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剣の舞~サムライと呼ばれた祖父に鍛えられ、いざ騎士育成学校に入学したら剣術一位だったのでこのまま世界最強剣士を目指すけど、ラスボスはたぶん実の姉~  作者: あっきー
第10章 疫病編

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九十九ノ舞「アタシたちのやるべきことはなに?」


-----トニー視点


ドゴォン─


「がはっ・・・」


屈強な男達に何度も何度も殴られては壁に打ち付けられた。

身体中が悲鳴をあげているのが分かる。

それでも1人として上へと続く階段を登らせるつもりはない。

ユウリのライバルを自称しているのだ。

ここを通しては顔向けできない。

自分の身体が壊れてでもだ。


だが相手の3人は厄介なことに、自分よりもパワーを持ち、自分とアリス並みに連携を取れている。

それがこれだけボロボロにされている理由だ。

せっかくイオに魔法を教わったのに、力を溜めることすら許されていない状況。

この程度のことで心は折れるつもりはないが、身体はいい加減限界が近くなってきた。

立ち上がるも、視界がかすみ始めている。


「こんなところで倒れてちゃ、アイツのライバルなんて務まらないべ。」


じわりじわりと寄ってくる3人。

顔を上げ、自分を鼓舞する言葉で立つ。

そうでもしないと、いつぶっ倒れてもおかしくないと無意識で気づいていた。


「とことん頑丈だが、相手が悪かったな。」

「そろそろ眠っておけ。」

「誰もお前を責めたりしないさ。」


それぞれの言葉に、頭の中では首を振る。

しかし既に身体は傷だらけ、肩で息をしていて立っているのもやっとな状態だ。

首を振る体力がもったいないと思えるくらいだ。


「確かにな。ここまで耐えてくれた仲間を責めるような奴は、僕らの中には居ないよ。」

「トニーさんのおかげで、皆は無事4階に向かえましたよ。」


回復(ヒール)』をかけながら走り寄ってくるイオ。

自分も肩で息をして汗だくになっているのに。

オラの心配をしている場合じゃねえべ。

そして相手の3人の魔力を霧散させながら、間に割って入るショウヤ。

その背中は後は任せろと言わんばかりに頼もしかった。


「『回転する双剣ロータリー・ピストレーゼ』」


魔法による自己強化を失った男に勢いをつけた回転斬りが直撃。

さきほどまで強靭な肉体に頼っていた男は、きりもみしながら大きく吹き飛ばされていた。


「まず1人。」


言いながら続く男へと突進するショウヤ。

その剣が2人目を捉えた瞬間、殴りかかってきた3人目の攻撃を右に躱す。

直後にショウヤの居た場所を通過し、3人目に直撃する3本の『氷の矢』。


目も見ず、声もかけずの連携。

阿吽の呼吸とはこのことを言うのだろう。

自分とアリスの連携が、小さく見えてしまうほどに綺麗に決まっていた。


「すげえ・・・。」

「兄さんとは、産まれた時から一緒ですから。」

「互いに何を考えていて、何をして、何をすればいいかはもうずいぶんと分かるようになったね。」


オラもまだまだだな。

2人の差し伸べてくる手を取って立ち上がりながら、そんなことを思う。


ユウリのライバルで居たいなら、1人で突破して追いかけられるようにならなきゃダメだ。

今度はイオから言われるのでなく、自分の意思で。


「イオ、オラに魔法を教えてくれ!!」


2人してそっくりなきょとんとした顔。

顔を見合わせて同時に笑いだした。


「私の魔法授業は、アリスよりも厳しいですよ?」

「望むところだべ!」


オラに肩を貸しながらそのやりとりにフッと笑うショウヤ。


「良かったな、イオ・・・。」


イオには聞こえていなそうだったが。

その優しいまなざしでこぼした小さな声が、今後この双子をもっと知っていくきっかけになるのだった。



-----通常視点


「「『分身の術』!!」」


続く4階層。

サクの提案により、サクとアリスの分身のみによる攻撃が始まった。

当然こちらは全員が階段に残っている。

サクとアリスだけがフロアに入って12人ずつの分身を出して階段に戻り、アリスによる『完全回復』が行われ実質アリスの魔力を消費しただけの攻撃。


この2人だとコンビネーションが課題となりそうではあったが、そこはさすがシノビ。

誰とでもすぐに合わせられる器用さを活かし、次々と敵を撃破していった(らしい)。

実際に目で見たわけでもなく情報が入ってくるのは、たまにアリスの魔法がサクの分身に当たってしまったりだとかで、それなりに分身が消えているようだ。

まあ初めて組む相手にしては、手際よくやっている方だろう。

ものの10分ほどでフロアを制圧し、俺たちはそのまま5階層へと向かった。



実際今の方法で攻撃し続ければ最後まで行けるんじゃないかと思ってはしまうのだが、まあそんなにうまくもいくはずもない。

続く5階層、階段を登り切った扉から数メートルの位置に詠唱を終えた魔法師が数人待ち構えていた。

サクの分身を先導させておかなかったら、突っ込んで一網打尽になるところだった。


「扉をくぐるまでは問題ないとして、くぐった瞬間に魔法が飛んでくるこの状況。どうしたもんかね。」

「敵も馬鹿ではないみたいね。階段では攻撃してこないあたり、結界がないから建物の倒壊に気を遣ってるんでしょうけど。」

「いっそのこと階段壊せば、後ろからの迎撃なくならないかしら。」

「え、シャルロットちゃん、話通じてる・・・?」


シャルロットの何気ない発言に驚くアリス。

この人はまともだと思っていたのに、とでも言いたげな表情だな。

残念ながらまともな思考回路をしていたら姉さんに弟子入り志願なんてしないだろう。

そんな特殊な思考回路の持ち主はおもむろに階段を登り始め、扉へと入って行った。

うん、さすがに俺でもちょっと理解できない行動ですよシャルロットさん。

あ、ほら飛んで火にいるなんとやらと言わんばかりにめっちゃ魔法飛んできてるし。


「『咲き誇る狐百合グロリオーサ・シールド』。」

全ての魔法を防ぎ、呆れたような顔でこちらに振り返る。


「さあ、早く行きましょ。こうしている間にもアカネが苦しんでるんだから。」

その声に颯爽と駆けだす俺、サク、アスカ先輩。


「・・・アビスリンドって皆こうなの?」

後ろでアリスが頭を抱えつつため息交じりにつぶやいていた。



-----


乱戦の中でシャルロットが上手く盾魔法を操り、敵の攻撃から皆を護って闘っていた。

器用だなホント。

敵の数が残り数人となり、とどめを刺すべく俺とサクが走り出す。


「さっさとそこをどけ。」

「『風斬』」


斬りかかる直前、右側から殺気を感じて飛び避ける。

視界の端に捉えた黒い靄は、完全に攻撃の体勢に入っていたサクを捉え吹き飛ばした。


ボンッ─


飛ばされたサクが太い丸太に変わる。

変わり身で逃れたみたいだが、完全に攻撃は入ったように見えた。

無傷とはいかないだろう。

脇腹を抑えつつ隣に姿を現したサクは、案の定右の脇腹から出血していた。


「『完全回復(リザレクション)』」


すぐにアリスの回復がかかり、サクの傷を癒す。

何もないところから急に現れたその男は、これより先に行かせないと言わんばかりに俺たちの前に立った。


刀傷だろうか、斬られた左目を閉じたまま。

長いボサボサの髪を後ろで縛り、左手で両頬の顎髭をジョリ・・・といじりながらこちらを睨みつける。

40歳くらいだろうか。

黒い短めの剣を持ち、服装は年季の入った冒険者装備のように見える。

軽めの装備を見るに、速度に重きをおいた剣士といった印象だ。

今までの敵とはわけが違う。

何度も修羅場をくぐってきたであろうその男の佇まいには、一瞬の隙もなかった。


「ユウ、先に行って。」


言いながら前に歩いていくシャルロット。

普段姉さんと闘い慣れているからか、感覚がおかしくなっているのではないだろうか。

そこいらにいる戦士Aとはレベルが違いすぎる相手だというのに。

それを肌で感じていたアリスも思わず声を荒げた。


「1人でやるつもり?!」


「だってもう、1フロア1人もかけていられないじゃない。

アタシたちのやるべきことはなに?

全員の全力でコイツを討つこと?違うわよね。

誰かがやらなくちゃいけないのよ!

『炎舞─炎の牢獄(ファイア・デスマッチ)』!!」


シャルロットと男を中心に炎の柱が上がる。

何本もの柱が床から天井まで塞ぎ、円形の牢獄を作り上げた。


「行くぞ、アリス。」


立ち上がり、牢獄の脇を抜けて残りの敵を蹴散らす。

サクとアスカ先輩もそこに続き、最後に意を決したようにアリスも着いてきた。


「ここは任せたぞ、シャルル!!

最上階で待ってるからな。」


「・・・任されたわ。」


その言葉だけで何度でも立ち上がれる。

シャルロットは無意識で嬉しそうにニヤリとしていた。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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