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星光記 ~スターライトメモリー~  作者: 松浦図書助
後編
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第23章 ソウル蹂躙 03節

 「アーサー王は流石手早い。さらに煽りよるわ。」

 ペルセウス及び指揮下の部隊を発信準備させている中、イングランド通信の速報を受けてイシガヤはそう感想を漏らす。アーサー王としてみれば伊達幕府の勢力拡大は必ずしも良いとは言えないが、欧州連合にしても彼に味方しない欧州諸国と交戦中であり、今すぐ伊達幕府とぶつかることは得策ではない。この速報の意図は、一応弁明はさせてやったぞ、今は感謝しておけ、と言うことであろう。

 「この内容では夕刻迄に陥落させないとならんのは面倒臭いか。……だがまぁ、行くかね。」

 イシガヤはそうボヤきながら、専用機ペルセウスに搭乗する。純銀に輝く装甲はステルス性など完全に無視している潔さだが、それもそのはずで、装甲は戦艦にも勝る頑丈なものであるのだ。厳選された材料で時間をかけた職人技で丁寧に作られた外装パーツは、中でもより完成度が高いもののみを利用するという徹底ぶりであった。兵器と言うよりはもはや工芸品であると言えよう。デザイン的にはローマ騎士やギリシア騎士をイメージした機体で、頭部には赤いトサカを有している。やや丸みを帯びた重厚感のあるシンプルなデザインであり、固定装備は大型のランス、ヘッドバルカン、ビームサーベル、ラウンドシールド、シールド前面に装備されたビーム砲2門といったところだ。この他に、必要に応じてホーネットと呼ばれる思念誘導式のビーム砲や、量産機などが使うライフルやマシンガンなどを装備し、遊撃隊用の特殊装備を背中に担ぐのが一般的な彼の装備であった。

 「よし、オールグリーン。ペルセウス出撃する。マール大尉、準備はいいな?」

 「あぁ。準備は万全だ。」

 「指揮下の遊撃隊をもってソウル城塞地下に突入する。我に続け。また、ケネス・ハーディサイト将軍も指揮下の部隊を副官に任せ、サイクロプスでついてこい。機体はカタクラ大尉のレムスを使え。入り口で待つぞ。砲撃は中心地への攻撃は停止。周辺施設を焼き払っていろ。」

 イシガヤがそう命じる。砲撃を止めたのは当然同士討ちを避けるためであり、ケネス将軍を呼びつけたのは敗軍に与えられる地獄を見せつけるためである。また彼に高性能機レムスを与えるのは、暗殺する気は無いという意思表示でもあった。

 「……行くぞ。」

 そうおもむろに出撃するイシガヤであった。わかりきったことではあるが、実際にサイクロプスで地上を進めば酷いものである。少女達がインドネシア軍の兵士達に陵辱されている事などまだマシなもので、建物に押し潰された死体、焼け焦げた死体、子供を庇って死んだのであろう母親や、そのすぐそばで息絶えている子供、内蔵をぶちまけながらもまだ死にきれない人、そんなものがうじゃうじゃしているのである。サイクロプスで進軍すればそういった死体らしきものを踏み潰す事もあるが、そんなものいちいち避けていては部下達が不審を募らせるだけなので、出来ようはずもない。

 「……なんとも悲惨な状況だな。」

 イシガヤに秘匿回線でそう言うのはマール大尉である。彼も虐殺の一翼を担っている以上、皮肉の1つも言いたくなるのが心情であろうか。かつては宇宙海賊として、それなりに残忍な対応もとらなければならなかったマール大尉ではあるが、流石にこれほど倫理観から外れた作戦を指揮したことはない。程度の差といえばそれだけでしかないかもしれないのだが、それで済ますにはあまりにも凄惨すぎる光景であるのだ。

 「……全員皆殺しにすれば悲惨に思う生存者などおらんわ。悲惨かどうかなど後で考えれば良かろう。」

 マール大尉のその皮肉に、イシガヤが何でもないかのようにそう返す。それは彼の本心であり、しかし本心ではない。

 「撫で斬りにしてしまえばいいのだ。所詮、生きていようが死んでいようが、たいした違いはあるまい。」

 イシガヤが何を言っているのか、もし分かるとしたらセレーナ少佐くらいなものであろうか、そうマール大尉は考える。おそらく、「よく分かりますが、私は気にいらないから却下です」とでも答えるのであろう。そうは思っても、それを言う程の傍若無人さを彼は持ち合わせていなかったし、何となくそう言いそうだとは理解できても、その意味まで理解することは難しいのであった。

 「正面、坑道から地下に入れるようだ。本陣のニッコロ大尉より地形案内が来ている。」

 マール大尉がイシガヤ少佐に報告する。このソウル城塞市攻略については、その根拠地である都市地下に突入し、敵の本陣を撃破してはじめて、勝利と言えるだろう。おそらくは、そこに朝鮮王朴袁がいるのであろうし、彼を殺すかひっ捕らえなければ戦争は終結できないのである。戦争というものどれほど有利な戦況であっても、互いの国家の責任者達が、明確に終戦を定義しなければならないものだ。

 「しかし…………」

 マールが閉口したかのように言葉を濁らせる。その坑道の入り口は閉ざされており、中に逃げ込めなかったのであろう人々でごったがえしているのだ。彼らは何を血迷っているのか知らないが、まるで幕府軍に抗議するかの如く日本国旗を燃やしたり、スピーカーで罵り騒いだり、投石を繰り返している。

 「ケネス将軍は追い付いたか?それと、こいつらはバカなのか?」

 抗議の歌を歌いだした市民を侮蔑の目で観ながら、イシガヤが問う。問うが……、あまりの事に答えられる幕府軍の兵士は居ない。

 「ケネス・ハーディサイト、ただいま到着しました。」

 さておきハーディサイト将軍自身が到着を伝える。乗機はカタクラ大尉専用機であるレムスである。可変機構を搭載し航空戦闘能力に優れる機体であるため、このような戦場でも難なく目的地まで到達できる程である。火力には乏しいが、防御力は一般機には優り、指揮官機としては十分すぎる性能を有していた。

 「よし、じゃあ行くぞ?」

 「イシガヤ王、しかし正面に人が…………」

 到着したばかりのケネス・ハーディサイト将軍がそう疑問を呈するが、

 「居ないよ?」

 イシガヤがそう言った直後にペルセウスの楯に備え付けられたビーム砲が火を噴く。ビームの収束は控えて拡散状態にしたものである。サイクロプス相手には目眩まし程度にしかならない火力になるが、相手が生身の人間ならそれでも即死である。何度撃ち込まれたのであろうか……。五回以上は間違いなく放たれたその先には、穴の空いた坑道の入り口と、ビームの熱で焦げ赤茶けて抉れた地面しか映らない。まるで最初から人など居なかったかのごとく、そのような痕跡は全く見つけることは出来なかった。

 「幽霊でも見たんだろ。」

 真顔で言い切るイシガヤの通信を前に、ケネス将軍もマール大尉も愕然として立ち竦む。幽霊にはなったのかもしれないが、幽霊であったはずがない。

 「何をしている?行くぞ?」

 「ぇ?ぁ……、あぁ……」

 イシガヤを先頭に、マール大尉が呆然としながらも坑道に突入しする。もしかしたら先程大変な事かあったのかもしれないが、痕跡が無い以上はなにもなかったのかもしれない。

 「各自、モニタートラブル発生のため、再起動及び過去映像記録の削除を推奨する。」

 マール大尉がそう指示するも、

 「万が一の事もある。映像を消す必要は無い。」

 イシガヤがそう命令を改める。

 「マール大尉、これはお前にしか聞こえない直接回線だが、大将である俺が全部やった。俺だけが撃った。他の奴には関係無い。……わかるな?」

 「あ……あぁ……。」

 「宜しい。」

 イシガヤは、王にあるまじき王であろう。自ら率先してその手を血に染めるなど、彼の立場で本来やるべき事ではないのだ。

 「では、各機我に続け。」

 ペルセウスを先頭に、イシガヤ少佐の率いる小隊はソウル城塞市地下坑道を進軍する。所々に避難民らしき人影が進撃路の邪魔になっているが、その度にペルセウスのビーム砲が火を噴き、障害物を亡くしていく。流石のイシガヤも踏み潰して押し通る、と、いうのは抵抗があるのだろう。ビームで吹き飛ばせば、あまりの高熱に血飛沫が飛ぶとこすらなく、蒸発し焼け焦げた死体が残る程度である。視覚的にはまだいくらかマシな死体であろう。そうは言ってもイシガヤの凶行に付き従う者達は、戦慄し言葉を発することもできないでいる。だが、こうでもしなければどうやって進撃するというのか。国民を避難誘導しなかった朝鮮政府や、軍事施設に逃げ込むような人が悪いのだと、イシガヤは割り切ったものであった。

 「内郭も意外と頑丈だな。」

 イシガヤが呟く。伊達幕府の砲撃に曝されていたはずの城塞内部ではあったが、弾丸の貫通痕や爆発痕は見受けられるものの、全体構造をまだ充分に維持している。この坑道の上部には市街地が建設されているはずであるが、そこを砲撃を受けた際の緩衝材に使っていたという事であろうか。その割りに迎撃設備などをほぼ見つけることも出来ず、拍子抜けであった。

 「内郭を抜けるぞ。」

 ソウル城塞都市は基本的に市外に配置された城壁周辺で防御することを指向しているため、曲輪は日本の要塞と較べて外郭、内郭で構成された程度の単純構造である。そして、内郭を抜けた先にあるのは防御設備ではなく、壮麗な地下宮殿であった。無論地上部分まで続いて都市の象徴となるものであり、世界にも知られたソウル宮殿ではあったが、よもや地下の方が手の込んだ豪奢な造りであったのは今分かったものである。

 「マール大尉、迎撃装置の確認を急げ。各自シールドを展開し奇襲に注意せよ!」

 宮殿前である。普通であれば防衛システムが起動するはずでだ。ペルセウス以下遊撃隊のサイクロプスは背面に装備されている楯を取り、円陣を組んで構える。遊撃隊は名の如く多目的な作戦に従事するため、最大火力よりは利便性を追求した装備をしていた。

 「……何も起きんな。」

 備えた幕府軍であったが、不気味なほどに宮殿前は静まり返る。まるでものの脱け殻である。

 「モチヅキ軍曹、ウンノ軍曹、調べろ。」

 イシガヤは隷下の隊士に指示を下す。遊撃隊は幕府貴族の子弟も多く属してはいるが、イシガヤ家の息のかかった工作部隊黒脛巾の者もまた多い。多目的な作戦に置いて、各種工作が可能になるのは彼らの力に依るところが多く、今回もまた然りであった。

 「訝しい事だ……」

 イシガヤ少佐はそう呟くが……

 「イシガヤ少佐!」

 数分も経たずにモチヅキ軍曹から報告が入る。

 「現時点で目視可能な32箇所に自動防衛システムらしき武装を確認しました。しかしながらいずれも埃を被り錆び付きを確認できます。」

 「どういう事だ?バカなのかやつらは。とりあえずわかるものは総て破壊せよ。」

 「承知しました。」

 そして、イシガヤの指示でその総てが破壊される。常識では考えにくい事態ではあるが、どうするかは決めなければならない。そんなときに取る手段はいたってシンプルである。そして、破壊工作に伴い数人の防衛システムの管理者であろう人間が逃げ出してくる。

 「モチヅキ軍曹、捕らえてはかせろ。」

 こういった工作も得意とする黒脛巾である。モチヅキ軍曹は搭乗機から降り、一人を捕らえて尋問をはじめる。……が、尋問をする以前に命乞いをされてしまうという愕然とする状態であった。捕らえた者が言うには、防衛システムは動かしかたがわからず、整備をした記憶もないとの事で、宮殿内もだいたい同じとの事である。近衛兵の多くは逃げ出しており、王族は宮殿地下に潜伏しているとの事であった。

 「さて……、行こうか。」

 尋問が終わり命乞いを始めた衛兵に向かい、イシガヤ少佐はペルセウスの対人兵器として装備されたヘッドバルカンを放つ。北海道やフィリピン、それ以前の戦いでは見られなかったイシガヤの態度に配下の者も驚くが、イシガヤが家督相続した際に既に仕えていたモチヅキ軍曹などは、その過去を思い出したにすぎない。イシガヤは基本的には義理堅く凄惨な事を避ける傾向はあるが、裏切者や卑怯者には容赦しない傾向もある事を知っているのだ。イシガヤが幼少だからといって専横の気を見せた家臣が、どれ程イシガヤ自身の手によって暗殺されたかは公然の秘密である。

 「イシガヤ少佐、こちらです。」

 モチヅキ軍曹の案内で、彼らは朝鮮王が隠れたと聞いたシェルターに向かう。イシガヤ少佐としては、カレンと戦ったフィリピン戦に比べてあまりにも抵抗がなく衝撃としか言いようがない。撤退をしたかといえばそうでもなく、時々衛兵が命乞いに現れるという異常事態である。無論、それらをハエのように殺して進んでいるのだが。

 「イシガヤ王、フィリピンでもこのように……?」

 ハーディサイト将軍が絶望でもしたかのような表情でそう質問をする。彼は妻をフィリピン戦で亡くしているのだ。最期が気になるのも当然であろう。

 「しておらんよ。フィリピンは我々に核弾頭をいきなり撃ってきたりはしてないからな。ハーディサイト中将は我々に宣戦布告は行っていたし、奇襲を受けたのは我々の慢心である。」

 それを聞いて幾らかは安心するハーディサイト将軍であった。降将として登用され命を拾った彼ではあるが、兄ナイアス・ハーディサイト中将の伊達幕府に与えた損害は相当なものである。王族数人にも被害を与え、現にイシガヤの妻にしてシルバーの妹でもあるヤマブキ・スターを戦死させているのだ。核を撃ち込んだとはいえ、実害をほぼ与えていない朝鮮王と比べて恐怖せざるを得ないのである。そういったなかで、兄ハーディサイト中将が高く評価され心象が悪くない事は救いであった。

 「イシガヤ少佐、この辺りに朝鮮王が隠れていると思われます。」

 シェルターと思わしき場所にたどり着き、モチヅキ軍曹が述べる。ざっと見て核爆発にも耐えられる隔壁ではあるが、遊撃隊のサイクロプスの一部が装備する隔壁カッターを使えば、1時間程度で焼ききれるであろう。陸軍の工兵専門部隊を呼んでも良いが、どちらにしても時間はかかるし面倒という理由でこのまま切断作業となった。合わせてイシガヤが勧告を行う。

 「告げる。私は伊達幕府執権石谷太政大臣藤原隆信である。朝鮮王が娘をくれるというので、都市を焼き民を打ち殺し、遥々此処まで受け取りに参った。正室にとの事なので勇武無双の姫大将かと思い、我が方も全力で当たった所、些か貴国が弱すぎて数十万の兵を殲滅してしまったが赦されよ。益体もないほどの弱将など不要故受け取りは拒否するし、此の隔壁は1時間以内にこじ開けるが、此処に居ようが居まいが覚悟召されよ。」

 「おい、イシガヤ少佐、降伏勧告ではなかったのか?」

 マール大尉が問うのももっともではあるが、イシガヤは降伏を赦す気など最初から無いのだから仕方ない。隔壁を破壊する間、あまりにも抵抗が無いため本陣のカタクラ大尉から定期的に送られてくる戦況報告を読むが、既に主要な戦力を失った朝鮮側を一方的に始末する有り様であり、何らの懸念すら無い状況であった。強いて言えばインドネシア軍などによる狼藉行為が散見されているが、これも戦争のならいであり、元々宇宙海賊であったマール大尉にとってあまり他人を批難できるものでもない。この攻略戦は世界に報道されているため各国から残虐行為を慎むように声明も出されているが、それらの国とて大なり小なり残虐行為を働いているのである。それが数千人か数十万人かの違いである。とはいえ、その数十万の殺戮を指揮するイシガヤなど、毛沢東など自国民を数千万人殺しているのだと涼しい顔をしたものである。それらの発言に狂気を感じないでもないが……。

 「お待たせしました、隔壁開きます。」

 作業を終えたウンノ軍曹が隔壁をこじ開ける。この際も楯を構えた伊達幕府軍であったが、想定はまた杞憂に終わった。モニターに映るのは怯えた人々だけである。平民に近い服装をしているが、ここが宮殿である事や奥に散らばる豪奢な服をみれば、この平民風の者の正体など一目瞭然であった。

 「た、たすけてください!」

 と、でも言っているのだろうが、一部の者達は跪いて手を合わせるような動作をしているのだが、何か思案しているのか調べているのか、イシガヤ少佐はそれを軽くスルーしたままであるし、周りの部下達も先ほどからの彼の行動を鑑みて何もしないまま棒立ちし続ける。

 「ウンノ軍曹、モチヅキ軍曹、あの娘だけを拉致せよ。他は殺しても構わん。ケネス将軍、娘は貴官が預かれ。俺が預かるとヤオネに怒られる。」

 と、イシガヤは指示を下す。この辺りの手際は流石に黒脛巾の両名であった。20m近くもある巨大なサイクロプスで、150cmほどの小さな人間をいとも容易く捕まえて見せる。娘は年頃はカレンよりもやや幼く見え15歳前後であろうか。それなりに育ちが良く見え、血色や髪の艶も良い。もしかしたら多少きつい性格なのか幾らかつり目の比較的美人な娘ではあるが、サイクロプスに捕まってはただ震えて縮こまるばかりである。防衛陣地を破られイシガヤがサイクロプスで正面に立った際に、生身で恐れる素振りも見せず堂々と仁王立ちし、降伏と伴に配下の者と国民の安堵を申し出たカレン・ハーディサイトとは雲泥の違いであった。

 「各員、一時的に音声と録音を切れ。」

 「了解。」

 イシガヤはそう言って部下達のマイクがすべて切られたことを確認する。動画に音声を残さないためである。その上で、彼の音声だけ外部音声にし、共通語である英語で話しかけるのであった。

 「朝鮮王朴袁よ、自害もせず抵抗もせず、平民に扮して命乞いとは無様だな。この期に及んでバレバレの扮装など反吐が出るわ。その姿で死に晒しては恥だろう。せめてもの情けだ、跡形もなく消し飛ばしてやろう。感謝しろよ。」

 そう音声を外部に出力したイシガヤは、ペルセウスの楯内蔵のビーム砲を最大出力で放つ。直後、命乞いの集団は既に亡く、視界にはただ焼け焦げた地面が映るだけだ。残虐に殺す方法も捕らえて拷問する方法もあったが、それをしなかったのはイシガヤが人殺し好まなかったと言うより、単に血を見るのが嫌なだけであった。

 「娘に猿轡を噛ませた後、各機マイクを回復せよ。」

 モニターに映る、血の気の引いて青白い顔をした部下やケネス将軍にイシガヤは伝える。もっとも、彼の顔自体もそうだったのかもしれないが。

 「坑道から出る。マール大尉、通信環境が回復次第、本陣のカタクラ大尉に連絡。朝鮮語を話せる武官を総て旗艦から離脱させろと伝えろ。」

 「……了解。」

 「それらが終了まで、我が隊は後退しつつも戦場を観覧して待機する。」

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