▷仕事人間の心労。
社長室まで戻って来た。
当の照汰郎さんと言えば、
あくびをしながら椅子に座っている。
…寝不足なのかなこの人。
少しスケジュールを調節する必要があるな。
「そういえば照汰郎さん。」
「ん〜?どうした〜?」
「…言わなかったのは、わざとですよね?」
きょとんとしてる照汰郎さん。
かと思ったら、悪い事を考えている子供の様な顔になる。
やっぱり、そんな事だろうと思った。
まぁ俺も知っていながら黙ってたんだけど。
「宮丘 創静と面識があるって。
別に言っても良かったんじゃ?それに紗浦の担当は
入ってきた時から真琴にするつもりだった事も。」
「えぇ〜?だって面白いじゃーんっ!」
あははっと無邪気に笑っているが、
言ってる事めちゃくちゃなんだよな。
そもそも何故そんな話になったかというと、
“頼まれた”と言ってしまえばそうなのだが。
紗浦 紫乃の担当を最初から
真琴にしなかったのは、当時 真琴は入社1年目だったから。
会社側としての、社員への考慮だ。
仕事に慣れさせてから、という話にまとまったのだ。
“頼んできた相手”もその話で、承諾してもらった。
真琴も大変な事に巻き込まれたよなぁ。
運の悪い奴だ。真面目な奴だから抱え過ぎないと良いけど。
何故 真琴が選ばれたのかは、さすがに俺も知らない。
… 照汰郎さんは知ってる感じだったけど。
「あ、それと。俺行った事あるなんて
知らなかったんですけど?」
「ん〜?どの話の事??」
はぐらかすつもりなのか、本当に分かってないのか。
…この顔は本当に分かってないな。
紗浦の家に行った事があるなんて。
大体いつ行ったんだ?少なくとも最近ではないはず。
記憶を巡らせてみるが、全然検討つかない。
「 紗浦の家に行った事、あるんですよね?」
「あ〜何年も前にな。大体あの家って創静のお祖父さん?だっけな。
そこらの人のものを創静が譲ってもらって、
リフォームしたらしいからな。
俺も創静も大学の時だから…7年前か?」
「同じ大学だったんですか?」
「そーそー。学部も学年も違うけどなんかの
飲みで一緒になって仲良くなった。」
…結構関わり深くないか?
会話してるところを見ると、そんな関係には見えなかったが。
…なんだか真琴が可哀想になってきた。
照汰郎さんは完全に他人事で、楽しんでるみたいだけど。
不安だ…。