「プロローグ」
人生初の投稿です。
なるべく定期的に出せるように頑張ります。
拙い点もあるかと思いますが、応援やご感想よろしくお願いいたします!
サムライと呼ばれた男がいた。
剣と魔法の世界でありながら、己の剣術のみで数々の大会を制した。
後に道場を開設し多くの門下生・弟子を持つことになる彼の元に、この日は小さな客人が居た。
「サムライ、ナギ。あなたは魔法を使わないのにどうしてそんなに強いの?」
日本で言えば、小学校に入るか入らないかくらいの少女だろうか。
赤い髪をまっすぐ伸ばした少女の綺麗な赤い瞳は、羨望のまなざしでサムライと呼ばれる男、ナギに向けられている。
ナギはその場で膝を付き、自分を輝いた目で見る少女の頭に手を乗せた。
「本当に大切で、心から守りたい人、守りたいもののために闘っているだけだよ。
君には、守りたい人はいるかな?」
「うーん・・・お母さん!」
するとサムライはにこやかに微笑み、その小さな頭を撫でた。
「それなら、お母さんを守るために強くなりなさい。私の強さは、きっとその先にあるよ。」
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時は流れて10年後の年の暮れ。
サムライは自身の道場で、自身の孫と相対していた。
「今日こそ一本取ってやるぜ、じじい!」
そう言い放ち右足を前に出して屈み、居合斬りをこれから出しますと言わんばかりの構えを取る少年、ユウリ・アマハラ。
我が孫ながら言葉遣いがなってない。
先人への敬意というものを教えてやらねば。
「てめぇなんぞに取られるか!サムライなめんなクソガキィ!」
売り言葉に買い言葉。
まさにガキ同士の口喧嘩である。
そんなやりとりを見かねて立ち合い人の少女が声をあげる。
ユウリの幼馴染でこの道場の門下生、アカネ・オオヒラだ。
鍛冶屋の娘で大の刀好きなところと頭の出来が悪いところを除けば、鍛冶スキル・家事スキル・魔術操作は一流で、見た目もよくスタイルもいい。
この道場では、ユウリの次に強いといったところか。
「それでは、試合開始!」
「「『神威』」」
二人が揃えて口に出したのは、代々アマハラ家に伝わる移動法、『神威』。
簡単に言えば縮地法で、離れた距離から自分の間合いに一歩で踏み込むための技である。
これを繰り返して使用することで高速移動することや、数歩で敵の背後に回ったりと便利なのだ。
ナギをサムライとして押し上げた技の一つである。
・・・あるのだが互いにこれを使うとただの見えない打ち合いになるわけで。
立ち合いのアカネにも追えていないのだからタチが悪い。
先ほどから小動物のように音がする方に首を向け、次の音にビクッと身体を震わせながらそちらを向き、を繰り返しているだけになっている。
「いってーな、じじい・・・!」
そう言いながら後ろへ滑り下がってくるユウリ。
胴着の左肩がはだけてしまっているが、『神威』の高速移動によるもので攻撃を受けたりしたわけではなさそうだ。
「『神威』もまともに使えんクソガキが何度やったところで一本も取れんわ。」
そう言うナギの胴着はひとつの乱れもなく、試合前のそれと変わりない。
だが一つ、サムライも自身の孫の成長に驚きを隠せてはいなかった。
「お前が『神威』として使っているそれは、雷魔法でスピードを上げているな?」
「ちぇ、バレたか。」
かつてナギは同じことをやろうとし数年研究したが、どう足掻いても到達できなかったのだ。
それを目の前の孫はやってのけ、半人前の『神威』を完璧なソレと同等かそれ以上の速度にあげている。
サムライと呼ばれ、剣客として挑まれることがなくなった今、彼にとって孫との闘いは唯一本気で闘える場であり、孫の成長を楽しく、そして嬉しく思える場でもあった。
「行くぜじじい。これが俺が編み出した剣だ!」
ユウリはそう言うと、剣を持った両手を顔の横まで上げ腰を落とした。
サムライの勘が告げている。
この技はまともに受けたらヤバイ。
「剣の舞 参式 雷斬─桜吹雪!!」
刀と腕に纏わせた雷魔法で速度を極限まであげ、
一瞬の間に3度同時に空気を斬る。
圧縮された空気がかまいたちとなり、ナギに襲い掛かった。
「道場壊す気かお前・・・」
ナギはそう言うも、その表情は笑っていた。
今までどんな相手と闘って勝ってきたサムライにも同時に3つの刃など見たことがなく、剣客としてこの技をどう攻略しよう、と楽しんでいるのだ。
1つ目は剣先で軌道をずらし、2つ目は身体を捻りかわした。
「なめるな、クソガキィ!」
ガキィィィン!
3つ目を真正面から剣で受け取め、自分の左肩の上を通すようにいなした。
「はぁ・・・はぁ・・・くっそー!アレ全部捌かれるんかい・・・」
ユウリが大の字に倒れこんだ。
空気を圧縮するほど速く、それを一瞬で同時に3つ発生させる程の大技を使ったのだ。
疲労感はユウリの方が圧倒的に大きいだろう。
その姿を見たアカネが勝敗を言い渡す。
「勝者、ナ」
「これはワシの負けじゃな。」
宣言を遮り、敗北宣言をするナギ。
胴着の左肩が破れ、血が滲んでいた。
道場内がざわめいた。
道場が開かれてから今に至るまでただの一太刀も浴びたことのなかったサムライは、自身を傷つけた初めての剣客に向けて悔しそうな、しかし満面の笑みで向かった。
「お前の勝ちじゃ、ユウリ。」
「勝者、ユウリ・アマハラ!」
そう言うなりアカネはユウリに駆け寄り、肩を貸している。
常日頃からユウリの新技の実験台になっている彼女だけは、特に驚きもしていなかった。
その時の孫の喜びようは、ナギは一生涯忘れることはないだろう。
「ユウリ。ワシに勝ったら頼みを一つ聞くんだったな。なんでも言うとよい。」
ユウリは不敵に微笑むとワクワクした顔で答えた。
「アカネと一緒に、学園に通わせてくれ!」
これから始まるのは
サムライの孫と門下の幼馴染が、魔法騎士育成学校に通い色々なトラブルに巻き込まれていく(引き起こしていく?)物語─
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