イケメン変人ゲーマーvs美少女軍団
人生って何が起こるか分からない。
俺は今まで普通に生きてきた。
そりゃ、本当に普通だと言いきれるかと言ったら違うけど、別に飛び抜けて天才でもなかったし、飛び抜けて馬鹿でもなかった。
だからこれからもそうやって生きて行くんだと思ってた。
卒業して就職して、結婚して歳を取っていくんだと信じきっていた。
少なくとも、
「ねえ先輩!うちと遊びに行こー!」
「な、何言って…!?羽琉!あたしと行くわよね?これは命令よ!」
「もう、五月蝿いわね!…羽琉くん、家に美味しいお菓子があるわ。お茶しましょう?」
「あんたもうるさいよぉ?柚、一華と一緒に行こぉ?」
「…………説明プリーズ」
こんなギャルゲーばりの美少女ハーレムで生きていく予定なんてなかった。
俺は柚谷羽琉。言っとくが男だからな、男。
高校2年になったばかりの17歳。
勉強は普通、顔はそこそこ(らしい)、運動はバスケや持久走なら得意。
友人からは"天才ゲーマー"、"割とイケメン"、"時々アホ"などと言われる事が多い。
アホは余計だがな。
一見どこにでも居そうな高校生だろうが、友人からの言葉を見返してもらいたい。
"天才ゲーマー"。
そう、俺は"1にゲーム2にゲーム、3にゲーム4にゲーム"を信条とする、根っからのゲーマーだ。
クリアしたゲームは星の数、RPGに脱出ゲーム、ホラゲに音ゲー、ギャルゲー、乙女ゲー、バトルゲームにカードゲームなど来るもの拒まず。
家にあるゲーム機やゲームソフトは部屋が一つ埋もれてしまいそうな程。
ゲームセンターで音ゲーをやった結果、音ゲーの神と崇められた事もあった。
あまりのゲーム馬鹿っぷりに、友人や先生からは呆れるを通り越して生暖かい目で見守られている。解せぬ。
が、ゲームしかやってこなかったからか、恋などは全く興味を持てない。
告白された事は何回かあったけど、確か数秒で断った記憶がある。
あの後の報復は怖かった。本当にトラウマものだ。ホラゲより怖い。
それに、女子が着替えている教室に誤って入ってしまって平手打ちされたことが何度もある。
5回目になるともう諦められてしまって、"アホの子"と呼ばれることもあった。解せぬ。
そんなゲーム三昧な人生を送ってきた俺だが、ある日事件が起こった。
放課後下校している時、暴走したバイクが軽自動車を巻き込んで歩道に突っ込んで来たのだ。
丁度その時は1人で帰っていたし、その歩道を歩いていたのも俺だけ。
確かバイクと車が目の前に迫ってきたと思ったら、目の前と頭が真っ白になって、それで……そうだ、気がついたらこの美少女達に囲まれていたんだ。そうだそうだ。
じゃねーわ。
言っておくが、俺はロリショタhshsprpr♥なんて趣味は持ってない。
かわいい女の子やせくしーなおねーさんを侍らせたい欲求も持っていない。
そんな暇があったら某桃の姫を救い出したい。
エロ本を見たのは友達付き合いで2、3回あるが、速攻新作ゲームに移った。
だからこれは俺の願望ではない。うん、それは確定。
とりあえず聞いてみよう、この人たちが誰かも分かっていないのだから。
それに情報収集は大事だ。うん。
「…えーと、キミ達は?」
「あら、知らないの?私は夜波アズナ。貴方の花嫁よ」
そう言ったのは紫色のロングヘアーと瞳のお姉様。巨乳。
ちなみに花嫁じゃない。
「はいはーい!うちはね、楠野舞佳!よろしくね!」
緑色のショートヘアを揺らした、黄色い目の元気っ子。
乙女ゲーなら妹タイプの後輩かな。
「わ、私は朱無瑚々炉。言っておくけど、私は貴方の花嫁じゃない。ただちょっと閉じ込めて愛でて愛でて私しか見えないようにしたいと思っているだけよ」
………ヤンデレとツンデレが混じってる…だと……!?
ちなみに見た目は黒髪ボブの黒目といった大和撫子。赤いカチューシャが印象的。
「えっとねぇ、一華…私はねぇ、雪ノ瀬一華。柚が大好きだよぉ?」
ふわふわ天パで焦げ茶ロングヘアー。藍色の目の天然風の少女。
え、ちょっと待ってこの子中学生?ちっちゃい。
「……ありがとう。キミ達の口ぶりからしたら知ってると思うけど、俺は柚谷羽琉。で、これはどういう状況なの?俺、確か事故にあって……」
「詳しい説明は後よ。まずは一緒に来て頂戴」
「え、何処に……うわっ!」
「あっちで説明するから、早く行こぉ?」
あの、えと…一華さん、胸の塊が当たっておられます。あの一華さ……
「さぁ、れっつごー!」
……もうどうにでもなれ。
よく見ると、此処は学校のようだ。
部屋が幾つも並んでいて、そこには1-Aや2-B、保健室と書かれている。
けれど、明らかに俺が通っている学校とは違う。
あのボロボロの校舎とは違い、壁は真っ白く床はピカピカ、染み一つ見当たらない。
宮殿のような、と言ったら大袈裟だけどそれ位綺麗だ。
大きな廊下の窓には美しいステンドグラス、柔らかなモスグリーンのカーテン。
少なくとも学校とはとても思えない。
「さあ、着いたわよ」
「え?」
アズナの言葉に目を瞬かせると同時に、目の前の重厚感ある扉が重々しく開かれた。
すると、その先に居たのは__
「……ゑ」
美少女。
溢れんばかりの美少女。
しかも全員裸。
何度でも言おう、は だ か 。
「!!!??」
エロゲもびっくりな超展開に、俺の頭はスパーク寸前だった。
は、何これ?新種のホラゲ?何?俺これから何されんの?
混乱している俺を他所に、舞佳がくるくると俺の前に躍り出た。
「ね、びっくりしたでしょー!」
「…ハイ」
「でもねー、これだけじゃないんだよー!」
「!?」
舞佳がそう言った途端、その美少女達の視線が俺に向いた。
そして何故かうっとりとした目をしたかと思うと、一斉に俺の名を呼んだ。
「「「羽琉様…♥」」」
「羽琉"様"!?」
何これ!?(2度目)
俺こんな調教モノのエロゲやったっけ!?(混乱)
あまりの事態を飲み込みきれず、思わず隣に居たアズナの肩を揺さぶる。
「これどういう事だ!?なんで全員裸なの!?なんで俺の名前知ってんの!?」
「落ち着いて柚ぅ、アズナお姉様の首が取れちゃうよぉ?」
ポンポンと俺の肩を叩き、揺さぶるのを止めさせた一華はニコニコと笑い、口を開いた。
「あのねえ、柚は選ばれたのぉ」
「…選ばれた?」
「そう」
広い室内をぐるりと見渡し、柚はまたもやにっこりと微笑んだ。
それはとても可愛らしい笑みだったが、その後の言葉が俺を絶句させた。
「柚はねぇ、一華達の花婿に選ばれたのぉ」
「…………………ゑ?」
拝啓、お父様お母様。俺はとんでもない事に巻き込まれたようです。