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新因幡の白兎

作者: べんけい

     新因幡の白兎


 むか~し、昔、隠岐の島というちっぽけな島にとても狡賢い一匹の白兎が住んでおりました。

 この兎、ちっぽけな島で育った所為か普段から大きなものに大層、憧れていまして毎日、浜に出ては海の向こうに見える大きな陸地に行きたいと思っていました。

 それで、狡賢いだけに色々悪知恵を働かせまして遂に或る日、名案を思いついた白兎は、海で泳いでいる見栄っ張りの和邇ザメに向かって言いました。

「和邇ザメどん、和邇ザメどん、君はいつも独りで寂しそうだねえ。」

「何言ってるんだ!俺には仲間が一杯いるんだぞ!」

「へえ~、そうかい、でも、まさか、仲間を縦一列に並べて向こう岸まで届くくらいの数はいないだろ。」

「いるよ!そのくらい!」

「じゃあ、証拠を見せてよ。」

「よし、そこで待ってろ!今から仲間を呼んで来るからな!」

 見栄っ張りだけに和邇ザメは意地になって向こう岸まで届くよう有りっ丈の仲間を難儀しながら呼んで来て自分も含め、因幡の国に向かってセブンマイルブリッジみたいに縦一列に並びました。

「どうだ、見ろ!届いただろ!」

「でも、ここからじゃあ届いたか届いてないか見えやしないよ。」

「そんじゃあ、渡って確かめてみろ!」

 しめしめ、宛ら渡りに船だとほくそえんだ白兎は、「僕もそうしたかったからすまないけど背中を歩かせてもらうよ。」と言いますと、和邇ザメたちの背中を悠々と歩き出しました。時々、「僕は本当に向こう岸まで届いてるか確かめるために歩いてるんだ。だから悪気があって君たちの背中を踏んづけてるんじゃないよ。すまないねえ。」と言いながら。

 そうして向こう岸に辿り着く直前で悪乗りした白兎は、余裕をかますために口笛を吹いて見せ、辿り着いてから言いました。

「実は僕はこっちに渡りたかっただけなのさ!つまり君たちは僕にまんまと騙されたのさ!」

 すると、和邇ザメたちは怒り出し、最後尾の和邇ザメが白兎の背中に食いついて背中の皮をはがしてしまいました。

「エ~ン、エンエンエン、痛いよ~!」

 余りの痛みに白兎が泣いていますと、伝説の日本初のストリッパーことアメノウズメノミコトが通り掛って言いました。

「何で泣いてるの?」

「和邇ザメの奴に背中の皮をはがされて背中が痛くてしょうがないのでございます!」

「それは可哀想に・・・じゃあ、せめて痛みを紛らわす為に私が脱いであげましょう。」

「えっ!そんなことしちゃったら刺激が強すぎて駄目、駄目・・・」

 アメノウズメノミコトは白兎の訴えを余所にストリッパーよろしくそれはそれは色っぽく衣服を脱いで行きました。

「あっ、駄目!駄目!刺激が強すぎて刺激が強すぎて余計背中が疼いてずきずき痛みます!だから駄目って言ったのに・・・」

 アメノウズメノミコトはその訴えにも構うことなく天岩戸の前で八百万の神を笑わしたように裸踊りを始めました。

「キャハハハ!キャハハハ!やめてください!やめてください!可笑しくて可笑しくて余計背中が疼いてずきずき痛みます!キャハハハ!」

 白兎は腹を抱えて笑い転げながら裸踊りを見まいと、岩穴の中に隠れてしまいました。

「はあ、痛い痛い、ここにいた方がまだましだ。」

 安心したのも束の間のことでした。突如として地震が起きて地鳴りがしたかと思いますと、大きな岩が転がり落ちて来て岩穴をふさいでしまいました。

「ありゃあ!真っ暗闇なっちゃった!うわあ!どうしよう!」

 白兎が困り果てていますと、アメノウズメノミコトは力持ちのアメノタジカラノミコトを連れて来て岩穴をふさいだ大岩をのけさせて白兎を助け出しました。

 そこへ猛将スサノオノミコトが現れて白兎に向かって言いました。

「おい、男の癖に何をめそめそしている!」

「はい、和邇ザメの奴に背中の皮をはがされて痛くてしょうがないから泣いているのでございます。」

「そうか、それは気の毒なことだが、男は根性だ!そんなもんは気合で直せ!」

 スサノオノミコトはそう言いますと、白兎の背中を力任せに引っぱたきました。

「どえりゃあいてゃでかんわ!」

 余程、痛かったのでしょう、白兎は思わず名古屋弁で叫んで痛みを表現しました。

 そこへ太陽神アマテラスオオミノカミが現れてスサノオノミコトに言いました。

「何をまた乱暴を働いているのです。而もこんな小さな兎に対して・・・」

「だって姉貴、こいつは男のくせにめそめそしてるから根性を叩き直そうと思ったんですよ。」

「そうなの・・・じゃあ、私がこうしてやります・」

 アマテラスオオミノカミはそう言ったかと思いますと、プロミネンスの如く猛烈な熱光線を放ち始めました。

 それを蹲って痛みを堪える自分の背中にもろに浴びた白兎は、飛び上がって叫びました。

「げー!はんぱなくひりひりひりひりする~!神様の癖に何すんの~!」

 こんな痛い思いばかりするなんて・・・白兎は天罰を受けたのです。


 果たしてオオクニヌシノカミのように助けた方が白兎の為になったのでしょうか、それともこの物語のように徹底的に罰を与えた方が為になったのでしょうか、それは神のみぞ知る。えっ、日本には八百万の神がいるんですけど~!一体、誰を信じればいいの?


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