百ノ舞「なに泣かしてんだテメェ」
皆さまのおかげで遂に百ノ舞到達しました!
この場をお借りしてお礼申し上げます。
-----シャルロット視点
さて、ユウたちを先に行かせたのは良いとして、問題はこの男をどうやって倒すか。
ミドリ師匠は攻撃に特化しすぎて反撃の隙が無い。
ルーナ師匠はどこに打ち込んでも防がれてしまうという意味で隙が無い。
この男はなんというか、どこに攻撃をしてもカウンターを食らわせてきそうな雰囲気だ。
それとさっきのサク先輩を襲った死角からの攻撃。
闇属性魔法っぽいのよね。
明るい室内だってのに暗闇に乗じてというか。
1度、しかも一瞬しか見れていないからよく理解はできていないけど。
未知の相手と闘うことに慣れてきているとはいえ、ここまで殺気を出して向かってくる人との対戦は苦い思い出しかない。
あの時はアカネに助けられたけど、今回はアタシの力だけでなんとかしないと。
アカネを助けるためにもね。
緊張からか、額から汗が流れ出る。
しかしコイツをほったらかしても良いことは1つもない。
震えそうな手に力を込め、剣を握った。
「まあ向かってくるなら止めはしねえけどよ、死にたくなければやめておけ。」
「死にたくはないわね。それでも、アンタをここで止めないと仲間が危ないもの。」
「・・・それもそうだ。」
言うなりこちらに向かい走り出す男。
ユウやサク先輩と同クラスのスピードね。
普段から見慣れてなかったらヤバかったわ。
「『戦乙女』」
正面からのフェイントを読み切り、右腕に向けての斬撃を一番信頼のできる盾で受ける。
しかし完璧に防いだはずの盾が徐々に黒く染まり、ボロボロと音を立てて崩れ去った。
思わずバックステップで距離を取る。
「そういや名乗ってなかったな。
ドット・アークス・ヴェロリオ。『腐蝕のドット』と呼ばれてる。」
「アタシは」
「ああ、いい。どうせここで死ぬ奴の名前なんて覚えても仕方ないからな。」
「ふう・・・」
一息つき、ストレスを外に追いやる。
こちらの動きが鈍るだけだから、いちいち怒っても仕方がない。
それよりは状況確認に頭を使おう。
崩れ去った盾はたぶん再利用できないだろう。
つまりアイツの攻撃を剣で受けてはダメで、盾で受けるにしても数が限られる、と。
今までで一番厄介な相手じゃないかしら。
しかもたぶん『腐蝕』のユニークスキル持ち。
ショウヤ以外とのユニークスキルとの対戦経験ってないのよね。
いや、師匠2人が似たようなものか。
ヤバイ相手だけど、そう考えたらいつもと同じってことだ。
というか、ミドリ師匠より強い相手って今まで見たことなかったわ。
じゃあ怖がる必要なんてなし。
だってアタシ、『神速の剣姫』よりも怖いものなんてないから。
「ドットだか横スクロールだか知らないけど、アタシの前に立ちはだかるというなら燃やすだけよ。
『炎舞─炎亀の甲羅』!!」
剣を振り下ろし、文字通り炎の甲羅が敵に向かう。
ドットが左に避けて躱すも、それを追いかける。
相手に当たるまで永遠と追いかける追尾システム搭載だ。
この技を作るのに、どれほどのトライアンドエラーを繰り返したことか。
なんてアタシの試行錯誤をあざ笑うように、ドットは剣を一閃。
炎の甲羅を切り裂き、腐蝕させた。
攻防一体のあの剣が厄介すぎるわね。
かといって武器破壊は腐蝕のおかげで望めない。
本体をやっつける以外に、これといって方法が浮かばないわ。
「『腐敗する心』」
「『大海』!!」
ドットが剣を前に突き出したと思えば、さっきサク先輩を襲ったような黒い靄が一直線に飛んできた。
咄嗟に盾でガードしてしまったけど、今のはくらったらヤバイ。
たぶん死ぬ。
これで『戦乙女』に続いて『大海』までダメになってしまった。
まあ皆居ないし、見られる心配はないからいくらでも出せるとはいえ、だ。
剣で受けるわけにもいかず、攻撃を受けさせるわけにもいかないとなると、なかなかに厳しい。
本体に直接攻撃を入れないといけないけど、生半可な攻撃じゃあの剣で腐蝕させられてしまう。
完全に踵が崖にかかってるわね、これ。
一歩下がれば崖下、もとい死に直結。
ならばどうする?
選択肢は1つしかないじゃない。
「我が身は大楯、心は鎧。
守護り身として、仲間を護る覚悟あらんや。
ある、有る、生れ。
我が力を依り代に、此処に在れ!
神話級召喚術─天神の換装!!」
切り札を持って、前に進む!!
室内だと言うのにアタシを中心に突風が吹き、ドットの装備を大きく揺らす。
白く輝く装備にまぶしさを感じたドットが目を半分覆いつつ反撃。
「くっ・・・『腐敗する心』!!」
先ほどは一直線に飛んできた靄も、突風にかき乱されて最終的には霧散した。
靄だろうと霧だろうと、そんなものは通さない。
全て、吹き飛ばす!!
「『天神の祝福』!!」
ドットは剣でガードするも、剣を砕きそのまま胴に直撃。
炎の牢獄の柱まで吹き飛び、衣服が燃えていた。
剣で受けられたことを気にして槍を見るも、まったくの無傷。
神の装備は並みの魔法じゃ傷つかないってところかしら。
持っていく魔力も極大だしね。
『天神の換装』を解除したアタシは、魔力切れで前のめりに倒れた。
「よく頑張ったな。あとはユウに任せてゆっくり休め。」
「本当にこの子、どこまで強くなるつもりかしらね。今の一応、私の最終奥義なんだけどな。」
薄れゆく意識の中、聞き覚えのある2人の声が聞こえた気がする。
ユウの後を追いかけないとという気持ちと裏腹に、アタシの意識は闇に消えて行った。
-----通常視点
「さっきのが中ボスって考えると、あとは黒幕とラスボスかねえ?」
「勝手に思い込んでおかない方がいいでしょうね。あと50人はラスボスクラスが居るわよ、きっと。」
「それは全滅必至ですね・・・ユウリ様だけでもなんとか逃がしたいところですが。」
「とにかくまた中ボスのお出ましのようだぞ。」
アスカ先輩の言葉に足を止める。
何階だか既に忘れたが、フロアの中心に目のやり場に困る格好の女性が1人立っていた。
なんというかもはやそれは服なのかと言いたくなるような恰好でアリスさんの両指で目が潰されてそれどころではなくなった・・・!
「旦那様は見ちゃダメ!」
「いや物理的に見えないんですけど。」
「帰ったらいくらでも見せてあげるわよ!」
「いやそういうのはきちんと手順を踏んでだな。」
「やん、旦那様のえっち。」
これは見なくても分かる。
絶対両手を頬にあててくねくねしてるだろ、アリス。
「まあ、そんなわけであの目の毒はわたしがやるわ。『分身の術』!!」
ボンッと音を立てて、気配的に6人に分身したアリス。
いやまあありがたいけど、無茶はしてほしくないんだよなあ。
目見えないし。
「アリスさんの『白夜結界』で相手を閉じ込めましたよ。行きましょう、ユウリ様。」
サクに支えられて結界の脇を通り上階へと向かう。
シャルルといいアリスといい、強敵と1対1で闘いに行くとは。
本当に無理はするなよ。
-----アリス視点
闘い始めてからというもの。
『白夜結界』に閉じ込めているにも関わらず、攻撃がまったくといっていいほど当たらない。
サクラさんと対戦していた時の方がまだ当たっていたくらいだ。
中級魔法も上級魔法も全て試したが、その全てが軽く躱されている。
分身とのコンビネーションでの範囲攻撃も試してみたけど、それもダメ。
実体がそこにないのではないかと思うほど当たらない。
これではただこちらが魔力を消費し続けるだけだ。
「あら、もう攻撃は終わりなのお?」
艶やかな身体をくねらせて挑発してくる相手だが、実力は相当に高い。
こんなにも魔法が当たらないなんて今までなかったから、正直どうしていいか分からない。
それでも、ユウリくんたちを温存するためにはここでわたしがやらないといけないの。
「こんなところで時間かけていられないのよ!」
「そろそろ飽きたしい、こっちからも行くわよお!」
わたしが魔法を打とうとした瞬間、ユウリくんの元祖陸式ほどの速さで突撃してくる敵。
そのまま氷も破壊されて中に居たわたしもフロアの壁まで吹き飛ばされ、右側頭部を強打してしまった。
「いった・・・!」
バラバラと結界が砕けていくのが分かる。
それと同時に分身も徐々に消えていく。
打った箇所から血が流れ、目の前が若干揺れている。
脳震盪かしら、これ。
だとしたらやばいなあ。
敵がそこまで来ているというのに。
まったく身体が動く気がしない。
それでも最後の力を振り絞って、右手の人差し指だけを手前に動かす。
結界の外に作り出していた雷雲から、雷が落ちる。
今まで当たることのなかった攻撃が、ようやく敵を捉えた。
視界が揺れていたおかげで掠めただけで終わってしまったけど。
「やってくれたわねえ、このガキがあ!!」
敵が剣を振りかざしたのはなんとなく分かった。
ああ、わたしはここで死んじゃうのかな。
ユウリくんと結婚して、たくさんの子どもと一緒に幸せな生活を送りたかったな。
ユウリくんの剣の才能と、わたしの魔法の才能を受け継いだら、どんな素晴らしい子が産まれただろう。
そんな幸せも、未来への希望も、ないのかな。
「死にたく・・・ないなあ・・・。」
ポツリとこぼしてしまった言葉。
涙も両頬を伝っていただろう。
それでも涙だけではなく、想いも。
伝った。
「弟の嫁をなに泣かしてんだテメェ。●すぞ。」
「ぎゃあああああああああ」
剣もろとも斬り落とされた右腕だった場所を抑えて叫ぶ女。
その横にはものすごい形相で剣についた血を払う金髪幼女。
少し遅れてシャルロットちゃんを担ぐルーナ隊長。
良かった、シャルロットちゃん無事だったんだ。
ミドリさんが『回復』をかけてくれて、なんとか出血は止まった。
でもフラフラするのは変わりない。
悔しいけど、さすがにここでリタイアかな。
壁に寄りかかり座りながら、のたうち回る女に鬼の形相で向かっていくミドリさんを眺める。
強くてカッコよくて、本当に魅力的な人だなあ。
シャルロットちゃんが弟子入り志願するのも分かる気がするわ。
ぼんやりとしながらも心の中で最大級のお礼を述べつつ。
弟の嫁と言われたことに今更嬉しくなるアリスだった。
拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします!




