百〇四ノ舞「アタシには破天荒すぎるくらいがちょうどいい」
-----ミドリ視点
「ただいまより表彰式を行います!」
昨日は午前中にマジックギルド学院との準決勝を制し、午後は主力メンバーが仲間を助けるために奮闘。
それでこの結果なら、本当によく頑張った方だろう。
優勝候補を次々と破り、決勝まで駒を進めた。
それだけでもアタシはお前らが誇らしいよ。
「ベスト4、マジックギルド学院Bチーム。アビスリンド学園Aチーム。前へ!」
「あー、わりいんだけどよ、あのバカどもは今手が離せない状態だからアタシが代わりに受け取っておくわ。」
アカネが居たら、大会ベスト4で終わっていたかどうか分からない。
それでもあいつらが自分たちで昨日行くと決めたんだ。
大会結果よりも全力を使う場所を自分たちで考えたあいつらもまた、アタシの誇りだ。
「続いて準優勝、アビスリンド学園Bチーム!前へ。」
最後の最後に力尽きてしまったとはいえ、堂々の準優勝だ。
奇しくもあの野郎の理想通りの結果になっちまったのはいただけないが、盛り上がるに越したことはねえしな。
「優勝、ノースリンドブルム学園Aチーム!前へ。」
疲労困憊だったとはいえ、真っ向からサクラとアスカを破った実力は本物だな。
アンジェリーナ・フィルロ・イザベラ。MVP獲得は妥当だろう。
まさかあの新人戦から、ここまで成長するとは思わなかったぞ。
「最後に大会ベストマッチ!
Bブロック3回戦、アビスリンド学園Aチーム対マジックギルド学院Aチーム!」
「は・・・?」
ユウはそういう星のもとに生まれてんのか。
アイツここまで全大会でベストマッチ獲得してないか?
昨日まであまり成長していないと思っていた弟が、気づかないうちになんだか少し成長していたような感じだ。
まあとりあえずまた代わりに受け取っておくけどよ。
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表彰式が終わり、かったるい閉会式も終了。
さてこれでアカネが起き次第帰るだけだな。
そんなことを考えながらいつもの店でホットドッグを買い、食べながら部屋に戻る。
その帰路のさなか、見知った大男が小さな女の子に声をかけていた。
「よぉアレク、優勝おめっとさん。ナンパにしちゃ歳が離れすぎてて犯罪っぽいからやめとけー?」
「るせぇよ剣姫。ナンパじゃなくて勧誘だ。」
あー、毎年毎年めぼしい人材に声かけて戦力を維持するのも大変そうだな。
んで声をかけられてるのはどんな・・・昨日ユウと一緒に居た子じゃねえか。
その子はおどおどとした表情でアタシとアレクを交互に見たのち、アタシの後ろに隠れてしまった。
(助けてほしいですの。わたくし、アビスリンド学園を受験すると決めておりますのに、あの方がしつこく勧誘してくるのですわ。)
「うお、なにこれテレパスか?!すげぇ!」
確かにノースリンドブルムが欲しがりそうな人材だな。
それでも本人の意思を尊重してこそだろう。
本人が嫌と言っているのにしつこく勧誘するのはマナー違反だ。
「アビスリンド学園を受験したいらしいぞ。残念だが他を当たれ、アレク。」
そう言いアレクを避けながら宿に戻ろうと移動を開始。
すると何やら硬い物をアレクから投げつけられた。
思わず左手で受け止めちまった。
「受け取ったな?」
にやりと悪そうな笑みに変わるアレク。
受け止めたものを見る。
そこにはノースリンドブルムの校章が描かれた金色のバッジがあった。
校章紋。
学園の長のみが身に着けるバッジであり、それぞれの長が他の長に対し、対戦を申し込むことができる。
その対戦での勝者は、敗者へ法的に問題ないことであれば言うことを1つ聞かせられる。
厄介なのは、紋章を叩きつけた側が対戦の方法を決められるところだ。
もちろん拒否することはできる。
対戦可決の方法は、そのバッジを受け取ること。
受け取らなければ拒否とみなされ、その対戦は無効となる。
が、完全に手に持ってしまった。
「最後に対戦が行われたのって20年くらい前だっけか?
お前どれだけこの子欲しいんだよ。」
「うちには欠かせない人員になるだろうよ!
対戦方法は学園規模の学園対戦!
外部からの助っ人は3人まで可、ただし都市や国に所属しているメンバーと学長の参加は不可だ。」
本人の意思を尊重せず、そして自分たちに有利な闘い方を選択するとはね。
アビスリンドは2年生までしかおらず、ノースリンドブルムは3学年居る上に団体戦のプロ集団だ。
紋章を受け取った時点で不利な条件は確定したというのに。
自分の反射神経の良さが恨めしい。
「せめて日時と場所だけはこちらで決めさせてもらうぞ。
追って連絡する。」
これはちょっとまずいことになった。
アタシが出れれば無双して終わりなんだが、それも釘をさされちまった。
(わたくしのせいで・・・申し訳ありませんですの・・・。)
「お前は何も悪くない。堂々とうちを受験できるようにしてやるからな。」
さて、どうしたものかしらね。
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アカネも無事に目を覚ましてアビステインに帰還した。
そしてあれから3日、全校集会で皆に報告していた。
「アタシの不注意でこんなことになって済まない。
外部からの助っ人に関しては選抜メンバーと相談して決める予定だ。
それ以外の生徒も今回は全員参加となる。
開始は10月31日、場所はセントラルポート周辺の山岳地帯だ。
それまでに各自、準備を整えておいてくれ。
選抜メンバーは放課後、学長室に来るように。以上、解散。」
正直この後、ユウたちになんて言われるだろうな。
事の顛末は集会で話したとはいえ、団体戦のプロ集団とも言えるノースリンドブルムとの学園対戦。
そして何より、こちらはまるまる1学年分の人数少ない不利な試合。
こんな試合の結果など、火を見るよりも明らかだ。
軽率な行動が、こんな形で返ってくるとはな。
放課後、気分が優れないまま学長室の扉を開けた。
そこで聞こえてきたのは、アタシの想像していた言葉ではなかった。
「外部からの助っ人はどうする?聞いた感じだと他校生はアリなんでしょ?
アリスは絶対に欲しいわよね。」
「このルール、教員は出れるってことだよね。
ならレイ先生は参加できるってことか。」
「アリスは決定として、残りの2人をどうするか・・・やっと姉さん来たか。」
暗い表情でアタシが謝るという図を想像していただけに、正直なんて言っていいか分からない。
鳩が豆鉄砲を食ったような表情って、今のアタシみたいな表情なのだろうか。
なんでコイツらはこんなにも前向きで居られる。
誰一人としてアタシに非難の目を向けているものは居ない。
全員が対戦に向けて知恵を出し合うその姿に、思わず目を潤ませてしまった。
それにいち早く感づいたユウが、傍に来る。
「だって悪いのはアレクだろ?
クロエの意思を尊重しないで勝手に話しを進めたってことじゃん。
そんなの俺たちだって許せねえよ。」
「むしろ団体戦の借りを返すには打ってつけじゃない?
どっちのチームもノースリンドブルムに負けたわけだし。」
「お前ら青春してんなあ。」
ユウとシャルロットが互いに視線を交わし、にやりと笑う。
アタシも学生時代こんなに楽しそうにしてたっけな。
・・・わりとやりたい放題やってた気がするけど今は置いておこう。
「とにかくポーランは絶対に確保だな。
1人はアタシのつてでなんとか用意しよう。
もう1人はどうする?」
「考えたんだけどさ、学長じゃなければ参加できるんだよな?」
そのユウの問いに、1つの答えが出てきた。
あまりにも揚げ足取りで、そして破天荒な答えだ。
簡単に言っているが、実際それがすぐにできるかどうかは分からない。
けど、もしそれが出来たらこの閃きはこの大戦の大きな穴をつけたことになる。
そして勝者には法的に問題がなければ、なんでも条件をのませることができる権利が与えられる。
「ユウ、お前頭いいな。ちょっとその話し進めてくるわ!
ポーラン以外の枠はアタシがなんとかするから、空けておけ。
とりあえず解散して、ユウはポーランに手紙を。
それ以外のメンバーは鍛錬でもして準備しておけ!」
そう言って部屋を後にする。
閃いたのは誰も思いもよらないであろう発想。
だけど、このアタシには破天荒すぎるくらいがちょうどいいよな。
部屋を出てから高速で移動し続けている。
その目指す先は、栄光か、絶望か。
そんな究極の二択、生まれてから1度も外したことねえんだよ。
拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします!




