第15章 北海道降下作戦 01節
宇宙世紀0282年3月28日
人類はいまだ戦争をやめず、地球上のありとあらゆる場所は戦乱に包まれていた。その勢力の母体はいずれも新地球連邦政府を基盤にしていたが、何処が主導権を握るか、地方分権的か中央集権的か、その他保守派か革新派か、あらゆる思想の元に勢力は分断されているのである。
「全員集まったな?本作戦の目的は、5方面からの北海道奪還である。」
地球圏軌道上、伊達幕府軍の地球帰還艦隊第二分隊の総指揮を執るのは、カナンティナント・クラウン中佐その人である。
「もっとも、一手はタキ中将が担当するため、我が軍単独としては4方面攻撃だ。敵は主力を旭川に置き、他は警備隊しかいないと思われるため、旭川以外は2個師団級兵力をもって攻略し、主力をもって旭川を占領する。」
伊達幕府軍は2手に分かれている。1軍はシルバー総司令指揮の下インドネシア解放に向かっており、1軍はクラウン副司令指揮の下北海道の奪還に動いている。2方面作戦は必ずしも良いとは言えないが、今作戦に限定すれば有効である。東南アジア連合は先のナイアス・ハーディサイト中将が亡くなってからその勢力を衰えさせており、この戦況下他国から援軍が見込めない状況に陥っている。しかしながら、守るべき場所は本拠であるフィリピン、占領下にある北海道、インドネシア、従属下にあるベトナムである。そしてその戦力は、多めに見積もっても伊達幕府軍と同等クラスなのだ。伊達幕府は2手に分かれているとしても、ハーディサイト軍は4手に分かれざるを得ず、しかも本拠の喉首であるインドネシアに踏み込まれれば、北海道への援軍どころの話ではなくなる。
「各方面を担当する軍は、早急に、可能であれば1時間以内に該当地域の敵を一掃し、兵をまとめて旭川の軍に合流せよ。」
クラウン中佐はそう簡単に述べるが、1時間で敵を一掃するというのは速戦にも程がある。被害を無視したよほどの力押しでなければ不可能な命令であった。
「では、各方面各隊を通達する。第1軍はバーン・フルーレ少佐指揮下の陸軍第1・第2師団をもって、石狩軍港を平定せよ。」
第1軍については航空支援は無いが、石狩軍港には十分な航空戦力が無いことは調査済みである。その上で最も精鋭である陸軍戦力を石狩に展開したものだ。
「第2軍は、セレーナ・スターライト少佐指揮下の女神隊第2師団と地球残存部隊をもって、釧路軍港を平定せよ。」
セレーナの指揮下の部隊は、仙台に残しヤオネ大尉が指揮していた軍勢を含む。完全に陸海空軍の混成部隊であるが、これを指揮するとなると将軍が限られるためのセレーナの人選である。
「第3軍は、タカノブ・イシガヤ少佐指揮下の遊撃隊第2師団と陸軍第3師団をもって、苫小牧軍港を平定せよ。」
遊撃隊第1師団は、カタクラ大尉が率いてシルバー大佐指揮下のインドネシア解放軍に従軍中である。第1師団に比べれば練度は下がるが、手勢の第2師団と陸軍第3師団をイシガヤが率いるのは比較的混成部隊の運用に慣れているからである。
「そして……本陣はカナンティナント・クラウン中佐、すなわち私が指揮する主力軍をもって旭川を攻略する。本陣先鋒はカリスト・ハンター大尉率いる女神隊第1師団、防衛軍第1・第2・第3・第4師団とし、副軍団長級のカリスト大尉に一個軍団級の戦力を預ける難はあるが、それより石狩・釧路・苫小牧の制圧は何よりも軍事的にも政治的にもイレギュラーにも対応できる采配能力を必要としているのだ。
「なお、人工施設は総て破壊してもかまわない。ただし、自然環境へ被害を与えることは慎め。自然保護のために作戦が遅れることは容認する。また、作戦の円滑な進行のため、敵兵、捕虜に対する勝手な暴行は禁止する。敵兵またはその子女を捕えた場合、各軍団長に自分の名前とともに届出よ。政治的状況を考慮したのち、平常の帝國軍法に基づき、佐官以上の将士の家族については期限付きの奴隷とする権利、もしくはそれと同等の金塊を下げ渡す。この軍法に逆らった者は公開処刑の対象とする。」
幕府軍の将校達がその指示に頷く。今回の作戦は時間が貴重であり、拙速を貴ぶ必要がある。衛星軌道に待機している幕府降下部隊を早く地上に降ろす必要があるのだ。多くの輸送艦は十分な防衛戦力を有しているとは言い難く、万が一のことを考えているのである。地上に降ろして軍編成を整える必要があった。
「では、作戦開始する。各員配置に就け。我らの前途に女神の加護やあらん!」
既に総ての艦隊は地球への降下体勢に入っている。衛星軌道からの地球降下はタイミングを計る必要があり、一斉に降下することはかなわない。大規模艦隊の降下はそれゆえに防御力が下がり、奇襲等に注意しなければならない。
「クラウン中佐、艦隊降下順調です。また、総司令シルバー・スター大佐の軍団もフィリピンへ降下し始めました。」
通信参謀が報告する。
「参謀、降下部隊はそれぞれの指揮官に任せれば良い。問題はこれから戦うべき敵だ。」
「そうですね、カナン。」
クラウン中佐の発言に、参謀総長のヘルメス少佐が相槌を打つ。
「しかし、この戦い負けることはありえないでしょう。我が方は敵の3倍以上の戦力があります。」
ヘルメスが自信気に述べる。事実、降下戦力だけを見てもそれほど圧倒的な戦力差である。旧式機を含まない幕府軍の戦力は、如何に新兵が多いとは言っても、それだけ強力である。
「ヘルメス、先に幕府は20倍のハーディサイト軍と戦い善戦している。油断は大敵だ。」
そう呟くカナンティナント・クラウン中佐は、伊達幕府軍の将軍の中でも手堅い采配で有名である。勇猛果敢な将校の多い中では特異ではあったが、総大将として軍勢を指揮する者としては重要な適性であった。
「情報参謀、宇宙軍の偵察部隊に異常はないか?」
「今のところ、ラスター宇宙軍少佐からはなにも連絡が来ていません。」
地球方面軍宇宙軍は、セレーナ少佐の指揮から外れ、師団総長大尉から昇進したラスター少佐が指揮を執る。彼に任す任務は、輸送艦隊の護衛や周辺偵察、兵站線の維持である。
「そうか。近衛師団は油断せずに全方位索敵をしつつ戦闘に備えよ。それ以外は地球への降下急げ。」
ラスター少佐は攻勢に優れた指揮官ではないが、兵站線の維持を無難に行う程度には優秀な指揮官である。その彼からの連絡がない、というのは十分な警戒が必要な証左である。
「クラウン中佐、釧路へ侵攻中のセレーナ艦隊に遅れがあります。どうやら釧路湿原に火がついたようで、消火作業に戦力を回している様子です。」
通信参謀からの報告が上がる。歴史的には何度となく延焼している釧路湿原であるが、現代においても自然現象としては稀に存在する。とはいえ、今は地球圏に居住できる幕府の人民は限られていることから、自然豊かな湿原が維持されており、それは幕府においては重要な仕事の一つであった。
「セレーナ少佐には遅延状況の連絡を15分毎に行うように通達せよ。本陣から作戦への干渉自体はしない。」
「承知しました。」
釧路方面に派遣しているセレーナ少佐とヤオネ大尉は、幕府の中でも軍事・政治両方に優れた将兵であり、作戦の大要を十分に理解している。本陣から特別に指示を出さなくても作戦計画に問題は生じないであろう。特に釧路方面は地球残存艦隊が多く、女神隊機が多いため機動性や防御力は高いといっても、降下部隊に比べて要地攻撃戦力としては劣る。計算上は本陣部隊の戦力でも十分な現状、これに拘らなくてもいい、という判断だ。
「クラウン中佐!」
「今度は何だ?」
トラブルは付き物にしても、である。
「所属不明艦隊です!距離8000。砲艦5、サイクロプス40程度と思われます。」
地球圏で40機のサイクロプスを有する海賊は多くはない。
「海賊にしては多いな……?いずれにしても味方ではあるまい。叩く。」
問題は全力で叩くか、近衛師団50機と女神隊5機を投入するかだ。
「そうだな……。女神隊ヒビキ・イナワシロ中尉、貴官が近衛師団のサイクロプス隊50機と女神隊直属4機を率いて敵戦力を撃破せよ。」
ヒビキ中尉は、旅団長クラスの中でも宇宙空間でのサイクロプス戦で直近の激戦を潜り抜けた猛者である。言動はさておき士官学校学年主席の頭脳もあり、基本的には優秀な前線指揮官であった。一方の近衛師団の兵士達は忠誠心を優先して配備しているため、その戦闘技術としては優秀と言えるほどではない。指揮官として充てるならばヒビキ中尉に任せたほうが良い。
「カリスト大尉、良いな?」
大将の大将足るは、床几に腰を据えてみだりに動かないことである。不用意に本陣を動かしては作戦に支障が生じかねないのである。優れた指揮官がいるのであれば、それに任せるのも仕事だ。
「こちらカリスト大尉です。了解しました。ヒビキ中尉、手勢の4機を護衛に、近衛師団サイクロプス隊50機を指揮しなさい。本陣艦隊の中では貴女が一番のベテランパイロット指揮官です。」
「あいまむっ!みんな、いっくよん!3小隊で1戦隊とするよ!余った隊は私の隊に混ざるんだよ!私の隊を先頭に、第一戦隊を中央、第二戦隊を右翼後方、第三戦隊を左翼後方に配置して魚鱗陣にするよ!もし私が死んじゃったら、女神隊カリン少尉が指揮を変わって部隊を後退させてね。カリン少尉は後方に位置取りするんだよ!」
ヒビキ中尉は言動はともかくとして、戦術指揮能力は優秀である。今度の場合近衛師団は戦争未経験の者も多く、彼らを前衛に回してはもたつく恐れがある。敵に対して絶対優位の戦力で仕掛けるわけではない以上、もたつきがあれば命取りになりかねない。この魚鱗の▲陣形であれば、先頭に指揮官がいる限り後方の部隊は先頭の指揮官に付いていけば良いだけであり、戦争未経験のものが多くても指揮を執りやすいメリットがある。
「用意はできた?そんじゃぁいっくよん!と〜つげきっ!」
55機にものぼるサイクロプスがスラスターを煌かせる。
「それとクラウン中佐!敵がココでこの数で仕掛けるとかおっかしいよっ!ホーネット装備機やスナイパーは待機させておいたほうがいいとおもう!」
ヒビキ中尉が進言する。実際、その以上はクラウン中佐自身が感じているものだ。
「そうだな、ホーネット装備機は各艦甲板上にて待機。また、他に各艦サイクロプス1機の狙撃手を甲板上に待機させよ。指揮は……布陣はカリスト艦隊参謀長のクオン曹長が行え。指揮は取る必要はない、何かあれば私が指示するまで各個に対応せよ。」
艦隊周辺の狙撃手については、適切な布陣をすれば後は個別に任せればいい、という判断だ。
宇宙に舞うは気ままな妖精
ニンフと呼ばれるその機体は
女神とまでは言えないけれど
人の心を魅了する
「クオン曹長、いる?」
クラウン中佐の指示の一方、ヒビキ中尉がクオン曹長に連絡を回す。参謀格のクオン曹長に話を回すほうが早い、という判断だ。カリスト大尉に連絡してもいいのだが、流石に彼女は艦隊指揮を執らねばならず、プレッシャーも大きいことであろう。
「なんですか、ヒビキ中尉?」
「これは秘匿回線だけど、ほんとにおっかしいよ。牽制にしても敵が少なすぎるもん。核弾頭とか高出力レーザー、地上からのミサイル、そゆこと気にかけてね!わたしは前線であばれるから、わっかんなくなっちゃうからね!」
いかに冷静な指揮官であっても、前線で銃弾が飛び交う中では、完全に冷静な判断を下すことは難しい。そういった意味ではスナイパーとして戦局を俯瞰できるクオン曹長の立場のほうが向いているのだ。
「なるほど……了解しました。スナイパーの布陣とあわせて後詰はお任せください。」
「モニター映像まわしとくから、よっろしくだよっ!」
通常、砲艦部隊を単独で使うことはありえない。近接戦闘部隊や防御護衛部隊などと複合で使わなければ、通常戦では著しく不利になるのだ。砲艦部隊はその長中距離における火力以外は、総ての点で他に劣るからである。
「さて……」
ヒビキ中尉がため息交じりに呟く。カリストは彼女の事をベテランパイロット指揮官と言ったが、実際はそれほど大したものでもない。彼女の実戦経験はまだ数年来で、戦場に立ったことも十数回程度である。ただ、それでもベテランだという表現を使うという事が、幕府の実情を示しているのである。
「各機隊列を乱さないでねん。まずは距離をとってロングライフルで敵の艦に一撃するよ!何機持ってる?」
ヒビキ中尉が副官のカリン少尉に問う。カリン少尉の実戦経験も多くはないが、それでも何度かは戦場に立っている。他のメンバーよりはマシだ。
「ロングライフル所持は5機です!」
「おっけー!射程に入り次第1発を敵艦隊最左翼、1発を敵艦隊最右翼に撃ち込んで!2発だけだよ、撃ったらマシンガンかライフルに切り替えること!」
トリガーハッピーを防ぐために念を押す。ロングライフルは破壊力がある分、無駄撃ちするにはもったいないのだ。そして後方を確認すれば、艦の直援部隊をクオン曹長が散開陣形に布陣を整えている。散開していれば万が一大量殺戮兵器があった場合でも被害は最小限で済む。
「そんじゃーみんな、いっくよん!付いてきてね!」
55機の機体が一丸となって敵陣に突入をかける。戦力は、敵よりやや優勢止まりだ。
「ヒビキ中尉、敵艦の射程に入ります!」
カリン少尉が警告する。早々当たるものではないが、艦砲射撃を喰らえば一撃で撃破されてもおかしくはない。
「機体を半身にして盾を前面に突き出し、機体を盾の中に隠すんだよ。速度は落とさずそのまま続いて!」
ヒビキ中尉がそう指示を出す。
「敵艦発砲!また、敵サイクロプス隊動き出します!」
味方の兵は少し怯えているが、盾の中に入ったことで多少は落ち着きを取り戻している。実際のところ、盾で敵艦の直撃が防げるか疑問ではあるが、何かに守られているという心理的効果が大きい。戦場ではそういった小さなことが士気にかかわるし、それが勝敗に繋がることすらありうるのだ。
「それにしても……」
「ヒビキ中尉なにか?」
「ひとり言!なんでもないよん。」
ヒビキ中尉が呟いたのは、敵の砲撃が思いのほか弱かったからだ。
「ロングライフルの射程に入るよん。ロングライフル機は敵艦隊最左翼に一撃せよ!それ以外は何もするな!」
実戦経験が少ない兵には、明瞭明確簡単な指示こそが活きる。考えるのはベテランになってからだ。
「ちっ……」
第一射の結果は2発着弾のみ。巨大な艦相手にこの着弾では先が思いやられる。
「敵サイクロプスからも攻撃来ます!」
「構うな!次いっくよん!」
先の攻撃では致命打を与えることは出来なかったが……
「ロングライフル機は敵艦隊最右翼に一撃せよ!制動はかけず、しかし落ち着いて狙え!」
ライフルの砲弾が敵艦砲塔に突き刺さる。着弾数4発。まぁまぁといったところか。
「カリン少尉、敵艦の状況は逐次クオン曹長に映像を流してねん。」
「了解ですヒビキ中尉。」
敵艦への着弾を見て、味方が士気を取り戻す。
「これよりサイクロプス戦に移るよん!みんなー!なるべくマシンガンを装備!女神隊は長巻の用意もしてね!」
華やかに舞う妖精
軽やかに舞う妖精
多くの巨人を引き連れながら
数多の巨人を導きながら
戦場に艶やかな花を咲かせん
「ヒビキ中尉、敵サイクロプス隊は艦の直援に回っています。」
「了解、クオン曹長!」
戦局を俯瞰したクオン曹長から報告が入る。前線の指揮は前線に。クオン曹長から入るのは情報だけである。
「みんなー!最左翼の敵艦護衛サイクロプス隊を叩くよ!敵はざっとで2小隊!こっちの圧倒的有利だよん!右翼第二戦隊はその他の右側の敵に対して牽制!あたらなくてもいいよ!マシンガンの弾で面を、カーテンを作っておいてね!弾装は1つ空にしちゃってもいいから!残りの隊は私に続いて敵サイクロプス隊に攻撃!」
戦闘方式はいたって単純でひねりも無い。だが、その鈍器然とした攻撃であればこそ、新米どもを纏められるのだ。
戦場に咲く大輪の花。
装甲は弾丸に砕かれ、
コクピットには、
血の花が咲き乱れる。
艶やかで鮮やかで、
悲しみよりも一時の、
この興奮を心に映す。
「近接する!女神隊は長巻で敵サイクロプスを薙ぎ払い吹き飛ばすんだよ!後続はマシンガンで蜂の巣にしてね!」
ヒビキ中尉の指示の直後、5機のニンフが散開する。僅か5機が倍の敵に雪崩れ込む。これこそが女神隊の本領だ。殲滅性能が高いわけではない。攻撃力を捨て、高機動、重防御を追求した機体。囮や機動盾として敵を撹乱することを第一とした機体設計なのだ。
「まず1機!」
ヒビキ中尉の長巻が敵機のコクピットを打ち砕く。そのまま振り回せば近接戦闘で近づける敵は少ない。
「敵のトドメはマシンガンで討ち取るんだよ!」
散り散りになった敵は弱い。
「クオン曹長、何機討ち取った?」
「ヒビキ中尉、7機撃墜!味方の損害は3機が大破です。」
被害は当然である。そんなことを前線で気にしていては指揮官は務まらない。むしろ少数の被害で敵に打撃を与えたことが重畳だ。
「りょーかい。」
損傷は左翼の第三戦隊。
「第三戦隊の補充はしないよ!このまま敵中央、戦艦護衛サイクロプス隊を叩くよ!」
敵は推定20機といったところだ。
「クオン曹長、敵の戦艦はどうにかなる?」
「射程にはちょっと遠いです。」
「りょーかい。んじゃ、暫く様子見で……」
流石にサイクロプスと戦艦を同時に攻撃するほどの余裕は無い。
「そんじゃーつっこむからね!今度は左翼が牽制、右翼が攻撃だよ!」
ヒビキ中尉が指示するのは先と同じ戦法である。
「ヒビキ中尉、同じ戦法では……」
カリン少尉が指摘する。同じ戦法を使えば敵に対応されるのではないか、そういった不安だ。
「カリン少尉、戦法が同じでもいいんだよ!下手な奇策より、同じでも単純な戦法の方がまとまりがいいんだ!」
だが、戦場で奇計奇策がどれほど意味があるのか。ましてや友軍は素人並みの兵達である。複雑な戦法をとろうとしても、それはむしろ戦法が途中で破綻する恐れのほうが高い。そうであれば同じ戦法を繰り返したほうが妥当であった。
「りょ、了解です!」
「長巻振り回してとっつげきぃぃぃいい!!!」