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星光記 ~スターライトメモリー~  作者: 松浦図書助
後編
129/144

第24章 白頭山要塞攻略作戦 03節

 蜂起軍の収奪が開始されて2ヶ月、宇宙世紀0284年6月に至っても一切の鎮圧作戦を行わずに沈黙を保ったままであったケネス将軍は、蜂起軍や朝鮮国民衆より臆病者として揶揄される状況であったが、ここにきてようやく重い腰を上げる。幕府軍の援軍が到着したのである。防衛軍1個師団を本陣とするヘルメス・バイブル少佐を総指揮官に、バーン・フルーレ少佐の陸軍2個師団、タカノブ・イシガヤ少佐の遊撃隊1個師団、セレーナ・スターライト少佐の女神隊1個師団、幕府軍総計5個師団250機に加えて、百済鎮守将軍のケネス・ハーディサイト率いるフィリピン軍半個師団25機。サイクロプスにして総数275機程の戦力による蜂起軍鎮圧作戦の開始であった。

 「敵は予定通り、白頭山要塞に逃げ込みましたわね。」

 ボブカットの濃い緑の黒髪を靡かせながら、サイクロプス上から敵の配置を睥睨するのは、防衛軍軍団長であるヘルメス・バイブル少佐である。既に朝鮮全土の蜂起軍をしらみつぶしに追い立てて、こうして残るは白頭山要塞だけになっているのだが、朝鮮軍残党のサイクロプスは途中抵抗した少数の部隊を除きほぼ全軍、140機あまりがこの陣地に引き籠っている。ここは北京との国境地域であるために朝鮮軍残党が増援を得やすかったことに加えて、中国への逃亡のしやすさや、山岳地帯のために大軍の運用がし難い点を利点とした天嶮を利用した陣地である。幕府側の思惑としてもここに追い込んだのには理由がある。残酷な話ではあるが、各地で確実に個別撃破するよりも、各地でほどほどに戦うことで戦禍を朝鮮全土に広げ、不穏分子を殲滅していく名目づくりのために、朝鮮軍残党が各地で掠奪を激しくすることを扇動していたのである。さらには、敵対的な行動を取る北京軍の目と鼻の先で戦闘をすることで、彼らに対する脅しも兼ねているのであった。無論、北京軍が援軍に来ることも想定して、後方にはカナンティナント・クラウン中佐率いる伊達幕府軍が控えているが、現在の偵察状況ではその心配はないようである。なお、これらの軍備を一斉に投入できないのは、先の通り山岳地帯であり同時運用に問題があるためであった。

 「ヘルメス様は前線に?」

 そう問うのは、超弩級戦艦の長門級夕凪を指揮するセレーナ・スターライト少佐である。今回の作戦に参加する艦艇はこの夕凪だけであり、高い対空戦闘能力と旗艦電算能力を活かして地表すれすれに位置しつつ本陣としての役割を担っていた。多数の航空戦力との戦いになれば厳しいものになるが、朝鮮軍残党にはまともに運用できる戦闘機隊が無いことが判明しているため、気にする必要はない状況である。対する幕府軍も、白頭山要塞攻略に当たっては戦闘機隊を運用していない。これは、この要塞を攻略する上で航空爆撃をしてもさほど効果がないためであり、北京軍を脅し過ぎないようにする配慮でもある。そして、この航空支援の穴を埋めるのは、ヘルメス少佐直下の防衛軍の砲戦部隊である。

 「最前線には出ません。防衛軍を指揮してレールガンや迫撃砲による支援砲撃程度でしょうね。しかし、本陣での幕僚とりまとめまでできる保証はありませんから、セレーナ少佐は予定通り幕僚をまとめ、副将として私を補佐しなさい。」

 「承りました。」

 実際のところ、ヘルメス少佐が前線に出る必要はない。彼女の機体はフレイヤという専用機であり、先の石狩会戦では獅子奮迅の戦果を挙げて見せた機体である。『現代の巴御前』とも呼ばれた彼女の、鬼気迫る近接戦闘はなかなかのものではあるが、砲撃戦においても手堅い能力と采配を見せる彼女である。少数戦であればこの機体と彼女のパイロット能力も活きるのであろうが、今回は、幕府軍主力をもって朝鮮軍残党を蹂躙するだけの会戦なのである。フレイヤの存在は味方を鼓舞する程度の効果はあるかもしれないが、その程度しか効果はないのであった。では何故彼女がこうしてサイクロプスに乗っているかと言えば、単に後方での指揮が飽きたから、という理由に他ならない。

「さて、では開戦と行きましょう。セレーナ少佐、夕凪から曳航弾を発射しなさい。」

 その指示に従い旗艦夕凪から曳光弾が放たれる。進軍の合図である。先鋒を務めるのは中央に位置する陸軍であり、中央右の陸軍第一師団をバーン・フルーレ少佐が、中央左の陸軍第二師団をニッコロ・クルス大尉が指揮する。この右脇を補佐するのが、タカノブ・イシガヤ少佐とヨシノブ・オニワ大尉の指揮する遊撃隊第一師団であり、左脇を補佐するのがヒビキ・イナワシロ中尉率いる女神隊第一師団となる。この横陣の後方に備えるのが、ヘルメス・バイブル少佐率いる防衛軍の砲戦部隊であり、物資の護衛任務はさらに後方にケネス・ハーディサイト将軍が務めているのであった。



 豊かな大森林を背に

 荒れ果てた山麓を正面に

 巨大な歩兵が進軍を開始する

 陣列を整え砲を撃ち込み

 槍、長巻を携えて

 敵の矢玉は大盾に受ける

 遥か昔の城塞攻略の如く

 そのスケールこそ巨大なり

 晴天雲無く清涼な風は流れ

 軍旗幾旒と戦場に棚引くのだ



 「バーンの部隊に攻撃が集中しているぞ。こちらの進軍を少し早めろ。」

 前線でそう怒号するのは、遊撃隊を指揮するイシガヤ少佐である。大盾を構えた専用機ペルセウスを前面に押し立てて進軍を続けるが、朝鮮軍からの砲撃が激しく配下の進軍が滞りがちである。

 「イシガヤ少佐、少し右に展開しましょう。友軍が密集し過ぎては被害が増えます。幸い、大盾のおかげでまだ撃墜されるものはいませんがね。」

 副将であるオニワ大尉がそうアドバイスをする。味方のいない右側に展開するというのは、中央の陸軍師団に対する敵の注意をそらすことに加えて、敵の砲撃の密度を下げるためである。もっとも、この白頭山の戦域は山腹東側の約30㎞に及ぶ範囲であり、それほど狭いわけではない。それでも広く散開を志向するのは、白頭山に配置された固定砲台の水平角範囲が狭いからであった。

 「わかった。遊撃隊は右の北方向に2㎞程移動しつつ進軍を継続する。敵の砲台は思いのほか厄介だが、威力はそれほどでもない。構わず進め!」

 配置されている野戦砲は推定200門弱で、そのうち30門程度が榴弾砲である。いずれも巧妙に防御されているため、幕府軍の砲撃でもなかなか潰す事が出来ていない。ただ、これらは陸軍が強い北京軍のお下がり品であり、1世代は古い砲が大半である。無論、直撃すればただでは済まないのだが、それでも最新式砲に比べたら威力は大幅に劣るものなのであった。

 「最左翼の女神隊は遅れているのか。」

 イシガヤが呟く。だがこれも仕方のない事である。女神隊機は通常の量産機より装甲強度では頑丈ではあるのだが、機体重量が少ないために被弾した場合の衝撃を自重で相殺出来る量が少ない。大盾を構えて同様に進軍してはいるのだが、着弾時の衝撃で押し返されるため、進軍速度は周りより遅いのであった。

 「前に出過ぎだな。遊撃隊はこのラインでしばらく待機。大盾で自機を保護しつつ、山岳斜面などを使い充分に防御せよ。中央の陸軍、左翼の女神隊の進出を待つぞ。」

 白頭山の北東斜面に、イシガヤの専用旗、幕府軍旗の陽光にイルカの紋様と青地に白の一本線が入った南観世音菩薩の旗が風に棚引く。澄み渡った青い空に棚引く旗は、空を海に見立てて長閑に波しぶきをあげながら飛ぶイルカを彷彿とさせるが、現実のここは地獄の鉄火場である。双方の砲弾は山麓を穿ち、硝煙の臭いが地表を覆う。巻き上がる土埃は視界を塞ぎ、轟音が空気を震わせるのである。溶岩でこそないものの、世界でも有数のこの火山において、戦火は人の命を燃料として激しく燃えるのであった。幾らか救いがあるとすれば、山岳地系での機動戦であるため、被害の増大しやすい随伴歩兵や戦車がほとんど投入されていない、といった程度であろうか。

 「止まない雨……」

 屈んだ姿勢で膝で支えた大盾を傘にイシガヤが呟くが、弾雨は激しい。致命打を負うほどではないが、この状況で反撃の砲撃をしたところで、そうそう当たるものでもない。ほとんどは後方の防衛軍の砲戦部隊による観測射撃に頼った進軍である。ただ、その支援砲撃でも敵の要塞砲をなかなか撃破できておらず、思いのほか進捗は悪いものであった。

 「本陣、セレーナ少佐より通信。」

 開戦から約一時間半程度であろうか。友軍の砲撃が、砲の交換や弾薬の補充のためいったんまばらになり始めたタイミングである。

 「『かずかずに 思ひ思はず 問ひがたみ 身をしる雨は ふりぞまされる』です。」

 オニワ大尉が伝えるのは、伊勢物語の一節である。

 「つまり、突撃しろという事か。」

 「そのようですね。」

 伊勢物語においては、この歌をもらった男が、雨をものともせずに女のもとに向かった節話の部分である。

 「私がいっちば~んっ!」

 二の足を踏んだイシガヤなどとは対照的に、一気果敢に突撃を開始したのは、最も進軍が遅れていた女神隊のヒビキ中尉である。先ほどまでとはうって変わって、雨間をスルスルとすり抜けるように機体を走らせ、その手勢を率いて山腹を駆けのぼる。実のところ、言動はともかくこの場にいる誰よりも賢いのが彼女であり、既に戦局を察していたのであろう。これに続くのはその右側に布陣して陸軍第二師団を指揮するニッコロ大尉である。彼も動きは早かったのだが、付近の手勢だけで先行して突撃を開始したヒビキ中尉とは異なり、全部隊を取りまとめての突撃開始である。進軍速度は劣るが、それでも対応は早い。これを見て、イシガヤと、陸軍第一師団をまとめるバーン少佐も軍をまとめて突撃を開始するのであった。

 「支援攻撃を行います。各機注意せよ。」

 セレーナ少佐が通信機で友軍全機に通達する。たとえ敵にばれても構わない、といった攻撃である。その声に続き、長門級戦艦夕凪から多数の空対地ミサイルが打ち上げられ、同時に後備の防衛軍からもロケット砲が撃ち上げられる。この攻撃による効果は知れているのだが、上空からの攻撃に切り替えたという点に意味がある。通常の野砲では、地表の友軍の侵攻経路と同じ程度の高度で弾頭が飛び交うわけであるが、上空から落下してくる攻撃になれば、防衛側の意識は地表ではなく上空に向かいやすい。そうなれば敵の反撃も僅かに散漫になる可能性があり、打撃効果よりも心理的効果を期待したものであった。

 「伊達幕府女神隊、師団長代行のヒビキ・イナワシロがいっちばんくび~だよっ!」

 いつの間にか白頭山要塞の第一曲輪に乱入していたヒビキ中尉が、その搭乗機であるコスモ・ガディスⅡの長巻の先端に、敵サイクロプスの首を突き刺して高らかに掲げる。白頭山の第一曲輪には20機ほどはサイクロプスが詰めていたはずではあるが、彼女はその敵を縦横無尽に蹴散らしたのである。機体性能を活かした乱戦を得意とする女神隊らしい戦い方だ。だが、

 「……まずいな。」

 「まずいですね。」

 「全機後退!ヒビキ中尉、一気に退け!他の者もだ!盾を用意し坂下れ!」

 遅れて曲輪に到着したばかりのイシガヤのつぶやきに、その副官たるオニワ大尉が同意し、直ちに後退の命令が繰り出される。

 「りょ!」

 その号令に併せて、ほぼ反射的にといっていい速度で直ちにヒビキ隊が後退する。ヒビキ隊とイシガヤ隊は算を乱して一気に斜面を降る。一方のニッコロ隊とフルーレ隊も後退を始めるが、流石に兵をまとめてとなると時間が掛かるものだ。

 「やばやばっ!」

 ヒビキ中尉が悲鳴とも言えない叫びを上げた直後、白頭山第一曲輪周辺の山腹が震える。

 「やっばー!」

 斜面を駆け降りる幕府軍機達の背に、第一曲輪から轟音とともに爆炎が噴き上がる。朝鮮軍残党が曲輪を自爆させたのである。巻き上がる土砂が斜面を崩壊させながら流れ、飛び散る岩がサイクロプスを襲う。たとえそれがただの岩盤だとしても、重量物の直撃は機体に衝撃を与えて損傷を起こすので問題である。それぞれ背中に盾を背負って後退したり、或いは前面に盾を持ち構えながら後ろ向きで後退したり、各々の防御態勢で衝撃をやり過ごす。

 「各師団長、損害報告をせよ。」

 衝撃が収まった頃、各部隊にヘルメス少佐からの通信が入る。本陣夕凪を通しての通信である。

 「こちら陸軍第一師団、バーン隊だ。損害は3機が大破または中破で戦闘不能。先の山腹崩壊に巻き込まれたが、他はまだ戦闘可能だぜ。」

 「こっちは女神隊、ヒビキだよ!損害は3機!乗り込んだ時に撃墜されたけど、パイロットは救出済み!」

 土砂崩れに巻き込まれたバーン隊とは異なり、ヒビキ隊は土砂については完全に回避しきっている。ただ、最初の第一曲輪に突入した時の被害は当然ながら出ている状況である。とはいえ、3機の被害で曲輪にいた20機もの敵を蹂躙していたのだから、戦果としては抜群だ。

 「陸軍第二師団を預かるニッコロ大尉です。こちらの被害は6機。逃げ遅れて土砂に巻き込まれました。生存不明機を含みますので、直ちに救援に向かいます。」

 ニッコロ隊の一部は土砂に埋まって身動きが取れない機体が残る。中には、大破して死んだのか、或いは衝撃で気絶しただけなのか、全く応答が無い機体がいるため損害総数として酷いものだ。

 「遊撃隊のイシガヤだ。こちらは損害は1機。進軍途中で敵の砲撃で沈んだ機体だけだ。パイロットは後退済み。」

 遊撃隊は曲輪への到着が遅れたことと、到着直後に異変に気が付いて後退したため損害はほとんどない。遊撃隊が罠に気が付けたのは、黒脛巾などの工作員も抱え、前線での築城や工作施工なども行うためである。

 「思いのほか損害が広がりましたね。楠木正成の下赤坂城二重塀といったところでしょうか。」

 そういう割には、ヘルメス少佐の表情はいつも通りの冷たいままである。それは総司令官だからという面もあるのかもしれないが、冷静冷徹で知られる彼女であった。

 「相手を甘く見ていましたが、力攻めでは損害が増えそうですね。イシガヤ少佐、セレーナ少佐、意見はありますか?」

 そう問うのは、その二人が野戦築城にも長けた指揮官だからである。その二人は映像を共有して相談しながらであったが、口を開くのはセレーナ少佐の方であった。

 「では、ここは私、セレーナが申し上げます。」

 「よろしい。」

 ヘルメス少佐が頷きながらそう促す。

 「白頭山要塞ですが、遠目で見てもわかる通り、東側から攻める場合、先に崩壊した第一曲輪、第二曲輪、第三曲輪の本丸と続いていますわ。連郭式の山城といったところでしょうか。……こちらをご覧ください。」

 セレーナ少佐が遊撃隊が撮影してきた画像を共有する。要塞斜面や曲輪の外壁を映したものである。

 「我々も知っている通り、白頭山はもともと朝鮮民族の信仰の対象であるため、これほどの軍事要塞は建設されておりませんでしたわ。それが今回、最終防衛ラインとしての基地建設となったわけですが、突貫工事で作ったようで、外観こそ綺麗に見えますが、実際はかなり粗い石組みや、養生も出来ないような施工でコンクリートを固めた様子で、見てわかる通り多数亀裂が入っている状況です。亀裂は石組みに見立てて外側から補修されており、外観上は織部焼の金継ぎのように綺麗になって見えますが、これら模様はあくまでも亀裂であり、曲輪の強度としてはかなり低いものであると想像に難くありませんわ。……こちらもご覧くださいな。」

 セレーナが次に映す映像は、第一曲輪が爆発した時の映像である。曲輪を構成する土塁外壁が、先の亀裂に沿って爆発四散している様が映る。明確に、その部分が脆いことを示す映像である。

 「本丸の第三曲輪はこの亀裂が少ないため、こちらは初期に建造して、続いて第二曲輪、第一曲輪と突貫で工事したようですわね。無論、四方には同様に他の曲輪もあり、サイクロプスも詰めているようですが、目下はこの第二曲輪が課題です。ですが、先の通り、この第二曲輪は案外脆い作りですので……」

 「……つまり、砲戦部隊である防衛軍や夕凪の艦砲射撃で、この曲輪の土塁外壁を打ち破ればいいわけですわね。宜しいでしょう。私の部隊を前に繰り出し、砲撃戦で曲輪を破壊して見せるとしましょうか。」

 セレーナ少佐の見解を受けて、ヘルメス少佐はそう豪語して見せる。もっとも、セレーナ少佐が言い渋ったのは、総指揮官であるヘルメス少佐に戦え、とは言えなかったためであるし、それに気が付いたヘルメス少佐としてはそう応えるしかないのではある。

 「セレーナ少佐、城塞攻略用の徹甲弾砲とレールガンを降ろしなさい。積んでいますね?」

 「勿論ですわ。大型の徹甲弾砲が10門、レールガンも10門。通常の遠距離支援砲に使う徹甲弾は多数持ってきております。」

 この大型の徹甲弾砲は、ヘルメス少佐が北海道降下作戦で用いたものと同じものである。また、レールガンは王族専用機エオスや、女神隊コスモ・ガディス機の中で支援機が用いるレールガンの耐久性などをオミットした物であり、砲撃回数などは劣るものの生産性が高められたものである。砲門数がこの程度しか用意できないのは、これらの砲身が長大であるため、通常サイクロプスで十機前後の積載しか出来ない夕凪の艦内では収容しきれないからである。

 「防衛軍は5機1小隊で、徹甲弾砲、レールガンともに1門づずつ、また通常砲に使う徹甲弾も持っていきなさい。ニッコロ隊の救出作業が一段落次第、他の隊を含めて再進撃を行います。ケネス将軍の隊はそのまま後方に待機し、兵を休息させなさい。夜番が必要になるかもしれません。その際はまかせます。」

 「御意。」

 本来この戦いを主導するべきは、朝鮮鎮守将軍となるケネス将軍なのかもしれないが、現状まで後方待機で活躍する機会がない。元々はただの後方護衛をさせるだけのつもりであったヘルメス少佐だが、思いのほか敵の抵抗が激しく、一日での要塞攻略は無理と判断したのであった。

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