第18話『悪魔の囁き』
矢野くんのうっかりミスで窮地に立たされたウォーレン達。
その時、ふと店長が矢野くんの肩に手を乗せ、こう言った。
「矢野、今からお前が船長だ。この船はお前にかかっている、任せたぞ!」
「わ、わかったでヤンヌ!頑張ってこの船を勝利に導くでヤンヌ」
矢野くんは気合い十分で答える。
店長もそんな矢野くんを満足そうに見つめた後、後ろを振り返り、ウォーレン達にこう告げた。
「よぅし、撤退するぞ!」
「あ、あれ?撤退するでヤンヌか、仕方ないでヤンヌ」
首を傾げながら、矢野くんは納得いかない様子で店長の後をついていく。
しかし店長は、後ろをついていく矢野くんに気付くと、こう言った。
「こら、船長たるもの最後まで船に残り運命を共にしないでどうする!恥ずかしくないのか!」
「そうだぞ矢野くん。そして、そんな立派な役目は君にしか出来ないんだぞ」
そう言ってウォーレンも続く。
「いやいやいや、矢野くん騙されてるから。早く逃げよう」
ホワイトは矢野くんにそう言った後、店長とウォーレンを軽く睨んだ。
スイスのハーフ松岡もバレないように睨んでいる。明日を睨んでいる。
「さぁ、早く逃げよう」
ホワイトが矢野くんの腕を掴んで船を降りようとしたその時。
「何するでヤンヌ!」
「矢野くん!?」
ホワイトの腕を振りほどいた矢野くんは静かに、こう言った。
「この船の船長は・・・オイラでヤンヌ」
「矢野くん・・・騙されてるんだよ。だってあいつ等、形勢が悪くなった途端、船長を矢野くんに代わったじゃないか」
ホワイトは店長達の方を指差して言った。
「何でヤンヌか!じゃあ、オイラが船長になったのは、能力を認められた訳じゃなくて、ただ利用されただけだって言いたいでヤンヌか!」
矢野くんは興奮した面持ちでホワイトに叫んだ。
(その通りだよ) ホワイトは、そう思ったがとても口には出せなかった。
ウォーレンならハッキリと言ったであろうし、スイスのハーフ松岡でさえ、空気が読めない人間なので言ってしまっただろう。
しかし、ホワイトにはどうしても言えなかった。
「どうしたでヤンヌか!?何で黙ってるでヤンヌ!」