの満面の笑みでフォークを机に叩きつけながらの「食事中は静かに食べましょうね」の一言で事なきを得た。
この家ではミクスさんに絶対に逆らわないようにしよう。
アリスとトニーとの鍛錬を終えて風呂に入り、あてがわれた部屋の大きなベッドで横になっている。
明日以降の流れを考えていると部屋のドアにノックされた。
こんな時間になんだろうと思いながら静かに扉を開けると、パジャマ姿のアリスがそこにいた。
アリスだとは思っていたけど、なんで枕を持ってる。
「ユウリ君たら酷いわ。
わたしというものがありながらマリーナとあんなに楽しそうにおしゃべりして!」
だから一緒に寝て埋め合わせをしろ、とでも言いたいのだろうか。
一応まだお付き合いをしているわけではないのだが、アリスにそんな貞操観念を求めても無駄だな。
ひとまずご機嫌斜めのアリスを放っておくわけにもいかないので部屋に入れる。
途端に嬉しそうな顔をするものだから、ちょっとだけドキッとしてしまった。
「まあでもマリーナはマリーナで魅力的だとは思うけど、そこに恋愛感情があるかと言われるとNOなんだよな。」
アリスがベッドに腰掛けたのを確認し、考えた答えを口にする。
でも、言ってから気付いてしまった。
「じゃあわたしは?」
アリスが顔を真っ赤にして枕に半分顔を隠し、上目遣いで。
そうなるよな、うん。
双子なのにずいぶんと違うからそう思うのだろうけど。
・・・いい加減認めてしまうか。
認めることで、もう後には引けなくなる。
でもここで嘘をついたら、ずっと後悔すると思う。
言えないで終わるよりは、伝えてそれが叶うように全力を尽くす方が1000倍良い。
「怪我してほしくないし、無茶もしてほしくない。
だけど一緒に闘ってほしいし、隣に居てほしい・・・かな。
一緒に笑って、鍛錬して高め合って・・・うん・・・将来的には、結婚したいと思ってる・・・ダメか?」
目を見開いてさらに顔を赤くし、大きなベッドで枕を抱きながらゴロゴロと転がり始めるアリス。
たぶん俺も同じくらい赤い顔をしていることだろう。
転がっていたアリスが勢いよく起き上がり、心から嬉しそうな顔で。
「ダメなわけ、ないっ!!」
今回直接会いに来たのもアリスに会いたいから、というのも大きな理由の1つだ。
元々嫌う理由もないうえに、これだけ仲良くしてたらこう思うのは当然だろう。
アリスの思惑にはまってしまったわけではあるが、結局は選んだのは俺だ。
あとはアリスの宮廷魔術師の娘という身分に釣り合うだけの結果を出すだけだな。
新人戦優勝しかできていないんだ。
こんなんじゃ全然釣り合いが取れるとは思えない。
プラグニスさんにも以前宣言したしな。
「絶対に結果を出すから、その時まで待っててくれな。」
「うん、待ってる。ずっと待ってるからね。」
涙を目に浮かべて嬉しそうに笑うアリスの頭を撫でながら、今一度誓う。
例えそれが個人戦ではなく、学園大戦だったとしても。
例え相手がノースリンドブルムだろうと関係ない。
「迎えに行くまで、負けられねえな。」
拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします!




